今や日常生活において、かかせないツールとなっているコミュニケーションアプリ「LINE」。ママたちの「グループチャット」から浮き彫りになった、彼女たちの悩みや、苦悩、気になる話題を覗いてみる。
進級や入学を目前に控える2~3月は、小学生向けの塾の入塾テストが活況を迎える。「森上教育研究所」の発表によると、首都圏では、2人に1人が中学受験をするようだ。コロナ禍において、学級閉鎖によるリモート授業の影響もあり、より優れた学習環境で学習できる私立学校の人気が高まっているのかもしれない。
例年、私立中学の入試は2月1日にピークを迎える。入試の模様を伝えるニュースを目にしたママたちが、子どもの学力を測ろうと塾の学力テストを受けさせるケースも多いようだ。今回は、子どもの塾通いについて悩むママのエピソードを紹介する。
クラスの半数が中学受験! 通信教育を受ける子多数も「うちの子は大丈夫」
都内に住むあかねさん(40歳・仮名)は、小学2年生の男児と6歳の女児を育てている。
「息子は、自主性を育む“モンテッソーリ教育”を取り入れた幼稚園に通わせていました。その頃のママ友とは今もLINEのグループチャットで連絡を取り合っているのですが、中学受験を考えているママも多くて、中には価値観が合わない人もいます」
息子が通う小学校でも、クラスの半数が中学受験をするそうだ。
「同じサッカークラブに通っている男の子のママには小6の娘もいるのですが、弟は塾にも通っていないし、のびのびと育てているんだと思っていたんです。でも、お姉ちゃんのほうは受験対策のために塾通いしていたと知って驚きました」
一方であかねさんの息子は、現在は学校の授業以外の勉強をしていないという。
「周りには通信教育の『チャレンジタッチ』や『スマイルゼミ』を利用している子も多く、ステイホーム期間にママ友の間でよく話題に上がりました。きょうだいや友達の“紹介制度”があり、入会者と紹介者それぞれにプレゼントがもらえるようで、『やるなら会員番号を教えるよ』とママ友からLINEが来たことも。でもうちの子は、学校の授業だけきちんと聞いていれば大丈夫だって思っていたんです」
あかねさんは都内の私大を卒業しているが、小学校の頃は塾通いをしていなかったという。
「私は中部地方の出身ですが、地元では県立高校のほうが進学率も高く、中学から私立に行く子はまれでした。高校まで公立校で大学から私立に通ったこともあり、中学から私立校に行くという感覚がわからないんですよね……。夫は専門学校卒で資格を取得して働いているため、『そんなに早くから勉強させる必要はない』と言っています」
しかし、あかねさん夫婦の教育方針が揺らぐような出来事があったそうだ。
「2月に入って、ママ友とのグループLINEで学習塾の学力テストが話題に上がったんです。『試しに一緒に受けさせてみない? 』という誘いも受けました。息子と仲のいい男の子のお稽古ごとについては、放課後よく遊んでいることもあり私も把握していたのですが、グループチャット内だけでつながっているようなママ友の子どもについてはよく知りませんでした。でもよく聞いてみると、公文や学研教室に通っている子が多かったんです」
あかねさんはそこで初めて、自分の息子以外は塾や通信教育など、何らかの形で学校以外でも勉強していることを知ったという。
「学校の宿題さえやっていればいいと思っていたので、ママ友の子が算数を2年も先取りして勉強していると知って驚きましたね。また、小学校の保護者会で知ったのですが、小3から算数の授業を、習熟度によってクラス分けをするとか……。上級生の子どもがいるママからは、一番下のクラスになると夏休みの間に補習もあるとも聞いて、内心焦りました」
その後、あかねさんの息子は、試しに近所の学習塾で実力テストを受けたそうだ。
「結果は50点と、思っていた以上に点数が悪く、4月から3年生になるのに、塾の先生には『1年からの復習が必要』と言われ、思わずあ然。『わからない単元をそのままにしておくと、高学年に上がった時に勉強がついていけなくなる』とも言われてしまい、体験授業をうけさせてみようとも思いますが、その後、断りにくくなりそうなので迷っています」
そんなあかねさんは、小学校での勉強のフォローが少ないと感じたという。
「九九の暗記も『家庭で覚えさせてください』と冬休みの宿題として出されましたが、塾で先取り学習をしている塾に通っている子はすでに覚えてたようです。我が家では、お風呂に入りながら何度も復唱させたり、九九のYouTube動画を見せて覚えさせました」
中学受験というと、男子は開成や麻布、武蔵、女子では桜陰、女子学院、雙葉という“御三家”の名前が挙がりがちだが、当然、それ以外の中堅校を受験させるケースも多いだろう。
「ママ友にLINEで中学受験のことを話したら、私が知らないような私立校や都立の中高一貫校の名前を挙げていました。そのママ友の子どもは塾にも通っているので、どこで情報を手に入れたのか聞いてみたら、『電車の広告で日能研を知った』『四谷大塚からダイレクトメールが届いた』と返事がきて焦りましたね。塾の情報も自分から集めにいかなきゃならないと思うと、どんどん周りにおいていかれているような気分になって……」
もともとは、子どもを塾通いさせるつもりはなかったというあかねさんだが、周りのママ友と情報交換をし、学校以外の勉強の必然性を感じるように。しかし、「金銭的に余裕がないためためらっている」という。
「私は週に4回ほど梱包のパートをしているのですが、思い切って転職して収入を増やすか検討しています。ただ、下の子はまだ年長でこれから小学校に入学するし、学童に入れないと働きづらくなるので悩みますね」
家庭ごとにさまざまな事情や価値観があるため、周りを見ると、余計に頭を悩ませてしまうのかもしれない。
「私立受験を考えているママ友とLINEをしたら、東京の中高一貫の女子校出身だということがわかりました。自分が中学受験を経験している人にとっては、子どもの受験は普通の感覚なんですよね。『SAPIX』のような難関中学を目指す塾に通わせるために今から準備しているママさんもいるので、そのうち学校の成績にも大きな差が出てしまうのではないかと不安になっています」
コロナ禍により、「子どもの教育だけはきちんとしたい」という親の思いからか、熾烈化している様子の中学受験。多くの選択肢があり、それぞれのゴールも違うが、少なくとも小学校での学習に不安が出ないよう、教師と保護者間でコミュニケーションを取る機会が増えることを願うばかりだ。