下世話、醜聞、スキャンダル――。長く女性の“欲望”に応えてきた女性週刊誌を、伝説のスキャンダル雑誌「噂の真相」の元デスク神林広恵が、ぶった斬る!
「週刊文春」(文藝春秋)が報じた映画監督で俳優の榊英雄による「性行為の強要」が大きな波紋を呼んでいる。当然だろう。しかも榊は“加害”に無自覚な上、「性被害」を題材にした映画『蜜月』を監督したいたのだから、あぜんとする。
だが、キャスティング権や人事などを楯に、そして示唆しながら不本意な性行為を強いているのは、映画業界だけではない。テレビ、出版、広告業界などでも横行しているし、今回のことも氷山の一角だろう。無知蒙昧で差別的な加害者だからこそ、その自覚を持つ教育が必要か。
第594回(3/17〜3/22発売号より)
1位「不倫男の妻が告白 夫を奪った彼女を許せない『福原愛の嘘と恐喝事件』」(「週刊文春」3月24日号)
2位「百恵さん 初孫で息子を叱咤『父として男として』の教え」(「女性セブン」3月31日号)
3位「宝田明 『私の“終活”はソ連侵攻体験を伝えること』(「女性セブン」3月31日号)
※「女性自身」「週刊女性」は合併号休み
今週の1位、変則ではあるが女性週刊誌ではなく「週刊文春」の福原愛関連記事だ。もちろんこれには理由がある。この「文春」記事には、「女性セブン」の“取材手法”について大変興味深いエピソードがつづられていたから。
昨年2月以降、福原愛の動向、別居と不倫疑惑、そして離婚がマスコミで騒がれてきたが、その先陣を切ったのが「セブン」だった。
昨年3月11日号で「福原愛 ポエム別居へ『母と国に帰らせていただきます』」と別居を報じると、翌週の18日号では「激震スクープ撮!福原愛 台湾に夫も子も残して里帰り不倫」として、イケメン商社マンA氏との横浜お泊まり不倫デートをスクープ、さらにその翌週の25日号では「独占スクープ 福原愛 独占告白『不倫相手の素顔』と『あの夜のこと』」として福原本人のインタビュー、独占告白を掲載したのだ。
不倫をスクープした「セブン」に、不倫をすっぱ抜かれた当事者の福原が登場し、独占告白する。「文春」の十八番を奪うような展開で、同時期、「週刊文春」も福原が夫だった江宏傑からモラハラを受けていたなどの記事を掲載しているが、福原に関しては「セブン」がぶっちぎり。
さらに、昨年12月22日に「セブン」の出版元である小学館のニュースサイト「NEWSポストセブン」が「福原愛 あのイケメン商社マンと真剣交際スタート『再婚も視野に』」と、離婚した福原とA氏のその後を追跡する記事を写真付きで配信している。
そんなスクープを連発した「セブン」だったが、実は福原のお相手のA氏は、当時は既婚者。そして今回A氏の妻(現在は離婚)が「文春」に福原とのやりとり、そして昨年12月のNEWSポストセブンに掲載された内容の訂正を巡ってトラブルになっていることを告白している。
しかし興味深いのは、その中で「セブン」のある疑惑が暴露されていることだ。
「文春」によると昨年12月22日、NEWSホストセブンが福原とA氏の交際を報じた2日前、「文春」も2人の同棲の事実を掴み、福原とA氏を直撃、しかし福原からはこんな驚愕の答えがあったという。
「掲載を延期して撮り直してもらうことはできないか」
自分のコントロール下で、しかも納得できる“やらせ写真”を撮ってくれという要求だ。もちろん「文春」はこれを拒否し、23日発売号で記事化するのだが、まだ驚く事態が続いた。福原の要求を拒否した「文春」が発売される前日に、前述のポストセブン記事が配信されたというのだから。
つまり「文春」の動きを知った福原が、「文春」に“仕込み”を直談判したが断られた。そこで福原は“旧知”の「セブン」に相談。「セブン」は福原の求めに応じ、やらせ写真を撮って記事を出した。それも「文春」発売前日に。これは「文春」潰しでもある。
実際、ポストセブン記事は2人の関係を美談仕立てに書いていたし、写真に至っては79枚も掲載。その冒頭は福原がマスクを外しA氏に微笑みかけるという素敵なショットだ。
週刊誌業界において、こうした撮り直しはままあることだ。できたら記事を潰したい。でも、それは無理。それならばスキャンダルが報じられるのは仕方ないとしても、不細工な写真はイヤ。その過程でこちらの主張を伝え、記者とコミュニケーションを取れば記事の内容も変わるかも。スキャンダル性も薄まり、少しでも自分に有利になるかも。マスコミをコントロールできるかも。そんな芸能人側の思惑からだ。所属事務所が介入する場合もある。
しかし今回、記事を読む限り「文春」にお願いしたのは福原本人らしい。さすが幼少期からマスコミ慣れしている福原、相手をよく熟知していると妙に感心してしまったが、「セブン」と福原は“そういう関係”にあったのだろう。福原の不倫に独占告白――その過程で“関係”を築いた。だから「文春」に直撃を受けた福原はすぐに「セブン」に相談した。
「セブン」による一連の福原愛記事の舞台裏が垣間見られた興味深いエピソードだった。
引退から42年、しかし百恵ちゃんは相変わらず素敵だ。山口百恵の長男・三浦祐太朗に第一子が誕生したことが明らかになった。百恵ちゃんにとっては初孫だ。そんなタイミングで「女性セブン」が三浦家の“家訓”を報じている。これがまた素敵だ。
まず家事育児について。“積極的に参加する”は当然で“やってあげてる”と思ってはいけない。“手伝う”のではなく“なんでも一緒に”。素敵だ。
“家族サービス”という言葉も違和感がある。なぜなら家族と遊んだりすることは“みんなで一緒に楽しむため”だから。これまた素敵だ。そして当然だが、なかなかできない、そう思えない男性が多いだろう。ちょっと“手伝う”と恩着せがましく威張ったり、褒められたいアピールの男性が世にはごまんといるしね(笑)。
そもそも三浦家は、三浦友和が家事育児を当たり前のこととしてこなしてきたという。そしてこんなエピソードが紹介される。
「2人の息子は、大人になってから『料理は女性がするもの』『男性は外に出て稼ぐもの、女性は家にいてそれを支えるもの』という考え方の男性がいることを知り、驚いたという」
ウジャウジャいるよ、そんな男!
俳優の宝田明が肺炎のため3月14日に亡くなった。87歳。宝田は乃木坂46の岩本蓮加とのダブル主演映画『世の中にたえて桜のなかりせば』の公開を4月1日に控えて、舞台挨拶やメディア取材に応じていたが、そのひとつが「女性セブン」だった。
そこには「まだまだ働かなくてはならない」「戦争体験を伝えていくことはこれからも続けていきたい」と元気そうな姿(写真)で“今後”について語っている。
終戦を旧満州で迎え、壮絶な戦争経験を持ち、これまでも反戦を訴えてきた宝田。今後も戦争体験を若い人に伝えていきたいと語った宝田だが、それが突然断たれてしまった。また一人、戦争体験者であり反戦を訴える貴重な人物が失われた。