芸能人は歯が命。ホワイトニングはもはや当然、いまは歯科矯正までが芸能人の身だしなみになっているようだ。千鳥のノブやEXIT兼近大樹も歯科矯正を行い、整った歯を見せている。兼近はマウスピース矯正装置の一つである「インビザライン」で矯正していたようで、元モーニング娘。の飯田圭織も自身のブログにインビザラインの治療中と書いている。
一般人である著者も、この度24万円をかけてマウスピース矯正を行った。上記芸能人とは別の、お手頃なマウスピース装置「キレイライン」を使った矯正だが、アラフォーの大人といえど不安になったり暗い気持ちの日々を過ごすこともあった。
そんな歯科矯正について、よかったこと、不安だったことも含め伝えていきたい。
▼前編▼
マウスピース矯正、失敗!? とにかく不安だったこと
前回の最後で、歯を動かすスペースの確保のため、歯科医から下記の2択を迫られたと書いた。
・マウスピースと重ねて使う「拡大床」を装着:8万円
・歯を削る:3,000円
そして私は、安さにつられて軽い気持ちで「歯を削る」を選択した。こちらは少々うろ覚えになるが、上の歯1本と、下の歯3本、それぞれ歯の両脇を削った記憶がある。削る幅は歯科医師によると「コピー用紙の厚みくらい」とのことで、数ミリにも満たないだろう。
歯を削ったあと鏡を見ると、確かに「ちょっと隙間がある」程度だった。しかしその後、マウスピースが新しいものになると(前編参照)、下の歯の間隔が、日に日に開いていっているように見えるのだ。
実際、毎日使っている歯間ブラシの入り方も、削った歯の歯間は全然食い込むことなく、歯茎まですとんと落ちる感じが日に日に強まっていく。
「歯科医院を信じろ」と思いつつ、鏡を見るたびに「どう見ても、この間より歯間があいてる、気のせいじゃないと思う」と、不安をあおられる。思わず「歯科矯正 失敗」と検索しブログを読んでしまう暗い日々が続いた。
キレイライン矯正中は3週間毎に歯科での受診を行うが、この「歯間問題」に気づいた最初の受診では、もしかしたら私の気のせいかな、気にしすぎかな、と言い出しそびれてしまった。
だが、その後3週間で歯間はさらに広がり続け、「もうこれは絶対に気のせいではない!」と確信して、ついに歯科医師に伝えた。
歯科医師からは、常に前の状態から改善に向かうとは限らないということや、「いったん今のように歯をほぐしてから整えるケースもある。今はいったん歯間が広がったように見えて不安かもしれないけど、回を重ねれば整ってくるので大丈夫」といったことを言われた。
最初に言って欲しかったが、もしかしたらどこかに書いてあるのを私が見落としただけかもしれない。
事実、歯科医師の言う通りで、その次の回になったとたん、一度開いた歯間はどんどん埋まり、それに伴い歯は一気にすっきりと整っていった。広がった歯間はいわば「夜明け前が一番暗い」「高く飛ぶためにしゃがむ」期間だったのだろう。
ネットで不安なときに、不安な言葉(例:歯科矯正 失敗 歯 隙間)で調べたら、当たり前だが不安な材料しか引っかからないのだ。私と同じ轍を踏まないよう、不安になったらまず「公式(医師)へ確認」するべきだと伝えたい。
歯科矯正、マウスピースとリテーナーとは?
その後、5回の矯正で満足する状態に達したため、マウスピース生活は2021年の5月に終了した。それから現在9カ月がたっているが、こうして机に座っている今も私は口内にリテーナー(保定装置)を装着している。
歯は動き続けるものなので、矯正が終わったらもう自由の身、というわけにはいかず、リテーナーをつけるのだ。リテーナーにはいくつか種類があり、私はプレート型を選択している。
キレイラインのガイドラインを見ると、マウスピースの矯正終了後の1年間は1日20時間以上リテーナーをつけ、2年目から3年目にかけ徐々に着用時間を減らしていき、3年目以降は寝るときだけリテーナーにしていくというモデルケースの記載がある。
なので、本来今はリテーナーだけでいい時期だが、私はマウスピースとリテーナーを併用して生活している。なぜかといえば、リテーナーの矯正力に不安があるからだ。数時間リテーナーを着用したあとで、最後の回で使っていたマウスピースを着けると圧迫感、違和感が来る。歯が元に戻ろうと動いてしまっているのだろう。
歯は一生動き続けるらしいので、以前に味わった「恐怖の歯間スカスカ生活」に戻ったらと思うと恐ろしく、リテーナーと体感的により強度のあるマウスピースを併用している。
歯科医師にも相談したが、不安ならそのやり方でいい、とのこと。しかしそれならリテーナーを最初から作らず、最後に使っていたマウスピースを継続して使い続け、それがだめになってからリテーナーを作った方がよかったかな、とは思っている。
現在リテーナーとマウスピースの併用生活だが、それぞれのメリット、デメリットは以下の通りになる。
【マウスピースのメリット】
・矯正力はリテーナーより強い気がする
・歯の周りを覆う形状なので、ほぼ発話には影響ない
【マウスピースのデメリット】
・矯正力があるのでつけていて圧迫感はある
・コーヒーなどが着色しやすい(マスク生活なので、見ないフリをすることもできるが)
【リテーナー(プレート型)のメリット】
・歯をすっぽりふさぐ形状ではないので、つけていて快適
・歯の裏側にしかつかないので、コーヒーなど着色が気になるものも気にせず飲める
【リテーナー(プレート型)のデメリット】
・強制力はマウスピースより弱い気がする
・口の中に占める割合が大きく、活舌は悪くなる(活舌が良くない人や、人前で話すことが多い人だと、不便かもしれない)
結果として、私は矯正をしてよかったと思っている。暗黒の歯間スカスカ期間が過ぎ、歯がビシッと揃いだしてからは、きちんと並んだ可愛い歯見たさに、鏡を見ると思わず選挙ポスターのようにニコッと歯を見せ笑うようになった。
生活に笑顔が増えるのは精神衛生の面から考えても明らかに良いことだろう。25万円でできた、という予算感にもとても満足している。
始める前には、「もう40代なんだし、今さらかな」という気持ちも少しあったが、歯科医院(矯正の専門医院)に来ている人は30代以上が多い印象で、逆に“見るからに学生さん”みたいな若い人は、むしろあまり見かけなかった。それに、いくつになろうが歯がキレイになればとってもうれしい、というのは自分の経験から自信を持って言える。
ということで、私としては大満足だが、人に勧められるかというと微妙だ。口腔の状況、歯の健康状態、痛みをどこまで感じるかも人それぞれだからだ。
さらに、「矯正 失敗」で検索すると多くのSNS投稿、ブログ記事、動画を見つけることができる。これはマウスピース矯正に限らず従来型のワイヤー型矯正でも同じで、審美上の問題が出てしまっている人や、また、咀嚼に不具合が出る、頭痛がするなど、生活面に影響の出ている人もいる。
そしてそのような人たちの多くが「審美の目的なのだから、本来やらなくてもいいことだった。やってここまで後悔するとは……」と後悔の思いを話しているのを見ると、軽い気持ちで人に勧められるものではないとは思う。私も1カ月あまりの「歯間スカスカ生活」の間は本当に不安な日々だった。
以前、子宮筋腫の手術体験談を書いたが、こちらも健康上の事情による手術というよりは「膨らんできた腹をへこませたい」というQOLを上げることが目的だった。さらにこの間は、首やおなかに点在していたイボも取った。
加齢に応じだんだんこのような、「健康上に大きな支障があるわけではないけど、やった方が人生イイ感じ」なQOL医療のお世話に今後もなっていくのだろうと思う。
洗ったら流れるデパコス、効いてるかどうかはっきりしない高額の基礎化粧品よりも、一生モノのQOL系医療――これが今の強い実感だ。