米連邦最高裁は、現地時間6月24日に「人工妊娠中絶を受ける憲法上の権利を認めない」という判断を下し、これに対する国民の怒りと抗議の声が全米に広まっている。セレブも次々とSNSで抗議声明を発表。全米各地で巻き起こっている抗議デモに参加するセレブもおり、今後、こうした活動に参入する人数は増加するとみられている。
今回、連邦最高裁が下した判断は、人工妊娠中絶権を合憲だとした1973年の判決を覆すもの。今年5月、連邦最高裁の多数派判事が草案を書いていることがリークされ、こうなることは予測されていたが、「多くの命を奪う銃所持の権利は尊重するくせに、矛盾している!」と怒りの声が噴出。
若い層を中心に支持されているテイラー・スウィフトは、Twitterで「何十年もかけて女性が自分たちの体に関する権利のために闘ってきたのに、それが奪われてしまった」と嘆き、81万を超えるいいねを獲得。
ヒラリー・ダフは、「男世界の中において女性は無力なのだということを改めて感じ、ショック状態だった」「抗議の投稿をしてもデモに参加しても、意味ないんだよね。この世は残酷だし、後退してるし、めちゃくちゃだし」と悲しみ、この国において、これまでも、そしてこれからも大変な思いをし続ける有色人種、同性愛者、10代の妊婦たちに対して深く同情した。大御所歌手のバーブラ・ストライサンドは、「(連邦最高裁は)アメリカ版タリバンだ」と過激ツイート。ネット上の注目を集めた。
自身のつらい中絶経験を語ることで、「女性としての権利を守りたい」と訴えるセレブにも注目が集まっており、13年に不慮の事故で亡くなった俳優のポール・ウォーカーの娘メドウは、新型コロナ・パンデミック中の2年前に中絶したと告白。「自分は精神的にもサポートを得られ、とても安全に中絶手術を受けることができた。でもこの判断が下ったことで、これからは危険な(闇の)中絶が増えることになってしまう」という投稿には共感する声が集まった。
公共の場で抗議の声を上げているセレブもいる。3年ぶりに復活したイギリスの世界最大級音楽フェス、グラストンベリー・フェスティバルでパフォーマンスしたビリー・アイリッシュとフィービー・ブリジャーズは、「アメリカの女性にとって暗黒の日となった」とステージ上で発言。
25日に同フェスでパフォーマンスしたオリヴィア・ロドリゴは、中絶を認めないとした判事の名前を挙げ「大嫌い!」と言い放ち、「ファック・ユー」と絶叫しながら歌った。
多くの男性セレブも今回の判断に反発しており、グリーン・デイのヴォーカリストであるビリー・ジョー・アームストロングは、24日に行ったロンドンのライブで怒りを炸裂。「アメリカ国籍を放棄し、イギリスに移住する」とFワードを連呼しながら宣言し、「ジョークだと思うなよ」と吐き捨てた。
また、デモに参加して抗議を表明するセレブも。24日にニューヨークで行われたデモには、モデルのカーリー・クロスと夫の実業家ジョシュア・クシュナーが参加。怒りをあらわにしたプラカードを掲げ、行進した。
『フルハウス』のステファニー役で知られるジョディ・スウィーティンは、25日にロサンゼルスの高速道路上で行われたデモに参加。行く手を阻む警察官の中を突き進もうとして、押し返され、派手に転倒。コンクリートの道路に体をたたきつけられた瞬間の動画がデモ参加者によりネット上に拡散され、「平和裏なデモの参加者に、警察官がひどい暴行を加えている!」と非難する声が上がった。
ジョディは自身のインスタグラムにもその動画を投稿。ほかにも、デモに参加した女性参加者の自転車を警察官が無理やり奪おうとしてもみ合う様子、デモに参加する女性を警棒で殴ったりしている様子などをストーリーに公開し、代理人を通して「私たちの声が届くまで(デモ活動などの)アクティビズムを続ける」「自分たちの権利のために、私たちは戦い続ける」と宣言した。
また、女優のビジー・フィリップスはSNSの多数のフォロワーを通じて、中絶に関する情報や費用を援助する団体の情報を拡散しようと働きかけている。
連邦最高裁が下した今回の判断では、中絶を禁止するかどうかは各州の立法の判断に委ねられることになる。リベラル派の多いカリフォルニア州やマサチューセッツ州は中絶の権利を認める判断をするとみられており、これがきっかけでアメリカの分断が加速するのではと懸念されている。
5月の草案リークした直後に全米各地で行われた抗議デモには、歌手のシンディ・ローパー、女優のミラ・ジョヴォヴィッチやローラ・ダーン、クリスティー・ターリントン、ジュリア・ルイス=ドレイファスや、若い層に人気のダヴ・キャメロンらが参加し、大きなニュースとなっていた。
今後、全米各地で活発化するであろうアクティビズムには、この時を超える多くのセレブたちが参加するだろうと注目を集めている。