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「まだ死ねん」と鼓舞する100歳の夫、「死にたい」と泣く妻と生きる“超老々介護”の日々

“「ヨロヨロ」と生き、「ドタリ」と倒れ、誰かの世話になって生き続ける”
――『百まで生きる覚悟』春日キスヨ(光文社)

 そんな「ヨロヨロ・ドタリ」期を迎えた老親と、家族はどう向き合っていくのか考えるシリーズ。今回はその番外編として、3月25日から公開されるドキュメンタリー映画『ぼけますから、よろしくお願いします。~おかえり お母さん~』における老親と一人娘の介護を見てみたい。

90半ばで家事をはじめた父。働く娘を思いやる

 一人娘でシングル。超高齢の両親は2人で広島県呉市に暮らしており、母親は認知症だ。診断された9年前にはすでに母は85歳、父は93歳になっていた。娘は、仕事をしている東京からたびたび呉に通うことになる。超老々介護かつ超遠距離介護だ。

 ――と、連載「老いゆく親とどう向き合う」シリーズで紹介するとしたらこんな感じになる。これまで紹介した家族と比べても、かなり厳しい環境だといえるだろう。それが、『ぼけますから、よろしくお願いします。』の監督で主人公でもある信友直子さん家族だ。

 2018年に公開された前作『ぼけますから、よろしくお願いします。』では、認知症になった母親・文子さんと父親・良則さん、東京から両親のもとに通う娘・直子さんの姿が描かれた。

 明るく社交的だった専業主婦の文子さんが認知症になり、それまで一日中座って本ばかり読んでいた良則さんは、文子さんに代わって掃除や洗濯、炊事、ときには縫い物までする。

 良則さんの飄々とした姿のせいか、はたまた直子さんと両親の交わす穏やかな広島弁のおかげか、老々介護にそれほど悲壮感がないのは救いだ。たまった洗濯物の上に寝てしまった文子さんを、ひょいとまたぐ良則さん。突然、文子さんが「邪魔になるなら死にたい」と泣くと、「バカタレ!」と一喝する。

 高齢の良則さんの負担が大きくなることを心配した直子さんは「帰ってこようか」と提案するが、良則さんは「ワシがお母さんの面倒は見る。人生は一度きり、やりたいことをやりなさい」と直子さんの申し出を断る。90代半ばを過ぎてもなお強く、優しい父親なのだ。

 その一方で、老いは隠せない。腰を90度曲げて坂の上のスーパーまで買い出しに行くと、疲れて店のベンチで休まずにはいられない。「立たねば何ごともすまんぞ」と己を鼓舞して立ち上がる。老いるとは、何と厳しいことか。

 18年。90歳となった文子さんは、前作が公開される2カ月前に脳梗塞で倒れ入院していた。98歳の良則さんは気丈にも「退院後は家に引き取る。働いている間は仕事しなさい」と直子さんに言い渡し、シルバーカーを押し、片道1時間かけて病院に通うのだ。

 そして文子さんを介護する体力をつけようと、マシントレーニングにも励む。とはいえ、玄関先で転んでケガをしたり、風邪をひいて体調を壊したり、さすがに高齢による衰えは進んでいる。

 それでも「まだ死ねん」と、鼠径ヘルニアの手術も受ける。100歳近くても、手術翌日からリハビリだ。そして退院後はまた文子さんの病院に通う。

 ところが、リハビリで一時は歩けるまで回復していた文子さんを、非情にも二度目の脳梗塞が襲う。もはやリハビリによる回復は望めなくなり、療養型病院(※)に移ることになる。転院する日、直子さんと良則さんは、文子さんをいったん自宅に連れて帰る。1回目の「おかえり、お母さん」だ。

 ほとんど寝たきりだった文子さんは、自宅に帰れたことを喜び、声を上げて泣く。良則さんは「はよようなって、またここで暮らそうや」と声をかけた。文子さんはまたがんばれるのではないか――。家族に希望が生まれた。

※文子さんが移った施設は、長期の療養が必要な比較的重度の要介護者のために、介護職員が手厚く配置された介護療養型医療施設のようだった

 それから2年後。20年の年明け、コロナ前夜だ。文子さんは胃ろうを施されていた。

 良則さんは胃ろうについて聞かれると、「ワシゃせんじゃろう」と言う。それでも家族にとっては、文子さんがどんな状態でも生きていてくれるだけでうれしい。この時の文子さんの胃ろうは延命措置だと思われるし、文子さんの意志も確認できていないだろう。けれども、ここまでの家族の物語を見てきた私たちに、その是非を云々する資格はない。

 春以降、コロナが拡大していく。家族の面会もかなわないなか、文子さんの肺炎が悪化する。危篤状態になった文子さんに会いに行った良則さんの言葉は、大正生まれの男性にとってこれ以上の愛情表現はないだろうと思わせられるもので、胸に迫った。このシーンはぜひ映画館で堪能してほしい。

 そして2回目で最後の「おかえりお母さん」。庭の紫陽花に囲まれた文子さんの笑顔は、再び良則さんのそばにいられるようになったことを喜んでいるようだった。良則さんが100歳のお祝いに好物を食べる姿も必見だ。

 21年。直子さんは呉で暮らす日が増え、101歳になった良則さんとの暮らしを配信している。「幸せな人生じゃったです」という良則さんに、幸せにしてもらえたのはこちらのほうだとお礼を言いたくなった。

 人生100年時代とは、愛する人との別れと悲しみを、ことによると何度も味わわないといけない時代でもある。この映画は、シングル一人娘の遠距離介護の物語ではなく、100歳の夫が認知症となった90歳の妻を愛する物語だ。同時に、良則さんの「生きる」への応援譚でもある。

■映画『ぼけますから、よろしくお願いします。~おかえりお母さん~』公式サイト

3月25日(金)より全国順次公開
監督・撮影・語り:信友直子 プロデューサー:濱潤、大島新、堀治樹 制作プロデューサー:稲葉友紀子 編集:目見田健 撮影:南幸男、河合輝久 音響効果:金田智子 ライン編集:池田聡 整音:富永憲一 製作プロダクション:スタッフラビ 製作:フジテレビ、ネツゲン、関西テレビ、信友家 配給・宣伝:アンプラグド 2022 年/日本/ドキュメンタリー/101 分/ビスタ/2.0ch


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