• 日. 12月 22nd, 2024

犯罪データベース

明日あなたが被害にあうかもしれない

中学受験、塾選びに失敗して転塾を重ねた親子「ふたを開けたらバイトの子が先生」

“親子の受験”といわれる中学受験。思春期に差し掛かった子どもと親が二人三脚で挑む受験は、さまざまなすったもんだもあり、一筋縄ではいかないらしい。中学受験から見えてくる親子関係を、『偏差値30からの中学受験シリーズ』(学研)などの著書で知られ、長年中学受験を取材し続けてきた鳥居りんこ氏がつづる。

 「まん延防止等重点措置の適用期間」という中で実施された今年度の中学受験が終了した。当然ではあるが、結果は悲喜こもごも。特にここ最近は、第1志望に行ける子は3人にひとりとも5人にひとりとも言われるほどの激戦になっているので、「こんなはずでは……」という思いを抱えている親御さんも少なくはない。

 秀美さん(仮名)もそのひとりだ。

「我が家は結局、第4志望校に進むことになりました。第4志望校には、あまり思い入れがなく、正直、今もこの結果には納得がいきません」

 秀美さんには斗真くん(仮名)というひとり息子がいる。斗真くんは5年生から中学受験の勉強を開始したのだそうだ。

「我が家は中学受験を考えていなかったのですが、斗真が新5年生になった頃から、コロナ禍に突入してしまい、小学校が休校になりました。家は首都圏近郊と言っても、田畑が残る田舎のせいか、都会で聞くようなオンライン授業なんて、夢のまた夢。先生は自作のプリントを郵送してくれましたが、それだけ。いわば、全部が自習って感じで、さすがにこれはどうなの? と思っていました」

 心配になった秀美さんがご近所情報を集めたところ、思っている以上に中学受験を考えて塾に通っている子が多いことに気付かされたのだそうだ。

「我が家は共働きなもので、ママ友が少なかったということもあり、同級生の動向も知りませんでした。そしたら、意外なことに受験塾に通っている子が多いってことがわかって、正直、焦りました」

 そこで秀美さんは大手進学塾の門を叩いたそうだ。

「私でも名前を知っている塾なので、安心感があったんです。斗真もクラスメイトとそこで会えるということで乗り気だったんですが、これが間違いの始まりでした」

 大手進学塾では、生徒のレベルに合わせた授業を展開していることがほとんどなので、斗真くんが通った塾もそのシステムを採用。斗真くんは5クラスある中の最下位クラスからのスタートとなったそうだ。

「塾ってやっぱり営利企業ですよね。最上位クラスの子たちには素晴らしい先生が授業するみたいなんですが、斗真のクラスは……。斗真が言うには、授業中に先生が『こんな問題も解けないなんて、やっぱり、このクラスはバカだな』とか『おまえらはロクな学校には受からない』っていうような、やる気を失わせる発言ばかりをするらしいんです。モチベーションを上げるのが講師の仕事だと思うんですが、まるで真逆。そのうちに塾もオンライン授業になってしまったのですが、そのフォローが全然なかったんです。ところが、最上位クラスの子のママに聞く話は全然違って、同じ塾とは思えませんでした」

 秀美さん夫婦の仕事は在宅ではできない職種とのことで、自宅でオンライン授業を見守ることもできず、秀美さんの悩みは深くなる一方だったという。

「しばらくして、その塾はオンラインと通塾どちらも対応することになったのですが、塾も混乱していたようでした。コロナ禍ですから仕方ないんですが、面談にしても5年生は後回し。さらに下位クラスはもっと後みたいな対応ぶりで、徐々に塾への不信感が大きくなっていきました」

 秀美さん夫婦は、このままでは斗真くんの受験生活を円滑に進めることはできないと判断。6年生になるタイミングで、その大手塾を退塾し、個別塾に行かせることにしたという。

 ところが、秀美さんはその個別塾でも悩みを抱えてしまう。

「斗真には大勢の中での一斉授業よりも、マンツーマンで教えてもらうほうが理解が進むのではないか? と思ったんですね。それで、中学受験に対応している個別塾にお任せしようと思ったんですが、実際に教えてくれたのは学生アルバイト。教室長か社員講師が教えるという約束だったんですが、ふたを開けてみたらバイトの子が先生だったんです」

 アルバイト学生だから、教える実力がないという意味ではなく、秀美さんが困ってしまったのは、講師がコロコロ変わることだった。

「その日に『本日は担当講師が急用でお休みですので、別の講師になります』と言われることも多かったです。斗真は人見知りというのか、初対面の人ともすぐに打ち解けるタイプではなく、人間関係もじっくりと付き合ってから徐々に、というタイプなので、講師の先生が頻繁に変わるのは避けたいところだったんです。やっぱり、個別塾の売りは、一人ひとりに合わせた講義をすることなので、その子の進度を熟知するためには同じ先生がいいと思うんですけど、そこは違ったんですよね……」

 もちろん、秀美さんは個別塾に、この要望を伝えたのだが「各講師で情報共有はされているので問題なし」と一蹴されてしまったという。

「個別塾は費用もバカにならないので、同じくらいのお金をかけるのであれば、もう家庭教師の先生にお願いしようと思いまして、6年の秋あたりから家庭教師1本にしました。幸い、この先生はとても良い方で、斗真を上手に指導してくださいました。第4志望校ではあるのですが、この先生に付いていなかったら、ここも不合格だったかもしれず、先生にはとても感謝しています」

 ただ、秀美さんは、家庭教師の先生に「もう少し時間があったら、斗真くんのポテンシャルからしたら第一志望校にも合格していたかと……と言われたことが気になっているのだそうだ。

「私があまりに何も考えず、行き当たりバッタリだったことが、すべての敗因です。塾選びも『大手だから』ということだけで決めましたし、個別塾にしても、講師の質はさまざまだという視点が抜け落ちていて……。やはり、受験は用意周到に戦略を練ってから始めるものなんだなぁと思い知りました。これから中学受験を始めるご家庭に、我が家の経験が少しでもお役に立てたら幸いです」

 中学受験は親子の受験であるが、塾の果たす役割も相当、大きい。受験生活は長丁場になるので、我が子にとって、どういう環境で受験勉強をすることが成長に繋がるのかを熟慮した上で、各塾の方針を見極めることが大切だ。

 

~鳥居りんこ氏の最新情報~

新刊『女はいつも、どっかが痛い』(鍼灸師/やまざきあつこ 取材・文/鳥居りんこ著)小学館から発売

28年間で7万人を診てきた女性鍼灸師を鳥居氏が取材。自律神経の乱れや更年期からくる痛みや不調(頭 痛、腰痛、肩コリ、重ダル、冷え、不安でモヤモヤ)を、心と体のクセを変える方法で受け入れる指南書。
※詳細は公式ホームページ

By Admin