下世話、醜聞、スキャンダル――。長く女性の“欲望”に応えてきた女性週刊誌を、伝説のスキャンダル雑誌「噂の真相」の元デスク神林広恵が、ぶった斬る!
早い猛暑に早い夏のネタ枯れか。週刊誌業界ではお盆前後が“夏のネタ枯れ”期間などと言われてきたが、今週の女性週刊誌を見ると、すでにネタ枯れ状況のようで。ろくなネタがない! ということで――。
第607回(6/23〜6/28発売号より)
1位「黒柳徹子『さだまさしも有吉弘行も』次々共演NGの“生前整理”」(「女性セブン」7月7・14日号)
2位「桑田佳祐と長渕剛 犬猿すぎるロックスターの結末」(「女性セブン」7月7・14日号)
3位「藤井フミヤ 深愛の妻と手つなぎルール」(「女性自身」7月12日号)
冒頭、言い訳のようになっているが先週、先々週と続き、またしても芸能界犬猿の仲&共演NGネタをお届けすることをお許しいただきたい。でも、仕方ない。しつこくこのネタを繰り広げる女性週刊誌、そして今週、ほかにめぼしいネタがほとんどなかったから。
思えば、この一連の流れをつくったのは「女性セブン」(6月23日号)だった。「石田ゆり子と米倉涼子『共演NG』15年因縁の決着は『安住紳一郎』」と題し、石田と米倉双方がかつて俳優の岡本健一と付き合っていたという“恋人かぶり”などが理由で、共演NGだと報じたのだ。しかし報道後、石田ゆり子が速攻で報道を否定。
しかし、そんなことがあった直後、今度は「女性自身」(7月5日号)が松田聖子とユーミンの蜜月とその後の確執、そして和解を報じた。記事には、18歳だったユーミンのデビューに関与し、売り出しキャッチコピー「新感覚派ミュージック」を手がけた音楽評論家で尚美学園大学副学長の富澤一誠氏の「喧嘩別れなどではないと私は思います」との否定コメントがあったが、「自身」はそれを無視したような記事作り。
芸能マスコミにとってこうした不仲・共演NGネタは“ネタ切れ”のときに便利な風物詩だと先週も指摘したが、またしても今週「セブン」が不仲・共演NGネタをぶち上げた。かなり大物芸能人たちを登場させ、しかも芸能特集トップ記事で。そして2本立てという複数攻撃だ。石田ゆり子に速攻で否定され、批判されたことがよっぽど悔しかったのか、意地になっているのか!? とも思える力の入れよう。
まずは黒柳徹子とさだまさし。大物である。『徹子の部屋』(テレビ朝日系)の常連で徹子の“盟友”とまで言われてきたさだ。しかし、ここ5年以上共演がないという。そこで「セブン」は検証した。最後の共演『徹子の部屋』の2016年12月5日のオンエアを。
この年、黒柳周辺ではある異変が起こっていたらしい。“ビーズの貴公子”こと田川啓二氏をブレーンとして迎え入れ、事務所の社長にもつけた。現在では同じマンションの別部屋に住んでいるとも報じられた人物だ。そして「セブン」は推測した。さだのある発言に田川氏が危機感を示したのではないかと。それが、さだの“黒柳徹子保存会”発言だ。
さだは最後の『徹子の部屋』出演の際、“黒柳徹子保存会を立ち上げ、自身が初代会長になる”という旨の発言をしたらしい。冗談半分のような発言だったが、しかし田川氏は違った。黒柳と田川氏には、ある共通の悲願があった。それが財団設立と黒柳の着物や工芸品などのコレクションを後世に残すための美術館の建築だ。冗談かもしれないとはいえ、さだの“保存会発言”は容認できるものではない――。
もちろん、これらはあくまで「セブン」が周辺関係者に取材した結果の推測だ。というのも、結局、記事では黒柳サイドやさだサイドに取材した形跡はないから。っていうか、こうした記事って、当事者たちにアテない(確認取材しない)ことがほとんどだ。「共演NGですか?」などと聞いても「違います」の一言で否定されれば、それまでの取材や調査が水の泡。記事もボツになりかねないからね。今回もそう。
しかし、今回の共演NG記事は単なる不仲ネタではなく、田川氏の存在をクローズアップしたことも興味深い。さだとの共演NGの真偽は別にして(苦笑)、黒柳の現状、そして田川氏というパートナーとの強い絆、そんな田川氏とタッグを組んだ徹子の“生前整理”の行方という意味では興味深いものだったから。今後、黒柳の動向は田川氏の存在抜きでは語れないこと、そして芸能マスコミも田川氏の動向に注目していることも徐々に明確になってきた。
そんな「セブン」のもうひとつの共演NGネタが桑田佳祐と長渕剛だ。こちらもビッグである。
記事ではまず「時代遅れのRock’n’Roll Band」の話題から入る。桑田佳祐、佐野元春、世良公則、Char、野口五郎(みな66歳前後の同世代)が参加する豪華チャリティバンドが結成され、同名のシングルも配信されヒットチャート1位に。そんな話題性抜群のバンドだが、記事ではある疑問を投げかける。65歳でチャリティに力を入れてきた長渕剛がいない、と。それをきっかけに、40年近い桑田と長渕の“断絶”“決裂”“けんか”“いやがらせ”の歴史を紐解いていくのだ。
たしかにこの2人の犬猿関係は有名だからね。そして記事では2人が犬猿の仲となるきっかけである1983年のサザンコンサートから、5年後の長渕の意趣返し、さらに94年の桑田の楽曲の中にあったフレーズでの長渕激怒など、その軌跡を追っていく。
詳しくは記事を読んでほしいが、これらはその時々の芸能マスコミや音楽マスコミで大きな話題になったことばかり。それを「時代遅れ〜」の話題性から引っ張ってきたってわけだ。
しかし願わくば、こちらこそ双方に取材してほしかった。事実はすでに明らかになっていることばかりだから、聞きたいのは現在において双方がどう思っているのか。和解するつもりはないのか、など今後のこと。でも怖いよね、取材するの。特に長渕。その気持ちはわかる。
そんな中、ほっこりした記事がこれ。今年7月に60歳記念の日本武道館ライブを控える藤井フミヤだが、交際42年、結婚32年の妻とは現在でもその関係が良好で絆も深いらしい。42年間、2人は今でも手をつないで歩き、目に見えない運命の力を感じているという。そんな夫婦の絆を報じた「女性自身」。
でも、これらフミヤの告白は「自身」が直接取材したものではなく、6月18日放送の『人生最高レストラン』(TBS系)にフミヤが出演して語ったことを引用、紹介しただけ。
やはり今週、よっぽどネタがなかったんだな。