今や日常生活において、かかせないツールとなっているコミュニケーションアプリ「LINE」。ママたちの「グループチャット」から浮き彫りになった、彼女たちの悩みや、苦悩、気になる話題を覗いてみる。
子どもは成長と共にさまざまな言葉の意味を覚え、知識を得ていく。テレビやYouTubeで見たタレントや芸人の言葉に影響を受け、下品で乱暴な言葉使いをまねし、自然と周りの子どもたちに伝染していくこともあるだろう。
今回は、子どもの言動についてどうしつけをするべきか悩む女性のエピソードを紹介する。
ゲーム実況好きの兄の影響で、妹が「くそ」「死ね」と暴言を
都内で10歳の息子と7歳の娘を育てている英恵さん(仮名・42歳)は、「上の子がYouTubeでゲーム実況の動画を見るので、下の子も一緒になってYouTuberの口まねをするんです」と語る。
ゲーム実況といえば、つい最近、有名なゲーム実況者の加藤純一が自身の結婚式をYouTubeで生配信し、「スーパーチャット(スパチャ)」と呼ばれる投げ銭システムで2億円もの“ご祝儀”が集まったことが話題となった。
「息子はゲーム実況動画が好きで、自分もゲームをしながらスマホで動画撮影をしたりしています。その様子を見ている娘は、息子やYouTuberの言葉遣いをまねして、『なんだよ』とか『はあ?』などと口が悪くなってきたので注意しました。しまいには『くそ』『死ね』という暴言まで使うようになったので、一時的にYouTubeを見ることを禁止したこともあります」
スマートフォンの普及により、YouTubeの視聴者層が低年齢化している今、ブラウザの設定などで過激な動画やアダルト系のコンテンツを表示しないよう視聴を制限することもできるが、英恵さんによると、ゲーム実況動画などはこれには当てはまらないようだ。
「年齢制限を設定したところ、子どもが見ていた動画にはほとんど影響がなかったんですよね……。また、子どもたちの間で人気のゲーム『マインクラフト』の実況動画を中心にアップしている、『まいぜんシスターズ』というキャラクターYouTuberユニットがいるんですが、カメのマイッキーは噓つきなキャラで、些細な嘘をつく。子どもにとってはそれが面白いみたいでよくまねをします。子どもに“嘘をついてもいい”というふうに思ってほしくないし、本当は動画を見せたくないんですが、『見てはいけない』と子どもに言っても『どうして?』と反論されてしまい、うまく説明できませんでした」
そんな英恵さんは、YouTubeを見た子どもにある言葉の意味を聞かれて返事に困ったことがあるという。
「『全力回避フラグちゃん!』というYouTubeアニメがあり、登場人物のセリフに“童貞”という言葉が出てきました。絵の可愛さにつられて娘も見ているんですが、この前は息子から『童貞ってどういう意味?』って聞かれて、返答できず困りましたね。いくら『そんなアニメ見てはダメ』と言ってもスマホやパソコンには再生履歴が残るし、履歴を消したところで検索してしまえば簡単に見ることができるので、なかなか難しいところです」
英恵さんは、子どもにYouTubeを見せないためには、「パソコンやスマホを触らせないようにするしかない」と主張する。
「コロナ禍により自宅で過ごす時間が長くなったため、どこの家庭でも子どものYouTube視聴が習慣化しているようで、ママ友とはLINEのメッセージで『子どものYouTube視聴時間、どれくらいまでなら許してる?』と相談し合っています。仲が良いママ友の家では、テレビと同じように視聴時間を決めているそうですが、テレビのようにタイムテーブルが決まっているわけでもないし、次から次へと動画を見ることができる。視聴をやめるタイミングがはっきりしておらず、『YouTubeを閉じようとすると子どもがぐずる』とみんな悩んでいるようでした」
もちろん、子どもたちがテレビを全く見なくなったわけではないという。
「周りのママ友は、20~40代と年齢に幅があるので、みんなが共通で見ている番組は、子ども向けのスーパー戦隊シリーズやアニメくらい。ただ、クイズ番組に出ている東京大学出身の伊沢拓司さんや松丸亮吾さんはママの間で人気です。2人は子どもの学習教材でも、よく出てきますよ。でも、子どもたちはリアル鬼ごっこ番組の『逃走中』(フジテレビ系)が好きで、放送中は『ほかの番組を見せてもらえない』とママ友から嘆きのLINEが届いたこともありました」
ママたちの間では、タメ口で話す若い女性タレントも不評だというが、それよりも芸人同士の振る舞いが気になるそうだ。
「タメ口を使うタレントの代表格ともいえるYouTuber・フワちゃんは、子どもに見せないようにしている親は多い。また、最近はテレビで芸人の漫才を見て、ツッコミがボケを勢いよく叩く様子を子どもたちがよくまねしているので、注意しています。例えば錦鯉のネタで、ボケの長谷川(雅紀)さんが『こんにちはー』と勢いよくあいさつをし、渡辺(隆)さんが『こんばんはだろ』とツッコミを入れながら長谷川さんの頭を叩く流れがあり、子どもたちの間ではやっているんですが、頭を叩く力が強いんです。子どもたちはじゃれあっているつもりのようですが、小学校で男の子同士がトラブルに発展してしまったみたいで、『相手を叩く力が強いので、漫才ごっこはさせないでくれ』と先生から保護者に注意喚起がありました」
子どもが保育園の頃は、ごっこ遊びなどで男の子たちが戦隊キャラクターをまねて叩き合ったりしても、保育士さんが間に入って止めてくれる。だが小学生になると、行動範囲が広がるため、先生の目も行き届きにくくなるため、学校側も注意しづらいようだ。
一方で、子どもに見せやすい芸人もいるようだ。
「例えば、あばれる君は、『ポケットモンスター』の情報バラエティ番組『ポケモンの家あつまる?』(テレビ東京系)に出ているので子どもに人気があり、私のような親の視聴者も不快にさせないので子どもにも見せやすいですね」
しかし、芸人が多数出演する番組では、誰かがいじられキャラに回ることがあり、時たまいじめのように見えてしまうケースも。お笑い番組を見せることに抵抗感を抱いているという英恵さんは、「テレビの影響で、子どもたちが複数人で1人を冷やかすこともあるようなので、保護者としてはヒヤっとしてしまいます」と語る。
そんな英恵さんは、できる限り暴力的な言葉のYouTubeは見せないように気を付けているそうだ。
「テレビ番組や芸能人と違って、YouTuberはまだまだ世間の評価がわかりづらいため、ママ友と、子どもが見ているYouTube動画についてLINEで情報交換をしています。フィッシャーズほど有名なユーチューバーなら、どういう内容の動画を投稿しているかわかりますし、私も『子どもがまねをしたがる大金を使って買ったおもちゃの開封動画はなるべく見せないようにしている』などと報告しました」
子どもたちにとって、テレビよりも身近になりつつあるYouTube。動画の再生履歴をもとに、おすすめの動画が自動的に表示されるため、予期せぬ形で悪質な動画にたどり着いてしまうこともあるだろう。視聴時間もさることながら、保護者は子どもが見る動画の内容にも目を光らせているようだ。