5月9日放送の『あさイチ』(NHK)の“朝ドラ受け”は、陰鬱とした、寒々しい空気で幕を開けた。
この日の連続テレビ小説『ちむどんどん』(同)第21話は、“ニーニー”こと比嘉家の長男・賢秀(竜星涼)が、借金に苦しむ比嘉家の“一発逆転”を狙って、実業家を名乗る我那覇(田久保宗稔)に1,000ドルという大金を預けて投資したものの、詐欺に遭っていたことが判明。自暴自棄になったニーニーは、ハンバーガーショップ「サンセットバーガー」で大暴れし、怒りに任せて“器物損壊”行為に至った。
すると、そのバーガー店で行われるはずだった教え子のライブを台無しにされたと、音楽教師・下地(片桐はいり)が激怒。比嘉家を訪れたが、のんびりと縁側に寝そべっていた賢秀は慌てて座卓の下に隠れようと頭を突っ込む。それを見ていた母の優子(仲間由紀恵)は、息子に謝らせるどころか、布で尻を隠すという隠蔽工作を働いたのだった。
この日の『あさイチ』では、MCの博多大吉が苦笑いしながら「どうしようもないねえ……」と賢秀の言動にあきれ果て、「お母さん。ちょっと甘すぎやしない?」と母の行いにも異議を唱えていた。
「視聴者からも賢秀とその母・優子への不満が噴出しています。優子については、『賢秀が相手に謝罪できない時点で、まともな子育てしてない。いつもニコニコしてるのは叱るよりラクだからでしょ』『ニーニーもクズだけど、謝罪させず息子を隠す母・優子も相当だなー』『咄嗟に存在を隠す母、なんなの? いやいや、そこは母として謝らせるべきよ?』などと、母親としてあり得ないとの声が多数。当然、言うまでもなく非難の矢は賢秀にも向けられています」(芸能ライター)
ちなみに、賢秀のバックグラウンドをさらっておくと、高校生活はボクシングとけんかに明け暮れて中退。那覇や名護に働きに行ったものの、どれも長続きせず、いまは家でゴロゴロしている無職だ。
比嘉家は子どもたちが幼少の頃から生活が苦しく、口減らしに次女を東京へ預けようとしたほどの借金苦だが、そんな一家に育った長男が実業家の口車にまんまと乗せられ、優子に金銭の工面を懇願。「一生に一度の頼みがある! 母ちゃんにもう苦労をかけたくない!」と懇願して大金を用意させたが、全額失ってしまったのだった。
ネット上では、かねてより賢秀への不満が高まっていたが、今回のエピソードでついに堪忍袋の緒が切れた視聴者も続出しているようだ。
「『ちむどんどん』は見てて気分悪くなるからもう見たくない。 あの兄ちゃんを許せない」「この兄貴役が出てる作品はもう見ない。仲間由紀恵が出てる作品ももう見ない。 ちむどんどんのせいで嫌いになった」「クソ母とポンコツ長男ムリ。もう見ません」などの“視聴しない宣言”があふれている。
そんな『ちむどんどん』には、過去大炎上した悪夢の朝ドラとの共通点がある。
「同作の制作統括の小林大児チーフプロデューサーは、2012年度後期に放送された沖縄宮古島と大阪が舞台の『純と愛』の演出に関わっていました。小林CPは『スポーツ報知』のインタビューで、前作の『カムカムエヴリバディ』と今作について、『カムカムの企画との比較は1ミリも考えていない』『朝ドラは、15分間で息も切らせぬテンションで描くサスペンスフルなドラマでもないですし、それが求められてもいないと思う。毎朝気持ちよく、一人の主人公に感情移入していくというのが見やすい』と語っています」(放送作家)
今のところ、主人公に感情移入している視聴者よりも、母と長男にイライラする層のほうが大多数のようだが……。
「ストーカー、離婚、失職など、この世の“不快”を全て詰め込んで炎上した『純と愛』の制作に携わっていたとなれば、それも当然かもしれません」(同)
ところで、今後の登場人物を見た時、賢秀の人生が好転しそうなキャストがいるようだ。
「東京編で出てくる予定の、養豚場の経営者・猪野寛大(中原丈雄)と、寛大の娘で、放浪の旅に出た賢秀と出会う清恵(佐津川愛美)という2人です。比嘉家で2頭のブタを世話していた賢秀は、その1頭であるアババの『豚肉』が食卓に並んだことにショックを受けていましたが、もう1頭の『アベベ』の行方はこれまで描かれていません。いずれにしても、“豚”がキーワードになりそうです」(同)
朝ドラ的な物語展開としては、例えば、賢秀が養豚場でイチから経営を学び、養豚業界で名を馳せ、横浜で料理人を目指すことになる暢子と協力していくという運びが想像できるが、果たして……。
(村上春虎)