「婦人公論」(中央公論新社)の9月号が発売になりました。今月号の第1特集は高齢になってからの“きょうだい”関係に迫る「きょうだいは支えか重荷か」。第2特集は、同誌の夏の定番である怪談特集「真夏の不思議スペシャル」です。
怪談特集に負けず劣らず、きょうだい特集にも背筋が凍るコワいエピソードがたっぷりの今号。早速、中身を見ていきましょう!
<トピックス>
◎<読者アンケート>「血縁だから仲がいい」は幻想!?
◎<読者体験手記>絶縁を決めた理由
◎寂しいのは幽霊も同じです 三木大雲
妹夫婦が父のすべての預貯金の名義を……
第1特集の「きょうだいは支えか重荷か」。長いこと“母と娘”や“毒母”のブームが続いていた同誌ですが、これからはきょうだい関係にシフトしていくのでしょうか。同誌は年を重ねるときょうだい付き合いにも変化が訪れるといい、その分かれ道になるのは「お金と介護」だと説きます。
読者アンケート「『血縁だから仲がいい』は幻想!?」(合計153人、平均年齢62.8歳が回答)では、「現在、きょうだいと交流がある?」と答えた人が~40代では58%、50代で51%、60代で66%、70代以上で64%。もし、年に一度でも顔を合わせることも「交流」とするなら、やはりこの数字は少なく見えます。さらに気になるのは「疎遠になった理由」。50代・60代・70代以上の1位はすべて「金銭問題・遺産相続」でした。きょうだいといえども、やはりお金が絡むと関係はこじれるのが現実のよう。
紹介されているきょうだい間のトラブル事例を見ると、「父が亡くなる前に、妹夫婦が父のすべての預貯金の名義を変更していた」「妹夫婦は、母を振り込め詐欺から守るため母の貯金を預かると言って持って行き、いつの間にか『親がくれると言った』と主張」という詐欺的なものから、「姉の子が幼稚園の時、お年玉として図書券3000円分をあげたら、『しけてる』と笑われた」「(兄からの)贈り物がいつもどう見ても安価」などの些細な感覚のズレによるものまで、バリエーション豊か。亡くなった父親の棺をLサイズにするか2~3万円安いMサイズにするかで揉めた……というものもありました。
きょうだい問題にはその配偶者という登場人物も加わるため、いっそうよりドラマが生まれるのかもしれません。毒母ブームに続く、毒きょうだいブームの気配がします。
「絶縁を決めた理由」がテーマの読者体験手記コーナーでは、さらに恐ろしいきょうだいトラブルが詳細に語られています。
1通目の68歳女性は、実母の介護をめぐって弟&義妹夫婦と行き違いの末、弟から「殺すからな」と書かれた脅迫状が届いたと明かし、2通目の61歳女性は父親の死をきっかけに姉と絶縁状態だとつづっています。
この2通目の女性は、姉の姑が亡くなったとき、彼女の両親は「香典5万円、生花2万円、お布施2万円、もり籠1万円の合計10万円を包んだ」にもかかわらず、父親が亡くなった際、姉夫婦は香典なしだったとのこと。投稿者が、「両親は姉の姑の葬式にいくら包んだか」を事細かに記憶していることにも驚きますが、それくらいお金の恨みは深いということなのでしょう。さらに6年後、投稿者の母親も死去。姉は今度は香典を包んできたというものの、家や田んぼの名義変更でまたも複雑に揉め、今では「他人以下」だそうです。
親の介護や葬儀といった誰にでも起こりえるイベントで、ここまできょうだい仲はこじれるのか……と、他人事ではないと感じさせる手記でした。今号では、良い関係を築いている代表として、過去に「女性セブン」(小学館)で不仲疑惑を報じられた上沼恵美子と姉・芦川百々子さんが2人そろって登場するインタビューも掲載されているので、手記でゾッとした方はそちらでお口直しをどうぞ。
第2特集「真夏の不思議スペシャル」からは、京都・光照山蓮久寺の住職である三木大雲和尚へのインタビュー記事「寂しいのは幽霊も同じです」を見ていきます。この方、2014年の「稲川淳二の怪談グランプリ」チャンピオンだそう。稲川淳二の怪談グランプリなる大会も気になりますが(優勝すると10万円と稲川淳二の怪談DVDセットが授与されるとのこと)、さすが現役住職とあって、三木和尚が同誌で語っている心霊体験は説得力があり、幽霊への優しい眼差しまで感じます。
最もなるほどと感じたのは、「幽霊を見た時にどう捉えるかは、生きている人の心次第」という部分。その理由を、「誰かを裏切ったという罪悪感を抱いている人にとっては、幽霊という存在は、恐怖でしかないでしょう。一方で、愛する人を亡くし、再会したいと願っておられる方には、奇跡として感じられます」と説明しています。
ぜひ三木和尚に「亡くなった親の棺の値段をケチったらどうなるのか?」や、「自分の遺産が原因で絶縁した子どもたちを天国の親はどう思っているのか?」などについても、見解をお聞きしたいと感じました。