• 月. 1月 6th, 2025 12:24:38 AM

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明日あなたが被害にあうかもしれない

片付けで見つけた義父の遺言書に絶句――“執行人”の名前に「これどういうこと?」


“「ヨロヨロ」と生き、「ドタリ」と倒れ、誰かの世話になって生き続ける”
――『百まで生きる覚悟』春日キスヨ(光文社)

 そんな「ヨロヨロ・ドタリ」期を迎えた老親と、家族はどう向き合っていくのか考えるシリーズ。

 真山昌代さん(仮名・57)の義父母はそれぞれ違う老人ホームに入っている。当初は同じホームにいたのだが、認知症の義父が義母にひどい暴力を振るうようになったため、義母を別のホームに移したのだ。義父と離れた義母は、認知症の症状もすっかり落ち着き、趣味を楽しみながら生活するようになった。

 真山さんは、テレビとベッドしかない義父の部屋と、たくさんの趣味のものに囲まれている義母の部屋を比べながら、義父の人生って何なのだろうと考えるようになった。というのも、義父母のマンションが大規模修繕をすることになり、真山さんと娘が仕事を休んでは義父母のマンションに通っているからなのだ。

▼前編はこちら

これ、どういうことだと思う?

 大変なのは、都合をつけて義父母のマンションに行くこと、新幹線で帰るので交通費がバカにならないこと。それでも行ってしまえば、あとは工事業者が来たときに立ち会うくらいで特にすることもない。

 真山さんと娘は、この機会に義父母のマンションの室内を少し片づけることにした。

「いざという時、何がどこにあるかわからないのも困るので、部屋の中を確認しながら片づけていたんです」

 すると、いかにも元教師で几帳面な義父らしく、義父がまとめていたさまざまな書類が見つかった。

「お金や家の契約書、親戚など連絡先などちゃんとまとめてあったのは、さすが義父だと感心しました。これだけまとめてあれば、義父母が亡くなってもとりあえず混乱することはないでしょう」

 ところが――。娘が義父母の家に行っていたときのことだ。娘から真山さんにLINEで連絡が来た。

「遺言書があるというんです。いろんな書類がまとめてあったので、まあ遺言書まで作成しているのも当然というか、そう驚きませんでした」

 遺言書が手書きだったので、これが正式に遺言書として認められるのかは疑問だとしながらも、真山さんは娘に「あったんだね。おじいちゃんらしいね」と返事をした。

「でも、娘が私に言いたかったのはそのことだけではなかったんです。遺言書の写真が送られてきました。封はしてあるので、遺言の内容はわからないんですが、遺言の執行人として義姉が指名してあるのがわかりました。娘もそこに疑問を持ったようです。『お母さん、これどういうことだと思う?』と」

 確かに、これまで遠距離でありながら義父母のもとに通って、二人の様子を見ながら、介護サービスの手配をし、義父母の2人暮らしがこれ以上無理だと思えば、ホーム探しをしたり、義父の義母への暴力沙汰が起きると義母を別のホームに転居させたりと、奔走したのは義姉だ。

 それでも夫は長男として、何かあるたびに話し合いもしたし、義姉の都合がつかないときは今のように真山さんや娘が通っている。コロナ前にはたびたび面会にも行った。まったく何もしなかったわけではない、と真山さんは言う。

「執行人に義姉の名前があるということは、義姉は遺言書の存在を知っているということですよね。私たちにはまったく知らされていません。そのことが遺言書の中身がどうなっているかを物語っていると思いました。娘もそう感じたから、写真を送ってきたんでしょう。なんだか、義姉の代わりに私や娘が職場に頭を下げて休みをもらって、高い交通費をかけて何往復もしているのか、むなしくなってしまって……」

 遺言書の内容はわからない。それだけに、その執行人の名前だけでこれほど心が揺れるとは思わなかったし、そんな“小さい”自分に嫌悪感も抱いている、と自虐的に笑った。

 こんなことなら、義父母の家を片づけたりしなければよかった。それとも、今のうちにわかってよかったと思うべきかもしれないとも思う。遺産に差をつけられているのなら、その心つもりで今後の遠距離介護を考えよう……。葛藤しながら、真山さんは今月も新幹線に乗っている。

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