8月下旬になって暑さも和らぎ、過ごしやすい日が増えてきました。しかし、数日前まで続いた猛暑の影響で、疲れやすさや食欲の低下などを感じている方も多いのではないでしょうか。夏の不調の原因は、意外にも体の「冷え」にあるのだとか。その場合は、食事と生活を見直すことで、体の不調を改善できるのだといいます。
ということで今回は、夏バテ対策に役立つ食材と、食欲がわかないときでも食べやすいスープのレシピを、管理栄養士・池田明日香氏に教えてもらいました。
1. 夏に起こる不調の原因とは?
暑い日は、体の中と外からクールダウンしたくなりますよね。しかし、胃腸まで冷えてしまうと、体の不調を招くこともあるんです。
1-1.夏は胃腸の冷えに注意
冷たいものを飲みすぎたり、冷房の効いた室内で長時間過ごしたりすると、胃腸が冷えやすくなります。また、汗をかくと体内の水分が出てしまい、全身の血液量が不足気味になるので、胃腸まで届く血液が減ってしまうんです。すると、胃腸の動きが悪くなり、消化不良で腹痛が起こったり、便秘や下痢になったりすることも。腸の動きが悪くなると腸内に老廃物が溜まり、悪玉菌が増えて、腸内環境が乱れてしまいます。
1-2.自律神経の乱れが、夏バテを引き起こす?
暑い外とエアコンの効いた室内の温度差が大きいと、体温調節のために体に負担がかかります。また、夏は強い紫外線や、連日の暑さによるストレスも重なり、自律神経が乱れがちになるのです。ストレスがかかって交感神経が優位になると、腸の動きも悪化。逆に、リラックスして副交感神経が優位になると、胃腸の働きは活発化するため、自律神経を整えることは腸のためにも大切だといえます。
夏の不調を和らげるためには、冷房や紫外線への対策、睡眠の環境を整えることが必要。長袖の羽織ものやストール、紫外線対策の日傘などを活用してみましょう。
1‐3.夏の不調を体の中から改善するには?
腸の環境が乱れやすい夏こそ食事を意識して、内側から体調を整えましょう。具体的に、役立つ食材をご紹介します。
■たんぱく質:肉類、魚類、大豆・大豆製品、乳・乳製品
たんぱく質は、筋肉や血液の材料になる重要な栄養素。不足すると、筋肉量が低下して代謝が落ちたり、血液の減少で酸素やエネルギーが体に回らなくなったりと、不調を招く原因になります。肉や魚、大豆製品などのたんぱく質を、毎食とるように意識してみましょう。
■鉄:レバー、赤身の肉、あさりなどの貝類、ひじきなどの海藻類、小松菜、大豆製品など
鉄は、たんぱく質とともに血液のヘモグロビンを構成する重要な成分。不足すると貧血になり、頭痛や倦怠感、疲れやすいなどの症状を感じることがあります。鉄は汗と一緒に流れ出てしまうので、特に夏場は意識して摂取しましょう。ビタミンCと一緒にとると吸収がよくなるので、レモンなどの柑橘類、パプリカやブロッコリーなどの野菜と一緒に食べるのがおすすめです。
■体をクールダウンする食べ物:トマト、きゅうり、ゴーヤ、なす、冬瓜などの野菜
みずみずしい夏野菜には水分やカリウムが多く含まれていて、汗とともに失われた水分を補給するのに役立ちます。カリウムは体内のナトリウムを排出する作用があり、尿とともに熱を放出して体を冷やします。ただし、食べすぎると胃腸の冷えにつながるので、体を温める作用をもつ生姜とあわせたり、加熱してスープとして食べたりすることをおすすめします。
それでは、これらの食材を使った、簡単な「薬膳スープ」のレシピをご紹介します。薬膳料理というと、手間がかかったり、特別な食材が必要なイメージを持つかもしれませんが、実はそんなことないんです。ここでは、スーパーでも売っている身近な食材だけで完成する2品を挙げてみました。
2-1.セロリ香る、鶏手羽と冬瓜のスープ
カリウムを多く含む冬瓜は、体を内側からクールダウンしてくれる食材。薬膳でも「涼の性質」を持つとされ、体内の熱を冷まし、余分な水分を排出する働きがあると考えられています。たんぱく質を含み、おなかを温めて気を補うとされる鶏肉を合わせ、夏の栄養補給にぴったりの一品に仕上げました。じっくりと煮込んだ骨付きの鶏肉から出る旨味が冬瓜に染みて、滋味深い味わいになっています。
■材料(2人分)
・鶏手羽中……6本
・冬瓜……200g
・セロリ……1/3本(30g)
・(A) しょうが(薄切り)……1かけ
・(A) 酒……大さじ1
・(A) 水……500ml
・塩こうじ……小さじ2
・こしょう……少々
・塩……少々
・しょうが(千切り)……1かけ
■作り方
下準備 鶏手羽中は骨に沿って切れ目を入れる。
1. 冬瓜は種とワタを取り除き、皮をむいて食べやすい大きさに切る。セロリは筋を取り、薄切りにする。
2. 鍋に鶏手羽中と(A)を入れて弱めの中火にかける。アクを取り除き、鶏手羽中が柔らかくなるまで20分ほど煮る。
3. 2に冬瓜とセロリを加え、冬瓜が柔らかくなるまで10分ほど煮る。塩こうじ、こしょうで味付けする。
4. 塩少々で味を調えて器に盛り、千切りしたしょうがをのせればできあがり。
トマトと黒酢のさわやかな酸味が、夏の暑さで低下した食欲を刺激する一品。黒酢には、酢酸やクエン酸などの有機酸、アミノ酸など、疲労の軽減に役立つ成分が含まれています。加熱することで、トマトに含まれる抗酸化物質のリコピンが吸収されやすくなるので、紫外線対策にもおすすめですよ。
■材料(2人分)
・トマト……小1個(120g)
・長ねぎ……5cm
・きくらげ(乾燥)……5g
・卵……1個
・(A) 鶏がらスープの素……小さじ2
・(A)水……450ml
・(A)酒……大さじ1
・黒酢……大さじ1
・しょうゆ……大さじ1/2
・こしょう……少々
・ごま油……適量
■作り方
下準備 きくらげは水に浸して戻しておく。卵は溶いておく。
1. トマトは1cm角に切る。長ねぎは小口切りにする。きくらげは硬い石づきの部分を取り除き、食べやすい大きさに切る。
2. 鍋にトマトと(A)を入れて中火にかける。トマトが柔らかくなるまで5分ほど煮込み、ヘラで軽く潰す。長ねぎ、きくらげを加えてさっと煮る。
3. 黒酢、しょうゆ、こしょうを加え、溶き卵を回し入れてひと混ぜする。
4. 器に盛り、お好みでごま油をかければできあがり。
※辛いものがお好きな方は、ごま油をラー油に変えてもおいしいです。
東洋医学では、甘味、塩味、酸味、苦味、旨味を指す「五味」や、体を温めたり冷やしたりする「五性」、赤、緑、黄、白、黒などの「五色」で食事からの養生を行うと考えられています。しかし、食事や生活を整えても体の不調が改善しない場合は、漢方でのアプローチも有効です。
漢方薬は、食欲不振や倦怠感などの夏バテ症状の治療や、自律神経を調整するために使われています。自然の生薬からできていて、一般的に副作用が少ないとされていますので、安心してお試しいただけるでしょう。また漢方薬は、胃腸の消化機能をよくすることで、水分や栄養素の吸収を高めるほか、血液を増やして血流を促すことにより、栄養素や水分を全身に届け、消耗した体力を回復してくれます。
さらに、渇いた体を潤す、体内にこもった熱を冷やす、発汗を抑えるなどの働きにより、水分の消耗を抑え、暑さに強い体づくりをサポート。日々の食事や生活習慣を整えるのは大変という方でも、漢方薬なら症状や体質に合うものを飲むだけなので、手軽に毎日続けられそうですよね。
<夏バテの症状でお悩みの方におすすめの漢方薬>
・清暑益気湯(せいしょえっきとう):暑さによる食欲不振や下痢、全身倦怠、夏やせを改善します。
・補中益気湯(ほちゅうえっきとう):停滞している気を引き上げ、胃腸の働きを高めることで、疲労、倦怠感、食欲不振を改善します。
漢方薬は、ご自分の状態や体質にうまく合っていないと、効果を感じられないだけでなく、場合によっては副作用が生じることも。しかし、たくさんの漢方薬から、ご自分に合った漢方薬を見つけるのは大変ですよね。そんなときは、「あんしん漢方」などのオンライン漢方サービスに、一度相談してみるのもいいでしょう。漢方に精通した薬剤師とAIが、あなたに効く漢方薬を見極めて、お手頃価格で自宅に郵送してくれます。
4. 腸を整えて、毎日を元気に過ごそう!
厳しい夏の暑さで、体は自分が思った以上に疲れています。食欲がわかないこともあると思いますが、そんなときこそ食事でしっかり栄養をとることが大切。また、体の冷やしすぎにも気をつけてみてくださいね。根本的な体質改善を目指したい方は、漢方薬の助けを借りるのもひとつの方法です。信頼できる専門家に、一度相談してみてはいかがでしょうか。
管理栄養士・池田明日香
大学卒業後、管理栄養士として治験コーディネーター業務に携わる。その後、食品メーカーにて料理教室運営や商品・メニュー開発などに従事する。食事を楽しむことと健康的な食生活の大切さを感じ、現在は食と健康関連のコラム執筆、オンラインでのダイエットサポートなどで活動中。漢方のプロがAIを活用して自分に適した漢方薬を選びお手頃価格で自宅に郵送してくれる「あんしん漢方」でも情報発信をしている。