今や日常生活において、かかせないツールとなっているコミュニケーションアプリ「LINE」。ママたちの「グループチャット」から浮き彫りになった、彼女たちの悩みや、苦悩、気になる話題を覗いてみる。
「小3の壁」という言葉を聞いたことがあるだろうか。小学3年生になると、算数の授業は割り算や分数などの高度な内容科目を習うようになり、新たに理科や社会という教科も加わる。さらに、2020年の教育改革によって小学校での英語教育が必修となり、かつては中学から学び始めていた英語の授業も小3からスタートするようになった。
こうした背景もあり、学校の授業についていけなくなる子が小3から増えはじめることから「小3の壁」と呼ばれている。なお都心部では、「SAPIX」や「四谷大塚」というような中学受験を目的とする進学塾への通学も、小3から本格化するようだ。
また、学童保育も小3で離れる児童もいるようで、つまり、この時期を境に子どもの放課後の過ごし方が変化するとも言える。そんな中、学童をやめた児童の放課後を気にかけているママのエピソードを紹介する。
子どもを学童に入られず、仕事を辞めたママ友
小3の女児を育てている会社員の弥生さん(仮名・42歳)は、ママ友の子どもをみて、勉強面以外にも「小3の壁」を実感しているという。
「小学校に入学したものの、学童に入ることができずに待機児童になってしまうことを表す『小1の壁』という言葉もあるのですが、私も娘が保育園を卒園した時、『学童に入られるのかな?』と心配でした。結果的に娘は小学校近くの学童に入ることができましたが、学童はまだ一人で留守番ができないような年齢の低い子が優先される。小3になると、入所判定基準の点数が引かれるので、学童にいられない子もでてくるんです。仲が良かったママ友の子は、点数が足りずに待機児童になってしまい、ママ友は派遣の仕事を辞めてしまいました……」
なお、全国学童保育連絡協議会の調査(21年5月時点)によると、12年には2万0,846だった学童保育数は、21年には2万4,447と4,000以上増加。しかし、入所を希望している児童数は12年の84万6,947人から、21年1,30万7,699人と、46万人以上も増えている。学童保育の施設数に、児童数が追いつていない状況だ。弥生さんは以下のように語る。
「小3とはいえ、1人で留守番させるにはまだ少し心配な年齢。この前、同じマンションに住む娘の同級生のYちゃんが部屋に入れずに家族の帰りを待っているのを見つけたので、うちで一時的に保護したんです。Yちゃんママは子どもに家の鍵を渡しておらず、急な残業で遅くなっているようでした。電話をしたのですが、悪気もなく『ちょっと見ててもらえますか?』と言われたので、無責任だなと感じましたね」
弥生さんいわく、「小3になると、学童などを利用せずに一人で行動する子も増える」という。それには新型コロナウイルス感染拡大も影響しているようだ。
「Yちゃんは、小2まで通っていた学童クラブでコロナ陽性者が出て、濃厚接触者となったために、登園できない日々が1週間ほど続いたとか。通えないのに月謝を払うのはもったいないということで退園したそうです」
その後も、家の鍵を渡されていないYちゃんの徘徊は続いたそうだ。
「ママ友との間でも、小学校や学童の周りをうろちょろしているYちゃんのことが話題に上がっています。LINEのグループチャットでは、あるママ友からYちゃんが同じマンションの別の学年の男の子の家に上がっていたことを心配するメッセージが届きました。まだまだ子どもですから、悪い大人についていってしまう可能性もないとは言い切れないし、ほかの家の子とはいえ心配。ママ友の間では、Yちゃんが一人でいる姿を見たら声をかけるようにしています」
「一緒に帰りたい」と言われ、家まで送ってあげたママも
弥生さんは、「明らかに育児放棄されているわけではないものの、1人でいるYちゃんの姿を見かけると放っておくわけにはいかず、困ってしまう」と話す。
「うちの小学校には併設の学童がなく、放課後は校庭で遊ぶ生徒が多かったんですが、コロナ禍の影響で校庭開放も中止になり、子どもたちは行き場をなくしているようです。Yちゃんは、公園で遊んでいることも多いらしいのですが、帰り道が怖かったらしくて娘が通う学童の近くまで来て、『一緒に帰りたい』と言われたことも……。ママ友にLINEで相談したら、『実はうちも頼まれて、家まで送ったことがある』と返信が来ました。みんなYちゃんママに話をしても無駄だとわかっているので、Yちゃん本人のために送ってあげているようです」
善意からYちゃんの面倒をみているという弥生さんだが、ある時、娘とYちゃんの間にトラブルが起きたという。
「娘がYちゃんと休日に公演園で遊ぶ約束をしてきたんです。YちゃんママにLINEを送っても既読はつくけれど返信がないことも多いので、確認しないで娘と一緒に公園に行ってみました。しかし、Yちゃんが全くやってこない。娘とYちゃんの家に行ったら、なんと別の子と遊んでいたんです……。Yちゃんは『あ、ごめん。忘れていた』の一言。これまでYちゃんのためを思って、うちで預かったり、マンションまで一緒に帰ったりしていたので、娘が大事にされていなかったのかなと思うと、イライラしてきました」
小3になり、子どもの放課後の過ごし方に差が……
弥生さんは、「Yちゃんママには悪気がない」とも語る。
「Yちゃんママは『平日は働いているので、土曜日はゆっくりしたい』と、基本的にYちゃんには公園で遊ぶように言っているそうです。そのため、娘も遊びに誘われたみたいでした。あの日、なぜかYちゃんはお友達と家で遊んでいましたが……(苦笑)。なお、娘の周りの子を見る限り、学童に通う子や塾に通う子、平日は毎日のようにお稽古ごとに通っている子と、習い事をしていない子では、放課後の過ごし方に差が出てきたような気がします」
放課後や休日にそれぞれ予定が入っている友達が多いため、子どもたちは、ママ同士も付き合いがあり、密に連絡が取れる関係の子と遊ぶことが多くなっているようだ。
「娘が、『習い事をしているから土曜日には遊べない友達がいる』と言っていました。たとえ学校で仲が良くても、ママ同士交流があって、休日に気軽にやりとりができる関係値じゃないと、なかな会いづらいようです。特に休日の場合は、親同士がしっかり子どもの予定を把握しておかないと、娘とYちゃんのようにトラブルが起きてしまうのかもしれません」
弥生さんによると、小3にもなると、特に女の子の場合は友達付き合いもグループ化していき、関係がうまくいかなくなると学校で孤立してしまうケースもあるという。親としては子どもの友達付き合いにもしっかり目を向けたいところだ。