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参議院選挙前に考える、「女性議員」が少ない理由と「政治家の質」を上げる方法

 第26回参議院選挙が6月22日に公示され、選挙区と比例代表合わせて545人が立候補を届け出たという。このうち、女性候補者は181人で立候補者全体の33.2%に上り、2019年に行われた前回の28.1%と比べて5.1ポイント上昇。全体に占める割合は過去最高となった。

 政府は25年までに、国政や地方選挙の候補者に占める女性の割合を35%に引き上げることを目標に掲げている。全体的には“ほぼ目標達成”といえる数字だが、主要9政党別に女性候補の割合を見ていくと、自民党が19人で23%、立憲民主党が26人で51%、公明党が5人で21%、日本維新の会が14人で30%、国民民主党が9人で41%、共産党が32人で55%、れいわ新選組が5人で36%、社民党が5人で42%、NHK党が19人で23%(NHK調べ)と、大きな差があることもわかる。

 日本では長らく「女性議員が少ない」状況が続いており、21年10月に行われた第49回衆議院議員総選挙は、当選者に占める女性の割合はわずか9.7%。これは前回(17年)の10.1%を下回る結果だった。また、昨年、IPU(列国議会同盟)が発表したデータによれば、国会における女性議員の割合ランキングで、日本は193カ国中164位という結果に。世界と比べても、圧倒的に女性議員の数が少ないのだ。

 今回の参院選を前に、ネット上には「今回こそは女性議員を増やしたい」との声も上がっているが、「女性が多ければいいってもんじゃないだろ」「女性議員を増やしたら、本当に政治が良くなるのか?」といった疑問の声も少なくない。

 さまざまな意見がかわされているが、そもそも、日本ではなぜ女性議員が増えないのだろうか? 女性議員が少ないと、私たちの生活にどのような影響があるのだろうか? 女性議員を増やすには、何をすればいいのか? サイゾーウーマンでは、そんな素朴な疑問を、上智大学法学部教授の三浦まり氏に聞いていた。7月10日の投票日を前に、同記事を再掲する。
(編集部)

※以下、2018年6月23日初出の記事に追記・編集を加えています。


 日本でも女性の社会進出が当たり前になってきたとはいえ、政治の世界ではいまだに男性中心だ。IPU(列国議会同盟)のデータによれば、2018年5月時点で日本の女性議員の割合は10.1%。これは世界193カ国中160位で、先進国の中でも特に低い数値となっている。

 では、なぜ日本は女性議員が少ないのか? 女性議員が少ないことで起こるデメリット、女性議員が増えることによるメリット、さらに具体的にどのようにすれば女性議員は増えていくのかについて、編著に『日本の女性議員 どうすれば増えるのか』(朝日選書)がある、上智大学法学部教授の三浦まり氏に詳しい話を聞いた。

 先進国の中でも特に日本は女性議員数が少ない。その要因のひとつとして、「性別役割分業」が大きく影響していると、三浦氏は指摘する。

「『男は外での仕事』『女性は家庭の仕事』を担うべきとする意識が諸外国に比べて根強い日本では、男の仕事とされる政治に、女性がそもそも参加しづらい背景があります。さらに選挙で当選するには、家族の支援も重要となりますが、女性の場合、夫の協力もあまり期待できないため、立候補するにしてもハードルが高いのです」

 また、政治家という職業、特に選挙が頻繁にある衆議院議員の場合は、長時間労働でありながら休日がほとんどない。しかもスケジュールは流動的なので、家族に対する責任と両立させることが非常に難しい。そのため三浦氏によれば、実際に女性政治家は男性政治家と比べて独身者や子どものいない割合が多く、家族に頼れない厳しい状況にあるのが現状なのだという。

 文化的な要因としても、「政治は男性の仕事」という考え方が、男女問わず、日本国民の間で根強いことも大きい。さらに政党が公認候補をほとんど男性だけに決定していることも、女性が擁立されにくい背景となっている。妊娠・出産する女性議員への有権者からのバッシングに対して、政党幹部が守ることもあまりない。構造的にも女性議員が増えにくいのが現状なのだ。

 女性議員が少ない現状、どのような弊害が生じているのだろうか? まずは、妊娠や育児に関する問題解決が後回しになっていると、三浦氏は言う。

「一般に女性が関心を持つ分野は、外交や防衛、経済対策などに比べて、政治的に重要ではないと思われがちで、政策に反映されないことが多くあります。たとえば、不妊治療や待機児童、セクハラ問題などは、これまで政治的な場での議論がなかなか進まず、解決が先延ばしになってきました。女性と男性で物の見方や優先順位が異なる政策をめぐっては、現状では男性側の主張が通ってしまいがち。しかし、女性議員が増えれば、ゆがんだ構造は是正され、バランスの取れた議論が生まれるはずです」

 現状では、少数の女性議員が世の中の女性の声を代弁する形になっているが、女性議員が増加し、男女の数が均等になってくると、女性の「代弁」という役割ではなく、個々人の特性が生かされた動きができるようになるとも、三浦氏は語る。

 “女性議員”から個人としての議員へ――そうした政治の変化に伴い、社会においても固定的な男女役割が柔軟に変わっていくことが期待できる上、女性議員が増えれば、男性議員間の競争もより激しくなり、政治家の質が上がると予想されるのだ。

 それでは、具体的に女性議員を増やすには、どうすればいいのだろうか?

 今年5月16日に「政治分野における男女共同参画の推進に関する法律案」が参議院で可決、成立した。この法案成立の意義は大きいと、三浦氏は語る。

「今までは、どの政党も、女性議員を増やすことに本気では取り組んでいませんでした。しかし、今回の法律が成立したことで、各政党は基本原則として選挙の立候補者数の男女均等を目指すことが求められるようになったわけです」

 現職議員を降ろしてまで新人女性を擁立することは難しい。そのため、議席をこれから獲得していく野党が新人候補としていかに女性を擁立できるかが、法律に実効性を持たせる鍵になってくると三浦氏はいう。

「多くの先進国を見ても、リベラルな政党が女性候補者を多数擁立し、政権交代を起こすことによって、女性議員が増えています。そして、選挙に負けた保守政党が『こっちも女性を増やさないと、また負けてしまう』と焦ることで競争が起き、全体として徐々に女性議員が増えているのが世界の趨勢なのです」

 1990年代後半までは、イギリスやアメリカなどでも今の日本と同様、女性議員が少なかったが、今ではイギリスは28.5%、アメリカでも19.7%と変わってきている。日本と同じく、女性議員が少なかった韓国では、候補者の一定比率を女性に割り当てる「クオータ制」を法的に義務づけて17%まで上がっている。

 今回成立した「政治分野における男女共同参画推進法」は基本原則を定めたもので、政党に対する罰則はない。しかし、男女格差を測る「ジェンダー・キャップ指数」が世界で114位の日本においては、今後は「クオータ制」を採用して、さらに法的な強制力を強めるといった策を講じなければ、現状の大幅な改善は難しいかもしれない。
(福田晃広/清談社)

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