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『ザ・ノンフィクション』尊敬できない先輩VS扱いづらい後輩「ボクらの丁稚物語2022 ~涙の迷い道と別れ道~ 前編」

 日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。2月27日の放送は「ボクらの丁稚物語2022 ~涙の迷い道と別れ道~ 前編」。

あらすじ

 横浜市の家具製作会社「秋山木工」では、住み込みで5年間修行する丁稚奉公制度が採用されている。この間、丁稚たちは酒もタバコも恋愛も禁止、携帯電話は私用で使えず、家族への連絡は手紙だけ。朝は近所の清掃、さらに修行期間中は男性も女性も丸刈りという非常に過酷なものだ。

 しかし秋山木工では、高級ブランドショップやホテルなどに納品されるような、一点ものの超高級家具を作る技術を丁稚生活で身につけることができ、過酷な生活ながら丁稚志望者は後を絶たない。だが、半数は脱落してしまうと番組内では伝えられていた。

 2017年、秋山木工に入社した丁稚3人。京都大学を中退して来た、実家が家具製造会社の内藤、造園会社の跡取りの加藤、糖尿病を抱える佐藤だ。

 19年春、そんな3人に2人の後輩が入ってくる。そのうちの一人、山田はシングルファザーとして自分を育ててくれた父親に恩返ししたいと話すも、流されやすい性格だとも言い、入社前に会社側から習得を求められているそろばん3級も合格できていなかった。そんな後輩・山田を教育するミッションが内藤を中心に、17年組に課せられる。

 山田が入社し1年半後、同期入社のもう一人は退職していた。一人になった山田の下に、新しく後輩の丁稚が入ることになり、山田は自分が苦戦したそろばんについて熱心に説いていた。しかし、そんな中で山田が秋山木工から失踪してしまう。

 山田の直属の先輩である17年組は、山田の失踪においても特に慌てていないようで、先輩職人や秋山社長から、後輩の失踪には先輩の責任もあると諭される。内藤は、山田が何か思うところがあることを察していたが、「実際、面倒くさいというか嫌なんですよね。人と話したりするの」と、素直すぎる思いを番組スタッフに話す。

 一方、失踪から戻ってきた山田は、番組スタッフに対し「何かどうしても上の方々の3人に(17年組)ちょっとどうしても憧れが持てない自分がいて」と不満を話し、番組ナレーションではこの構図を「尊敬できない先輩、扱いづらい後輩」と表現していた。なお、失踪理由については語られなかった。

尊敬できない先輩と生意気な後輩

 番組を見る限りだが、17年組の3人はボーッとした感じで、口数も少なく、はた目にも「頼れる」という言葉が出てこない感じだ。だが、この3人に「悪意」は感じられない。

 一方でその3人の後輩にあたる山田は、そんな先輩にいら立っているのが態度に出ていた。番組の最後、新人指導において内藤と山田の意見は正反対となったが、その時の言葉の使い方も、もう少し気を使ったらいいのに、と思うものだった。

 それまでのいろいろな蓄積があってのことだと思うが、それにしても山田は17年組を下に見ている感じがした。「人を下に見る」は、いかなる理由があれど、それを顔や態度に露骨に出すのは、最大級の失礼にあたると思う。

 秋山木工の丁稚生活は過去にも放送されたが、その際は17年組に久保田という同期がいた。久保田も同期の一人を下に見ている感じがして、山田同様に感じが悪いなあと思ったものだ。久保田はその後、秋山木工を退職する。

 丁稚生活は過酷なので、退職理由は山のようにあったとは思うが、人を下に見る態度を取ると、その相手から憎まれるだけでなく、周囲からも疎まれるようになる。その場に居づらくなった、というのも退職の背景にあるのではないかと思う。

▼前回の放送『ザ・ノンフィクション』「ボクらの丁稚物語 ~泣き虫同期 4年の記録~ 前編」

 番組後半ではそんな後輩、山田が失踪するが、17年組は特に心配した素振りも見せず、至って平常通りの生活を送っているように見えた。そんな3人に対し、先輩の職人たちは後輩の山田にもっと気を配らないと、と諭し、秋山社長も山田の失踪に際し、先輩である3人、そして社長自身に一番責任があると話していた。

 しかし、「かわいげのない後輩が失踪した」という状況で、「心配する」ことが17年組にはなんだかしらじらしく感じられたのではないかと察するし、その気持ちは一個人としてはよく理解できる。

 一方で、秋山社長や先輩職人たちの「部下を心配する、部下の行動に対し自分のマネジメント上の責任を感じる」という気持ちも、社会人として理解できる。

 ただ、「厄介な後輩の失踪」という状況は、実際はせいせいしていたとしても、多少心配した素振りぐらいは見せておいたほうがいいのでは、と思う人が多いだろう。

 そんな中でもまったく平常そうな17年組は“心のまま”とも言え、それは幼さでもあるのだが、大抵の大人が社会にもまれ建前を身につけ、いつの間にかなくしてしまう素直さが残っていて、ちょっとまぶしさも感じた。

 次回は今回の続編。17年組と山田の不協和音が増幅していく中、秋山社長は苦渋の決断を下すことになる。

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