• 日. 12月 22nd, 2024

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『ザ・ノンフィクション』28歳、自分探しの旅の結末「彼女が旅に出る理由 ~すれ違う母と娘の行方~」

 日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。8月21日の放送は「彼女が旅に出る理由 ~すれ違う母と娘の行方~」。

あらすじ

 28歳のミサトは、21歳で有名老舗ホテルに就職したものの2年で退職。その後、広告代理店2社に勤めるも会社勤めが合わなかったようで、27歳から車で全国を回る旅の日々を送っている。

 旅先で出会った友人たちのもとを訪ねながら、お金のかからない暮らしを模索しており、「今まで飼い慣らされてきた、社会に。自分の意志で行動してると思ってもできていなくて、それに気づいていなくて、それに気づいたんですよ」と、旅の手応えを話す。

 一方、ミサトの母親は「今までさ、お金のかかるような暮らしをしてたじゃない? 身の丈よりいいものを欲しがってたしさ。急にその反対になったとしても理解できないのよ、お母さんは」と娘の180度の心変わりに戸惑う。

 ミサトは、帰省時に近所の目を気にする母親から庭を散歩するな、と言われたことも面白くないようだった。一方で、旅に出ている間もミサトの携帯電話代は母親が支払っており、実家からまた旅に出る際は小遣いをもらっていた。

 当初は、お金のかからない生活を送ることに強気だったミサトも、貯金が減っていくのに伴い威勢もなくなってくる。冬の大阪では一日一食で、エンジンをかけられない駐車場で毛布にくるまる車中泊の生活を送っていた。そんな暮らしの中でミサトは、Twitterで「1年間無一文になって天から地へと落ちて?お金の無い生活を味わう実験したけど、それなりに大変でしたマジで。」と発信している。

 生活のため大分県のネギ農家で働くことにしたミサトだが、ミサトの母親は住む予定の古民家の窓が壊れているといった話を聞いて心配する。その言葉にミサトは、「自分の人生を生きてないから他人に干渉したくなるんだよ。ウワサ話したりとか他人の目気にして生きたりとか」と突っぱねる。

 大分での生活をスタートさせたミサトは、番組スタッフに「一番大切にしなきゃいけない人を大切にできていないので、大切にできたらいいなと思うんですけど、なかなか……」と、おそらく母親への思いを話す。

 1年2カ月の旅を経て、ようやく定住したかに思えた大分だったが、番組の最後でミサトが体調を崩して農家の仕事を辞めたとナレーションだけで伝えられていた。

『ザ・ノンフィクション』自然派の若者、話す内容の特徴とは

 番組スタッフがミサトとその母に出会ったのは、以前に放送された非電化工房回の撮影がきっかけだったいう。

 実際、今回の放送で映った自然派の若者は、『ザ・ノンフィクション』らしい人材の宝庫に見えた。番組内のミサトやミサトが会った人たちの発言を抜粋したい。

「生きる意味とかみんなわからないまま生きてて、私は最近それにやっと気づくことができて」(ミサト)

「俺から見ても同年代の若者見てると『もうちょっとちゃんとしろよ』って思うし」
「別にお金はどうでもいいんだよね。1万円札あるじゃん、あのことを『お金』と呼ぶの超オモロイよね、紙じゃん、ただの」(ミサトが訪れたエコビレッジにいた若者)

 本人たちは、自らの心の発露に任せて口にしているのだろうが、その発言はどこかで習ったのかと思うくらい、共通点があるように思う。たとえば、この2点だ。

・働くこと、現代社会、同世代の若者などをディスる
・周りの人間とは異なり、自分たちはわかっていて意識が高いという目線

 彼らの言葉は、良くも悪くも特別なものではなく、若者が持ちがちな“万能感”に加えて、“自然派”という足場を得たことで口をついて出たものだろう。

 これらの若者は5年後どうなっているのだろう。それこそミサトが憧れ涙した、ヒッピーからアップルを興したスティーブ・ジョブズのようなスターとなるのか、自分のこの発言を黒歴史として恥ずかしがるのか、中高年になっても変わらず周囲をディスっているのか。

『ザ・ノンフィクション』“生活”が苦手な人々

 ミサトは幼少期のころ「不思議な子だね」と周囲から言われ、先生からは「時と場(を選びなさい)」と注意されていたと話し、KYだったと幼少期を振り返る。また、大人になってからは、職場を転々としている。

 そんなミサトも、ようやく居場所を得た自然派の世界で万能感に酔いしれていたものの、金という現実が追いかけてくる。定住しようとした大分のネギ農家も辞めてしまったという。

 学校や職場で日々を送る――ミサトはそんな一般的な“生活”が苦手なのだろう。『ザ・ノンフィクション』を見ていると、同じように社会生活がかなり苦手そうな人がよく出てくる。ただでさえ「働くこと」は楽ではないが、日々を過ごすことが苦手な人にとっては働くことのハードルはますます高いものになるだろう。

 番組では元タレント・坂口杏里を取り上げた回もあったが、坂口はミサト以上に日々の生活が苦手そうだった。人生を年表にすると、短期間で何もそこまで、と思うほどイベントが目白押しで、周囲にしてみたら地に足がついておらず、極端で、行き当たりばったりで、反省がないように見える。それはミサトも同じで、しかし本人にしてみれば、その一つひとつが人生をより良くしていきたいという、誠実で真面目な決断の積み重ねなのだろう。その決断と結果のズレは気の毒に思う。

 次週は「母と娘の芸者物語 ~箱根で生きる女たち~」。箱根芸者の伝統もコロナを前に岐路を迎え……。

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