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福山雅治、『ガリレオ』シリーズ第3弾で話題! “二枚目”から“おじさん”まで演じる俳優としての成長

 福山雅治が主演を務める『ガリレオ』シリーズの劇場版第3弾『沈黙のパレード』(9月16日公開)。4月27日には、最新ビジュアルと特報映像が解禁され、ネット上ではファンが歓喜の声を上げている。

 同作は、東野圭吾氏の推理小説『ガリレオ』シリーズ(文藝春秋)を原作とした映像化作品。2007年にフジテレビ系で連続ドラマ『ガリレオ』が放送され、平均視聴率21.9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と大ヒットを記録した。

 翌08年には劇場版第1弾『容疑者Xの献身』、13年には連続ドラマの第2シーズンと、劇場版第2弾『真夏の方程式』がそれぞれ公開。そして今年、劇場版第3弾『沈黙のパレード』が封切り予定だ。

 約15年にも及ぶ長期シリーズで、主役の天才物理学者・湯川学を演じているのは、俳優やシンガーソングライターとして活躍中の福山。ミリオンセラーを持つ歌手でありながら、1991年のドラマ『あしたがあるから』(TBS系)に初出演したのを皮切りに、10年放送のNHK大河ドラマ『龍馬伝』では主演を務め、好評を博した。

 19年にはTBS系「日曜劇場」枠の連続ドラマ『集団左遷!!』で、主役の銀行員・片岡洋を熱演。ドラマ評論家・成馬零一氏は、サイゾーウーマンにおける同作のレビュー記事にて、「やっと福山も、こういう役を演じるようになったのか」とつづっており、これまでの「クールな二枚目」キャラクターから、「等身大路線」に変わった作品だと分析している。

 そこで、『沈黙のパレード』への期待が高まっている今、同記事を再掲。“俳優・福山雅治”がどのように形作られたのか、ぜひ振り返ってみてほしい。
(編集部)


『集団左遷!!』等身大の“おじさん”を演じるようになった、俳優・福山雅治の成長

 『集団左遷!!』(TBS系)は不思議なドラマだ。放送枠は『下町ロケット』等のおじさん向け企業ドラマを放送していることに定評がある「日曜劇場」だけに、始まる前は硬派な大人向け作品になるかと思っていたが、どうも思っていたものと違う。

 物語は、銀行員の片岡洋(福山雅治)が蒲田支店長に就任するところからはじまる。出世に喜ぶ片岡だったが、蒲田支店は経営の合理化のため廃店となることが決まっていた。半年間で100億円のノルマを果たさば廃店を免れるというが、何もしなくていい、廃店後の立場は保証する、と釘を刺される片岡。悩んだ末に片岡は本部に反発し、部下たちと共にノルマ達成に挑む。

 展開自体は「日曜劇場」定番である“おじさんたちの逆転劇”で、脇を固める香川照之や三上博史の演技はシリアスだ。しかし、主演・福山の演技はオーバーアクションでドタバタしているため、他俳優との落差が生まれてコメディのようにも見える。「演技のミスマッチ」と受け取る人も多いようだが、シリアスとコミカルのギャップが新鮮で、個人的には毎週楽しみにしている。

 何より、福山が“ヒーロー”ではない等身大の男を演じたことに驚いた。だが同時に「やっと福山も、こういう役を演じるようになったのか」と感慨深くも感じる。

 福山は現在50歳。高校卒業後、5カ月間だけ会社勤務した後、上京し「アミューズ・10ムービーズオーディション」に合格してアミューズに所属。19歳の時に映画『ほんの5g』(1988年)で俳優デビューした。その後、『あしたがあるから』(TBS系、1991年)等のドラマに出演する一方、ミュージシャンとして大活躍する。

 筆者が福山を知ったのはラジオ番組『オールナイトニッポン』だった。ラジオの福山は、エッチな話も自然にできる陽気なお兄ちゃんという感じだったので、後にテレビで俳優、ミュージシャンとして出演している姿を見た時は、ラジオとのギャップに驚いた。

 福山が演じる役はクールな二枚目が多く、ヒット曲も甘いラブソングがほとんどだった。しかし、彼が好きなアーティストは泉谷しげる、SION、浜田省吾といった男臭い人ばかり。ラジオでは下ネタを言い、男臭いロックを好む福山と、世間が求める福山は大きくズレているように見えた。

 だが、その“ズレ”に対し悩んでいた痕跡は、ほとんどないのが福山の面白さで、意気揚々とクールな二枚目キャラを引き受けていた。ラジオ番組でバランスが取れたからこそ、カッコいい役を抵抗なく演じられたという側面もあるだろうが、そもそも福山は、顔で売れたことに対してコンプレックスがない。「カッコいいですね」と言われたら「ありがとうございます」と否定せずに笑って応え、自分が「カッコいいこと」を笑いのネタにして空気を和ませるやりとりを、ラジオで何度も聞いた。

 90年代にラジオ番組で交流が深かった伊集院光を筆頭に、「イケメンなのに性格が良い」と福山の人柄を絶賛する芸能人は多い。性格が良いというのは、気さくで親しみやすいという面もあるが、自分が一番目立ちたいというエゴが薄いという謙虚さもあるだろう。それは俳優・福山にとって大きな武器となってきた。

 例えば、ミステリードラマ『ガリレオ』(フジテレビ系、2007年)の映画第一作となった『容疑者Xの献身』。人気ドラマの映画として本作が特殊だったのは、物語の中心は堤真一と松雪泰子という二人の男女が悲しい犯罪に手を染めてしまう悲劇であり、福山演じる主人公の物理学者・湯川は出番も少なく、見せ場がほとんどなかったことだ。

 意地悪な見方をすると『容疑者Xの献身』は、福山の人気を表看板にして作り手が好き勝手やった結果、生まれた傑作だった。

 こういう使われ方は、エゴが強い俳優だったら耐えられない。普通なら、もっと見せ場を作れとクレームを入れてもおかしくないだろう。しかし、福山は自分が看板になることで良い作品ができるなら「喜んで」と引き受けたのではないか。おそらく作品全体が良くなれば、自分が目立つかどうかは、どうでもいいのだろう。大河ドラマ『龍馬伝』(NHK、10年)も映画『そして父になる』(13年)も、福山の人気を担保にすることでクリエイターが力を発揮した傑作だが、こうした役割を受け入れる姿勢に男気を感じる作り手は少なくないだろう。

 女優の吹石一恵と結婚した15年以降は、クールな二枚目路線は軌道修正されつつあり、ドラマ『ラヴソング』(フジテレビ系、16年)や映画『SCOOP!』(同)ではおじさん役を演じている。中でも、『SCOOP!』での写真週刊誌の中年カメラマン・都城静は、ラジオで見せる下ネタ好きで男臭い福山が反映されており、俳優・福山の最高傑作だといえる。

 そして『集団左遷!!』の片岡支店長も、今まで演じてこなかったタイプの男だ。片山は頼りないが、どこか憎めないところがあり、ぎこちない仕草に人柄の良さがにじみ出ている。片岡支店長もまた、ラジオで見せる福山の人柄が反映された役だと言えよう。この等身大路線は、俳優・福山の新境地となるのではないかと思う。
(成馬零一)

※2019年5月20日初出の記事に追記、編集を加えています。

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