「皇族はスーパースター」と語る歴史エッセイストの堀江宏樹さんに、歴史に眠る破天荒な「皇族」エピソードを教えてもらいます!前回から引き続き、皇室ジャーナリストの江森敬治氏によるインタビュー録『秋篠宮』(小学館)を読み解いていきます。
――2018年2月、眞子さんと小室さんの結婚が2年延期されるという発表が宮内庁からありました。発案は眞子さまだったそうです。すでに小室圭さんの身辺には多くの不安材料があることが明らかになり、その中には小室さんの母親・佳代さんの金銭問題など重大問題が含まれる中での延期発表でした。この発表の少し前、『秋篠宮』(小学館)の著者でジャーナリストの江森敬治さんは秋篠宮さまへ取材をしていたのに、秋篠宮さまは31年も親交のある江森さんにも一言も知らせていなかったとあります。
堀江宏樹氏(以下、堀江) このあたりから、宮さまの態度はさらに理解しづらいものになっています。メッキが剥がれたように、次々とボロが出てきてしまう小室さんとその家族に対し、こともなげに振るまいすぎている印象があります。
江森さんによると、結婚延期を宣言した後の宮さまは安堵の表情でした。しかし、「眞子さまのご結婚が延期されましたが、正直なところ、お父様としてもホッとされましたか?」と直球で聞かれると、その答えは「二人はそれでも結婚しますよ」という驚愕の回答。
「延期の理由」として、宮さまから明かされた情報もあきらかに不自然でした。NHKが婚約内定をスクープして、本来の結婚のための準備が滞ってしまったし、2019年には天皇陛下(=現・上皇様)の退位関連で忙しくなる。だから、最短日程の20年ということにしたというのです。
――小室さんは関係なしですか?
堀江 そうなんです。延期は小室家の問題ではない、と言い切った秋篠宮さまの反応に、江森さんも異様さを感じたようです。しかし、「この場は議論をする場所ではない」といって、例によって頭を切り替えざるを得なかったそうです。皇族として、小室さんは娘の大事な(実質)婚約者ではあるし、一国民を攻撃するようなことは言いたくなかったのかもしれませんが……。
しかもこの時、紀子さまが突然、ノックしてから部屋に入ってきたそうなのです。本で見る限り、ほかの日の取材でこういうことは一度もありません。部屋に来た紀子さまは「ニコニコしていた」のだとか。秋篠宮さまは「座って話す?」などといったものの、「彼女は遠慮した」。
――この状況での笑顔というのは、何かが怪しいですよね……。
堀江 そう。作為的です。小室さんやその母親の身辺問題という世間からの批判の声には触れようともしないし、批判は気にもしていない素振りをして、完全に問題を無視している感じがします。
マスコミの心ない報道で秋篠宮家の方々が傷ついてきたのは事実ですから、「今回も外野が騒いでいるだけ」と思い込むことで、なんとか平常心を保とうとしていたのかもしれません。一方、江森さんは「先のことは、誰にも分かりませんからね」とつぶやいたという宮さまの言葉を紹介して、そっちが本音では、などと推測していますが……。
――本音発言は別にして、そうした問題に触れない姿勢を見ると秋篠宮さまは、お二人を結婚させようとしていたように思えますね。
堀江 私もそう思います。本当は致命的なエラーが出ているのに、そんな問題は実は大したことがないと、せっかく芽生えた本能的な危機感を無視してしまっている観もありますね。でも、そこには皇室にありがちな結婚の難しさが影響しているのだとも感じました。この機会を逃すと、次はないぞ……という。
――たしか、以前から宮さまは「大学時代に相手を見つけておかないと(その後、相手を見つけるのは難しい)」と、江森さんに向かって語ったことがありましたよね?
堀江 はい。しかし、そのコメントを掲載した江森さんの著書『秋篠宮さま』(毎日新聞社)が発行された1998年の時点では、「今は女性の結婚年齢もまちまちですから」というふうにお考えを変化させておられたようです。また、「結婚よりも自分の興味なり仕事というものを優先させたほうがむしろ良いのでは」とも言っておられました。
ところが2018年、当時25歳の眞子さまに小室さんというお相手ができたと知ると、「結婚が少し早いのではないかと」と問いかけた江森さんに対し、宮さまは「早くはない年齢です」と即答しているのです。
――ここはどう読めばいいのでしょうか?
堀江 眞子さまが早くに結婚したいという希望を持たれていることを、秋篠宮さまはご存じだったのだと思います。それならば、結婚できそうな状況があるなら、一日も眞子さまを早く嫁がせてやりたかったのでしょう。逆にいえば、それほど皇女にとって、結婚とは難題であるという認識をお持ちだったのだということでもあります。
本書の後半部分、「小室眞子の結婚を考える」という章では、具体的な日付はふせられているものの、「まだ結婚への道筋に暗雲が立ち込めていたある日のこと」として、「なぜ眞子さまはここまで、この結婚にこだわるのでしょうか」と江森さんは宮さまに率直に問うたときの反応が書かれています。
堀江 聞かれると、「彼(=秋篠宮さま)は深く考え込み、重い沈黙を続けたままだった」。江森さんは、黙り込む宮さまに被せるように「眞子さまが、男性と知り合う機会は、これから先、まだまだ、たくさんあると思います。もっと素敵な人ときっと出会えますよ」と言いました。そこまで問い詰められても、宮さまからの返答はなかったそうですが、興味深いことを江森さんは書いています。その時、「彼が私の言葉に『んっ』と一瞬、疑問を浮かべたような気がした」。
『秋篠宮』の文章からも、秋篠宮さまには、小室さんという人物に大いに不満があったのは事実だと思われます。しかし、その問題以上に、皇女である眞子さまが、年齢を重ねる前に結婚することのほうが重視されてしまったのだと思います。小室さんの次の男性といっても、なかなか見つからないだろうから、眞子さんの背中を押すしかなかった……こういうあたりが宮さまの本音ではないでしょうか。
――おつらかったでしょうねぇ……。江森さんも、皇女でいるかぎり、眞子さまが自由に何人かの男性と恋愛して、「自らの恋愛感や結婚観を確かなものとし、そして結婚することがベター」という一般論が通用するものだろうか、と思ったと書いていますが……。
堀江 庶民の間でも結婚は「勢い」が大事とかいいますけれどもね。皇族は庶民以上のテンションと勢いで乗り切らないと結婚が難しいのでしょう。皇族の苦労は皇族にしかわからない。秋篠宮様は皇族歴50年を超えるベテラン皇族でいらっしゃいますから、そのご判断には有無を言わさない気迫があります。
しかし、眞子さまと小室さんのご結婚は成立してからも、ずっと秋篠宮家や皇室を揺るがし続けていますよね。問題の一つとして、皇族は自分の言葉ですべて説明することが難しい立場にいるということです。カリスマ性を守らねばなりませんので。
――そうであるなら、皇族がたの側近、宮内庁がもっと頑張るべきではないですか?。
堀江 単なる役所仕事以上の働きが期待されてしまいますよね。『秋篠宮』の別の箇所で、江森さんも「理想を言わせてもらえれば、秋篠宮家の人たちを長年、見守り続けてきた信頼の厚い側近がいればよかったのかもしれない」といっていますが、そういう「側近は、現状では見当たらない」とも指摘しています。
「秋篠宮夫妻の意を汲んで、相手の家族と交渉や調整をし、うまい落とし所を早くに探り出す。情報管理も徹底させる」ような器の人物はおらず、秋篠宮さまがすべてを行ったことに今回の大問題の原因があると言っているとも思われます。極論すれば、将来の宮内庁は皇族方の属している(芸能)事務所みたいになったほうがよい、ということなのでしょうね。
――それは面白い考えですね(笑)。それってプロデューサーのお仕事に近そうですよね。
堀江 そうです。戦前、戦後すぐは宮内庁にも入江侍従長のような名物職員がおり、自らメッセージを発する機会が限定されている、皇室のみなさまの好感度を上げる名プロデューサーでもありました。しかし戦後、人員整理とか、宮内庁の職員の職業イメージも変化があり、そういうタイプの職員はいなくなってしまったのですね。
また、この部分には少なくとも、宮さまよりは世間を知っている元・新聞記者のジャーナリストの江森さんが、「私にもっと本音で相談してほしかった」と悔しさを伝えているような気もしました。
その後、18年4月の取材では、「金銭トラブルは小室家の問題(で、秋篠宮家は関係ない)」という発言が秋篠宮さまの口から飛び出しています。手のひら返しのように聞こえますが、これまで、できる限りポジティブに、小室家のことは考えるようにしてきたけれど、ついに庇いきれないと思ってしまったといわんがばかりの”本音”でしょう。小室さん問題が、秋篠宮さまのキャパシティーを超えてしまったことがうかがえます。
――感情をあらわにして小室さんを批判しはじめた宮さまの姿が、ついに描かれてゆくのですね。次回に続きます。