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『ザ・ノンフィクション』暴言・暴力も「ありのまま」の異色介護「ありのままでいいじゃない ~いしいさん家の人々~前編」

 日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。7月31日の放送は「ありのままでいいじゃない ~いしいさん家の人々~前編」。

あらすじ

 介護業界でも異色の施設と呼ばれる、千葉県の宅幼老所「いしいさん家」。認知症や統合失調症など、暴力・暴言といった問題行動を理由に他施設から「お断り」された人たちが集まっている。

 「いしいさん家」を運営する石井英寿は高校時代のボランティア活動をきっかけに介護の仕事に触れ、大学卒業後大手介護企業に就職するも、午前中50人の入居者を入浴させるなどの効率重視の施設運営に違和感を覚え、いしいさん家を16年前に立ち上げる。

 石井は「暴言・暴力とか、唾を吐いたりとか、そういった人たちを向精神薬とか、薬で抑えつけられちゃっている人とか、縛られている人も見てきたので、いっぱい。80~90歳でそんな人生の最後でいいのか」「(薬を)抜いちゃおうよ、『ありのままのその人でいいでしょ』というのが根本にあって」と話す。

 スタッフと利用者はほぼ同数と、手厚い介護をしているが、「ありのまま」を受け入れる施設スタッフの苦労は相当なもので、スタッフの手には生傷が絶えない。また、会計士からは経費をコントロールするよう言われるが、スタッフの人件費だけは削るわけにはいかない。

 番組スタッフのカメラが気に食わなかった様子の70代の認知症患者・タマエは「バカ野郎」が口癖で、デイサービスでいしいさん家を利用している。タマエの扱いを心得たスタッフは機嫌の悪いタマエを車に入れる。ドライブと歌が好きなタマエは、車に乗って音楽を流すと先ほどの不機嫌からきれいさっぱり、上機嫌な様子になっていた。

 夜はタマエの夫、カズオがタマエを介護している。少し目を離すとタマエは徘徊してしまうようで、慣れた様子でタマエを車で探していた。カズオはタマエを特別養護老人ホームに入れなかった理由として、特養だと外に出させず、食事が終わったらすぐ睡眠薬を飲ませて、という生活がかわいそうだと思って、と話す。

 デイサービスの利用者、46歳の2児の父親で統合失調症のヤマピーは、普段はピアノ演奏で周りを楽しませるほど穏やかだが、ふとしたことで態度が一変、激昂してしまう。ヤマピーは医師である父親からの暴力、暴言がひどかったようで、自尊心を傷つけられたそうだが、事あるごとにその話をスタッフに延々とする。

 家庭でも、隣人があいさつしてくれないと妻に不満をこぼす。家でも大声で騒ぎ、パジャマ姿でバットを持って外に出たときには、警察を呼んで大変だったと、子どもが話していた。

 ヤマピーの「もっと話を聞いてほしい」という不満は日に日に強くなっていき、金額はいくらでもいいから自分専用の専属スタッフをつけてほしいと施設側に要求。発言がエスカレートしていくヤマピーをたしなめていたスタッフの福田は、「(ヤマピーが)ケガをさせなきゃいいなと思う、誰かにね」と話す。

 しかしその不安は的中してしまい、福田自身がヤマピーからアザが残るほどの暴力を振るわれる。番組の最後では福田が石井に不満を伝えるシーンが放送されていた。

 関係者以外にとっては「見なかったこと」になりがちな、認知症や精神障害などの患者とそれを支える人たちにスポットを当て、それら人々の行動を映すだけでなく、その人の歩んできた来歴や家族の状況、支える介護スタッフたちの貢献や苦労も丁寧に追っている良回だった。

 そんな良回だったものの、一点よくわからなかったのが、番組最後の石井と福田の話し合いだ。番組の構成的には、ヤマピーから上腕にアザが出るほどの暴力を振るわれ、福田が石井に話し合いの場を求めている、という流れだったので、福田がヤマピーからの暴力でいろいろ嫌になってしまったのか、と思われた(その気持ちはとてもよくわかる)。

 しかし、そこでの福田の意見は断片的に紹介されており、「今までの理念と反する方向に行ってるってみんなが言っていて」「前の理念と違うのであれば私たちは(スタッフは)辞めなきゃいけないのか」という意見もあった。これら発言への石井の言葉は一切取り上げられず、ただ福田の意見だけで終わっていた。「前の理念」とは何だったのか。これは後編で明らかになるのだろうか。

『ザ・ノンフィクション』介護業界から見た問題は?

 また、個人的には介護業界の人が今回の放送をどう見るか知りたい。番組を見る限り、いしいさん家側が介護業界では異色、という伝えられ方だったが、「ノーマル」側の介護業界の人は、いしいさん家側にどのような問題を感じ取るのだろう。

 昼の情報番組のトップニュースが「介護施設のとんでもない実態、身体拘束される入居者たち!」といった内容だったことがあった。暴れるから、対処として縛り付けているのだろうとその時も思ったし、今回番組で、生傷の絶えないスタッフの手を見て、 やむを得ず縛り付けているケースもあるのだろうと思った。

 しかし、よく実態を知らない人間が一端だけをとらえて大騒ぎをすると、物事の本質を見誤る。介護業界に携わる人、精神医療に携わる人の、今回の番組の感想を知りたい。

 次週は今週の続編。石井と福田の決断とは。