「子ども同士の付き合い」が前提のママ友という関係には、さまざまな暗黙のルールがあるらしい――。ママたちの実体験を元に、ママ友ウォッチャーのライター・池守りぜねが、暗黙ルールを考察する。
いまや持っていない人がほとんどいないほど普及しているカメラ付きのスマートフォン。かつては子どもの成長を撮影するために、高価な一眼レフのカメラを持つママたちも多かったが、スマホに搭載されたカメラが高画質になった今では、「子どもの写真はスマホで撮る」というママが主流だろう。
夏は外出の機会が多くなるので、子どもを撮影する機会も増えるが、誰でも手軽にできるスマホでの撮影はトラブルがつきもののようだ。今回は、子どもの撮影をめぐるママ友の“暗黙のルール”について、ある女児のお母さんの話を取り上げる。
東京ディズニーランドにママ友グループ3組で来園
泉美さん(仮名・39歳)は、都内にある幼稚園に6歳になる女の子を通わせている。
「うちの幼稚園は、1学年2クラスしかないアットホームな園。送り迎えで顔を合わすので、ほとんどのママさんと交流があります。この2年はコロナ禍の影響で、園行事が減ったので寂しかったですが、春休みに仲の良いママ同士で、東京ディズニーランドに行ってきたんです」
泉美さんは、みんなでディズニーランドへ行くことに、最初は乗り気ではなかったという。
「本当は、体験型アトラクションのキッザニアのほうが、子どもも楽しめると思ったんです。でも大のディズニー好きで、娘の誕生日には毎年家族でディズニーランドに出かけているというママ友の美沙子さん(仮名・39歳)に勧められまして……。『今は人気のアトラクションもレビューも抽選制だし、人数制限をしている。そこまで混んでないし、過ごしやすいよ』と言われ、うちはこの2年間ディズニーランドに行っていなかったのもあり、一緒に行こうと思いました」
同い年で、ともに「一人っ子の娘を持つ」泉美さんと美沙子さんは、娘同士の仲が良いこともあって、一緒に遊ぶ機会が多いという。
「うちの子は、どちらかというと引っ込み思案で、友達と遊ぶ時も、相手のペースに合わせるタイプ。一方の美沙子さんの娘は、率先して『これやろう』と、友達を誘うタイプなので、仲間の中でリーダーになりやすいんです。ただ、『もう帰るよ』と言うと、『いやだ。ママたちのいじわる』とすねてしまったり、約束をしていない日にうちに遊びに来たがったりと、ちょっとわがままなところが気になるんですね……家で相当甘やかされているのかもしれません」
そんな美沙子さんの娘の対応に不安を抱き、「もう1人ママ友がいたほうがいい」と考えた泉美さんは、桂子さん(仮名・40歳)もディズニーランドに誘ったという。
「例えば、ご飯を食べる時なども、『場所を取る係』『注文や片付けをする係』『子どもを見る係』と役割分担できるので、3組で行ったほうがいいかなと思ったんです。桂子さんは娘と同じ6歳の女の子のほかに、3歳になる男の子もいるので、普段はなかなか遊園地にも行きづらいと言っていて……だから『私たちと一緒に行こうよ』と誘いました」
こうして3組の親子でディズニーランドに行くことになった泉美さん。しかし、その当日、美沙子さんの態度で気になることがあったという。
「舞浜駅に着いたら、まず子どもたちだけで集合写真を撮ったんですが、美沙子さんは、桂子さんの息子が疲れてぐずっているのもお構いなしに、かなり時間をかけて撮影していました。入園後も美沙子さんは、常にスマホを持って、写真撮影をしていたのですが、その被写体は自分の娘ばかり。一方の桂子さんは、下の子を抱っこしている時間が多く、なかなか自由に写真を撮ることができていなかったので、正直、『自分の娘だけじゃなくて、桂子さんの娘も撮ってあげればいいのに』って思っていました」
泉美さんは、なるべく子どもたちが3人でいるところや、桂子さんの娘を撮影するように気をつけていたという。
「シンデレラ城には、ガラスの靴が展示してあるスポットがあり、ゲストが履くマネをして、写真撮影することもできるんですが、美沙子さんはここでも娘の撮影に没頭。しかも娘が『もっと撮って』と駄々をこねていたんですよね……。列ができているのもあって、うちの子や桂子さんの娘はぱっと撮影して済ませたんですが、美沙子さんの行動にはあぜんとしました」
そして後日、LINEグループのアルバムで写真を共有した際に、泉美さんは驚いたという。
「美沙子さんの撮った画像が、想像以上に自分の娘ばかりだったんです。当日の楽しそうな雰囲気は伝わってきたのですが、ママ友グループで遊びに行った時って、普通、自分の子ども以外の写真も撮影しませんか? 今はLINEで写真を共有するのが基本なのに、自分の子どもの写真しかないって、非常識というか、周りから浮いちゃうと思います。『ママ友グループで遊びに行った時は、自分の子ども以外の写真も撮ってシェアする』。これって暗黙のルールといっていいのでは」
今回の「ママ友グループで遊びに行った時は、自分の子ども以外の写真も撮ってシェアする」という暗黙のルールは、最近では主流になってきているのかもしれない。LINEグループでシェアした際に、自分の子どもの写真ばかりだと、「気遣いのない人」と思われてしまう可能性は高い。
しかし、撮られるのが好きな子もいれば、苦手な子もいる。自分の子ども以上に、ほかの子どもの写真を撮るのは難しい一面もある。夏休みになると、ママ友同士で出かける機会も増えるだけに、事前に「子どもの写真を撮ったらシェアするね」という形で、相手とその子どもが「写真を撮ってもらうと喜ぶか」を確認しておいたほうがいいのかもしれない。
今回のケース以外でも、ママ友同士の写真のルールは、意外と複雑なように思う。例えば、ママ友に自分の子どもの写真を撮ってもらうこと自体はありがたいというママでも、許可なくSNSなどに画像をアップされるのは嫌だというケースも多い。
例えば、あるママが「フォロワー限定公開だから大丈夫」という認識で、勝手にママ友の子どもが映った写真をSNSに投稿。しかし、そのママ友は、「絶対に子どもの顔をネットに載せたくない」という考えだったため、トラブルに発展したという話は後を絶たない。
子どもの写真の取り扱いについては、子ども自身の意思よりも、ママがどうしたいかが重要視されるもの。相手が自分と同じ考えの持ち主だとは限らないので、さりげなく確認することが必要だろう。画像はのちのちまで残るものだからこそ、その取り扱いについては慎重になりたいものだ。
スマホがこれだけ普及した現代のママ友付き合いでは、お互いの子どもを撮影する機会は避けられないように思う。自分の子どもだけでなくママ友の子も撮影する心遣いだけでなく、「撮っていい?」の声がけや、SNS投稿の際の許可取りなど、そういったルールをママ友同士で守り合うことは、やはり大切なのではないだろうか。