8月6日に公開された人気漫画『ONE PIECE』(集英社)を原作としたテレビアニメの劇場版『ONE PIECE FILM RED』が、公開8日間で観客動員数360万人、興行収入50億円を突破(興行通信社調べ)する大ヒットをみせている。シリーズ最高興収を記録した12年12月公開の『ONE PIECE FILM Z』の68億7000万円を上回ることが確実視されているようだ。
この映画は、長編劇場版通算15作目で、原作者・尾田栄一郎氏が総合プロデューサーを務める「ONE PIECE FILM」シリーズとしては、2016年7月公開の『FILM GOLD』以来4作目となる最新作。
映画オリジナルキャラクターの歌姫・ウタと、主人公・ルフィたちの新たな冒険が描かれ、ウタはルフィが海賊を目指すきっかけとなった憧れの人物、赤髪海賊団の大頭・シャンクスの“娘”という衝撃の事実が明かされるところから物語が展開していく。
主題歌「新時代」やウタの歌唱シーンを、20年リリースの「うっせぇわ」で一躍ブレークしたアーティスト・Adoが担当していることでも注目を集めている本作。しかし、ネット上では映画を見た人から、「Adoの歌声のパワーが本当にすごくて感動!」「ライブに来てるみたいでテンション上がった」などと絶賛の声が上がる一方、「Adoのライブショーの合間にストーリーが挟まってる感覚だった」「内容が薄くてガッカリ」との声もあり、賛否が分かれている状態だ。
また、今作には、映画オリジナルキャラクターのクラゲ海賊団の面々を演じるゲスト声優として、俳優・山田裕貴とお笑い芸人の霜降り明星が出演しており、「山田裕貴も霜降りも注意して聞かないとわからないくらい声優上手」「ゲスト声優って声のトーンとか映画の中で浮いちゃって世界観壊しちゃうの多いけど、いい意味で声が目立たなかった」と、こちらは好意的な声が相次いでいる。
そんな2人の出演について、業界関係者は以下のように語る。
「今回の『FILM RED』は、内容のクオリティが非常に高かったので、別に『宣伝枠』として彼ら3人を起用する必要がなかったのでは、と思います。このような大作アニメ映画の場合、必ずと言っていいほど芸能人を起用して宣伝効果を狙いますが、芸能人が出演していないにもかかわらず大ヒットを記録した『劇場版「鬼滅の刃」 無限列車編』(20年10月)や『劇場版 呪術廻戦 0』(21年12月)などの成功例もあるように、作品自体が良ければ動員数が得られる時代になってきました。むしろ、宣伝効果を狙ってわざわざ“芝居がヘタ”な芸能人を起用し、作品の質を下げる方が問題です。今回の山田と霜降りの2人は、作品の邪魔をすることなく声をあてているようなので、結果オーライですが……」(声優業界関係者)
1999年10月からテレビアニメ(フジテレビ系)がスタートした『ONE PIECE』には、多くのベテラン声優たちが出演している。芸歴が長いだけあって、声優としての地位を確立している彼らだが、「今作には、非常に残念な点もある」(同)ようだ。
「長く続いている作品がゆえ、声優自身が年を取ってきています。現役として長く活躍するために、食生活に気を使ったり、体力づくりをしたりと、努力を続けているベテラン声優は多く存在しますが、年齢を重ねると、滑舌や発声にどうしても“老い”が出てきてしまう。『麦わら海賊団』のフランキー役を演じている八尾一樹は、今作で“声の衰え”が如実に表れていました。八尾は声優業界でも名の知れた酒好き。二日酔いで現場に現れることもしばしばあり、過去には酒が原因で体を壊したことも。そんなこれまでの不摂生が明らかに声に出ていました」(同)
一方で、主人公・ルフィ役の田中真弓については、「先日、主人公の少年・パズー役を演じたジブリ映画『天空の城ラピュタ』(1986年8月)が地上波で放送されましたが、今から36年も前の作品にもかかわらず、滑舌や発声はもちろん、声の艶も衰えるどころか、現在のほうが圧倒的に良い」(同)という。
原作はいよいよ最終章に差しかかった『ONE PIECE』。アニメはまだ数年放送が続くと思われる。脇役のキャラクターは、声優が亡くなったことでしばしばキャストが変更されているだけに、最後まで全員で完走できるよう、声優陣には体を大切にしていただきたいところだ。