• Wed. Oct 5th, 2022

乃木坂46・齋藤飛鳥の愛読書に“セクシャルなテーマ”がある? 『夜のミッキー・マウス』読んでみた

——アイドル好きのブックライター・保田と編集部員・B子が、タレントたちの“愛読書”を片手に、人となりを妄想中!? 「サイジョの本棚」前で、おしゃべりが始まります!

◎ブックライター・保田 アラフォーのライター。「サイジョの本棚」担当で、一度本屋に入ったら数時間は出てこない。海外文学からマンガまで読む雑食派。趣味(アイドルオタク)にも本気。

◎編集部員・B子 猫と暮らすアラサー。芥川賞、直木賞、本屋大賞あたりを一通りチェックしたい、ミーハーな本好き。最近はノンフィクションばかり読んでいる。趣味(ジャニーズオタク)にも本気。

乃木坂46・齋藤飛鳥の愛読書『夜のミッキー・マウス』

編集・B子 「サイジョの本棚」ではここ最近、ジャニーズタレントの愛読書などを取り上げてきたけど、保田さんが好きな女性アイドルの中にも、読書家っているの?

ライター・保田 パッと思いついたのは、乃木坂46・齋藤飛鳥かな。講談社の書籍やコミックなどを紹介するキャンペーン「World meets KODANSHA」に参加していて、出版社側からも“本好き”だと認識されているみたいだよ。

編集・B子 へ〜、それはすごい! もちろん、乃木坂46も齋藤飛鳥も知ってるけど、そこまで読書好きだとは知らなかった。

ライター・保田 ファンの間では、コンサートのリハーサルや撮影の休憩時間にも本を開くほどの読書家として知られている。そんな“あしゅ”の愛読書のひとつが、谷川俊太郎の『夜のミッキー・マウス』(新潮文庫)。ちなみに、文庫版には書下ろしの詩「闇の豊かさ」が収録されてるから、こちらがおすすめかな。

編集・B子 谷川俊太郎って、押しも押されもせぬ現代詩人の代表的存在だよね。アイドルが仕事の休憩中に詩集を開くなんて、ちょっと話ができすぎてるというか、夢のような光景(笑)。斎藤さんって、おしとやかな子なの?

ライター・保田 いやいや、「詩をたしなむ=おしとやか」とは言い切れないよ! 特にこの作品には、セクシャルなテーマだったり、女性器の名称がタイトルになってる詩も収録されてる(笑)。でも、思わず声に出して読みたくなるような詩ばかりで、日本語の美しさをじっくり味わえる作品なんだよね。

編集・B子 え〜!? いきなり斎藤さんのことがわからなくなったんだけど! 目次を見てみると、表題の「夜のミッキー・マウス」のほかにも、「朝のドナルドダック」とか「百三歳になったアトム」とか、誰でも知っているようなキャラクターがモチーフにされた詩もあるんだね。なんかこの詩集自体、私が想像している詩集とは全然違うのかも。

ライター・保田 あしゅはかわいらしいし、ダンスもしなやかで上手。グループへの愛が深いところも人気だけど、彼女の文章を知って、ますます惹かれる人も多いんじゃないかな? あしゅの文才の一端は、公式ブログでも垣間見ることができる。ブログの本文は誰でも読みやすいように書かれているけど、タイトルが独特で面白いんだよ。

編集・B子 ホントだ、8月10日更新のブログは、本文なのかと思ったところがタイトルだ……。「肋骨にのめり込む頭と聞くと、痛々しい姿を想像するかもしれない」という書き出しからまだまだ続くけど、本文を読むと、この日が斎藤さんの誕生日で、ファンに感謝してる内容。タイトルと中身が全然関係ない!(笑)

ライター・保田 そう、割といつもこんな感じ(笑)。あしゅはいろんな本を読んでいるけど、谷川さんの詩も、彼女の独特な感性や文章に影響を与えているんじゃないかなと思ってる。ファンの方々はそんな視点で『夜のミッキー・マウス』を読むと、ますます面白いはず!

編集・B子 『夜のミッキー・マウス』は詩集だけど、齋藤さんに小説をおすすめするなら、どんな作品がいいと思う?

ライター・保田 澁澤龍彦や安部公房の作品を愛読書に挙げるあしゅは、すでに確立された自分の世界を持っていると思うので、おすすめするのはおこがましいけど……。多忙で新作はチェックしきれていないと予想して、今年2月に出版されたばかりの、永井みみ著『ミシンと金魚』(集英社)を推したい!

編集・B子 この人って、去年「第45回 すばる文学賞」を受賞してデビューしたばかりの作家さんだよね? デビュー作の『ミシンと金魚』で「第35回 三島由紀夫賞」にもノミネートされて、話題になってたのを見たよ。まさにこれから注目の人だ。

ライター・保田 ケアマネジャーとして働く永井氏によって書かれた本作は、認知症を患う女性「カケイさん」が日常や半生を語る小説。カケイさんの一人語りは、高齢者特有の滑舌が甘くなっているところもそのまま書かれていて、独特の味わいを持った魅力的な文体になっているの。谷川俊太郎の詩集のように、日本語の美しさや楽しさを感じられる作品だと思う。

編集・B子 実体験に基づいたお話っぽいね。一体どんなストーリーなの?

ライター・保田 自宅とデイケアサービス、病院を往復する日々を過ごすカケイさんが、ある人に「これまでしあわせでしたか?」と問われたことをきっかけに、まま母に受けた暴力や失踪した夫、兄や子どもの死など、自身の過去を語り出すの。そして、来たるべき自分の死に立ち向かう……という話。

編集・B子 なんか、こう言っちゃなんだけど、あらすじを聞くと結構重そうな内容だね……。

ライター・保田 そうだね、特に過去のパートは重い。でも、これがカケイさんの話し言葉でつづられることで、明るさや優しさが自然と染み込んできて、どんどん読み進めたくなるんだよね。

 序盤のカケイさんは、認知症を患った老女の定型のように見える。静かにしなきゃいけないところで黙っていられなかったり、現在のことはすぐ忘れちゃったり。でも、カケイさんが語る過去のエピソードは鮮やかで、彼女の印象がどんどん変わってくるんだ。つらいことの多い過去だけど、その中でも優しく美しい思い出が光っていて、1人の人間として、人生の奥行きを感じさせてくれる。

編集・B子 カケイさんの「語り」だからこそ、物語にグッと入り込めるのかもね。

ライター・保田 読み終えるころには、カケイさんがすごくチャーミングに見えるし、彼女の人生を心から肯定したくなる。それって、自分にもいずれやってくる「老い」をも肯定することに近いんだと思ったよ。だから、齋藤さんはもちろん、老いや認知症の話なんて自分にはまだ無関係だと思っている人、もしくは、あまり直視したくないと思っている人にも勧めたいな。

編集・B子 最近、脂っこいものが受け付けなくなって「老い」を感じてたけど、そんな自分も肯定できそう。未来の自分に会いに行くような気持ちで、私も読んでみようかな!

『夜のミッキー・マウス』(新潮文庫/著:谷川俊太郎)※文庫版がおすすめ!

 詩人はいつも宇宙に恋をしている。作者にも予想がつかないしかたで生まれてきた言葉が、光を放つ。「夜のミッキー・マウス」「朝のドナルド・ダック」「詩に吠えかかるプルートー」そして「百三歳になったアトム」。ミッキー・マウスもドナルド・ダックもプルートーもアトムも、時空を超えて存在している。文庫版のための書下ろしの詩「闇の豊かさ」も収録。現代を代表する詩人の彩り豊かな30篇。

『ミシンと金魚』(集英社/著:永井みみ)

 「第45回 すばる文学賞」受賞作。認知症を患うカケイの視点で進む物語。カケイは、ある時病院の帰りに「今までの人生をふり返って、しあわせでしたか?」と尋ねられ、来し方を語り始める。暴力が身近だった幼少期、娘や息子の死——。暴力と愛情、幸福と絶望、諦念と悔悟……絡まりあう記憶の中から語られる「女の一生」。