今は亡き某指定組織の三次団体幹部の妻だった、待田芳子姐さんが語る極妻の暮らし、ヤクザの実態――。
現役ヤクザだけでなく、元ヤクザも銀行口座を開設できない
以前から書きたいと思っていたのですが、難しいので放置していた「元ヤクザの銀行口座開設問題」について、「AERA dot.」に出ていたので、私も書かせていただきたいと思います。
現役の暴力団組員は口座開設ができませんが、一方で、すでにやめた元組員についても、金融機関の口座開設を支援する取り組みがあるものの、実際に口座を開設するのは難しい現実があります。
私の周囲に限らず、なりたくてヤクザになった人は、まずいないんですが、金融機関からの締め出しは、まさに「『ヤクザは息をするな』ということ」(宮崎学さん)でしたね。
この締め出しの経緯を改めて見てみますと、やはり2011年秋までに全都道府県で施行された暴力団排除条例の存在が大きいです。でも、それ以前から全銀協(一般社団法人全国銀行協会)は、契約の際の暴排条項の「参考例」をたびたび出してきました。つまり条例の施行前から、銀行的には「暴力団員にはカネを貸すな」的な話があったんですよ。
さらに、13年9月に発覚した「みずほ銀行がヤクザに融資していた件」が大問題となって、金融機関における暴排は進んでいきます。
今思えば、みずほ銀ではなくて、むしろ子会社のオリエントコーポレーションの問題でしょう。でも、オリコだって窓口に来た人に「暴力団員ですか?」とは聞けないでしょうし、今どきのヤクザは見た目ではわからない人がほとんどですから、「ヤクザかどうか見抜け」というのはムリですね。という主旨のことを宮崎学さんが書いておられました。
みずほ銀はトラブル続きですが、それはさておき、当初規制されていたのは「融資」や「貸金庫」、「当座預金」で、生活に必要な普通預金口座は対象ではなかったそうですが、どんどん厳しくなっていきました。「ある日突然、口座が解約されて、数千万円の現金が書留で送り返されてきた」というようなお話もけっこう聞いております。没収じゃなくてよかったですね……(そういう問題じゃないですが)。
一方で、警察庁は今年の2月に更生の支援策として「暴力団離脱者の口座開設支援について」として通達を出しました。「暴力団から離脱した者が、就労先から給与を受け取るための預貯金口座の開設を申し込んだ場合において、過去に暴力団員であったことを理由として排除されることがないよう、暴力団離脱者の預貯金口座の開設に向けた支援策を策定」したそうです。
東京の3つの弁護士会は18年から支援してきましたが、県内に指定組織が5団体もある福岡も検討が求められているようです。
ぼちぼちとはいえ更生のための支援が続いているのですから、いっそ条例の“ヤクザをやめてから5年間はヤクザとみなす”という「みなし規定」とか、いらないんじゃないかと思います。
ちなみに警視庁の元暴力団対策課長などを歴任した中林喜代司さんは、座談会「暴力団離脱者の預金口座開設の問題について」で、「暴力団を離脱してから5年を経過していないからといって、一律に普通預金口座開設を断らなければならないわけではなく、離脱者個々の信用を判断し、真に覚悟をもって離脱を志す者に対しては、普通預金口座を開設すべきなのです」と力説されていました(「銀行法務21」20年10月号、経済法令研究会)。
「でも、銀行関係者の皆さんは「『元』でも『現役』でも、具体的なリスクにかかわらず総合的に判断して断りたいことに変わりはない」とバッサリ。世間様は冷たいなあと思うことしきりですが、これが現実なのでしょう。
毎度同じオチですみませんが、銀行口座すらない元ヤクザは、どうやって生活できると思いますか? かなりの確率で新たな犯罪に手を染めます。被害者が読者の皆様やご家族様でないという保証はどこにもないのです。