• 日. 12月 22nd, 2024

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明日あなたが被害にあうかもしれない

仮面ライダー俳優が万引き! Gメンが犯行の“常習性”と警察の “忖度” を解説

 こんにちは、保安員の澄江です。

 先日、男性アイドルグループの人気メンバーで、元仮面ライダー俳優でもある男が、昨年10月に福岡県内の商店街にある閉店間際のドラッグストアで万引き行為に至り、捕捉されていたことが判明しました。用いた手口は、隠匿。その犯行態様が明らかにされていたので、被疑者の挙動や店側の対応など、気になるところを時系列に沿って検証してみます。

 犯行現場は、ドラッグストアK。得られた情報により確認したところ、昔ながらの薬局がドラッグストアになった雰囲気のお店で、大きさでいえば、コンビニエンスストアと同じくらいでしょうか。このタイプの店舗は、売場面積の関係から高い棚を設置する場合が多く、結果として死角箇所が目立つレイアウトになってしまうため、万引き抑止が難しいのです。

 犯行当日、残暑のなか大きめのロングパーカーを羽織って、ハットを深めにかぶって顔を隠すようにして店に入ってきた被疑者は、カゴを持つことなく商品を手に取り店内の死角に向かっていきました。おそらくは高齢者層の顧客が中心だろう商店街のドラッグストアに、そんな服装で入っていけば目を引くに違いありません。

 案の定、そのあやしさは際立っていたようで、閉店準備に勤しむ店員さんの目にも留まり、行動を監視されることになりました。

 品出しのフリをしながら脚立に上って、被疑者の頭上から気付かれぬよう行動を監視した店員さんは、整髪料や化粧品などの商品を上着のポケットや袖口に隠匿する犯行の一部始終を現認。

 隠匿した商品の精算をすることなく店の外に出た被疑者は、店員さんの制止を振り切って、およそ300メートル先まで全力疾走で逃走した後、たまたま通りかかった通行人の手により確保されました。追跡してきた店長と警備員に引き渡された後も事務所までの同行を嫌がった被疑者は、1万円札を取り出して

「これで勘弁してください」
「見逃してください」

 と懇願するなど30分ほど抵抗したそうです。犯行を現認した店員さんは、被疑者が出演していた仮面ライダーシリーズの視聴者で、入店時から彼の正体に気付いていたとのこと。この場で捕まることなく逃げきったとしても、いずれ事件は明るみになっていたに違いなく、捕捉時における往生際の悪さが余計に残念な展開となりました。

 被害は、ヘアオイルなど計6点、合計で9,000円ほど。

 万引き事案でいえば、なかなかの高額被害といえ、状況から察すれば初めてのこととは思えません。人目を引くアイドルという立場にありながら、大胆な犯行に及んだ理由を思えば、捕まらない自信もあったのでしょう。バッグなど犯罪供用物を使うことなく、複数の商品をさまざまな場所に隠す手口をみれば、ゲーム感覚で犯行に及んだ側面すら感じられます。

「気が高ぶってやった」

 警察官到着後は、犯行を素直に認めて謝罪に転じたそうですが、逃走を図り、逮捕者に買収を仕掛け、同行に抵抗したことに鑑みれば、前科前歴に関係なく逮捕されて当然といえるレベルの犯情(犯罪の背景)といえるでしょう。

 ところが、被害弁償したことなどを理由に逮捕されることなく微罪処分で済まされたため、ネット上などで警察の甘い対応を指摘する人も多くみられました。まして被疑者は、名古屋観光大使やあいち地位安全サポーター、愛知県警の広報大使としても活躍しており、絶対に間違いを犯してはいけない立場にある人物です。

 これらのことから警察による忖度を疑う声まで散見されましたが、今まで数多くの万引き犯を捕まえ処理してきた立場からいえば、このような結末はよくあることといえます。

 本件の場合、通りがかりの人による捕捉と閉店間際の犯行だったこともあり、おそらくは逮捕者や被害者の協力が満足に得られなかったのではないでしょうか。被害申告は任意のため、特段の事情がない限り断れますし、残業したくないなど被害者側の事情で申告されないこともあるのです。

 もっとも管内に大きな繁華街を抱える署なので、ほかの事件との兼ね合いで被疑者の処分を警察に一任させた可能性も捨てきれませんが、それは忖度といえるものではないでしょう。

「これを最後にしてくれたら、それでいい」

 私自身、捕捉した被疑者に対して、そう声をかけるようにしています。でも、逃走を図ったり、買収を仕掛けてきた被疑者に対しては、声をかける気持ちにすらなれません。

 また、彼のような有名人が万引きをして捕まると、すぐに窃盗症やクレプトマニアといった病気だと決めつけてかかる識者が散見されるようになりました。

「あの人が、そんなことをするはずがない。病気としか考えられない」

 罪を犯した有名人をかばいたくなる気持ちはわかりますが、事情も知らずに何かと理由をつけて病気に仕立てあげること自体が失礼な話で、そうした主張を目にするたび辟易とさせられます。

 今回の被疑者は、犯行理由を明確にしているにもかかわらず、ある情報番組では「病気なのではないか」と言及されていました。微罪処分で済まされたことで、病気を主張することなく自分の罪を認めたのだとすれば、個人的には治療の必要はないのではないかと思います。

(文=澄江、監修=伊東ゆう)

本コラムを監修している伊東ゆうさんが新連載を開始しました。ぜひご覧ください。
『伊東ゆうの万引きファイル』https://ufile.me dy.jp/

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