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『ザ・ノンフィクション』親の介護を離れて「自我が芽生えた」息子「ボクと父ちゃんの記憶2022前編 ~母の涙と父のいない家~」

 日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。9月18日の放送は「ボクと父ちゃんの記憶2022前編 ~母の涙と父のいない家~」。

あらすじ

 千葉県南東部、緑豊かな睦沢町で暮らす林家。高校3年生の息子・大介は、若年性アルツハイマー型認知症になった父親を日常的に介護している「ヤングケアラー」だ。

 大介の父親、佳秀はもともと東京で映像制作の仕事をしており、多忙な日々を送っていた。1999年に妻の京子と再婚、その後2003年に大介が産まれるも、05年、50歳の時に若年性アルツハイマー型認知症と診断される。

 病気の進行を遅らせるため、一家は自然豊かな千葉に越す。ホームビデオで撮影された、病状が悪化していないころの佳秀は普通の父親と変わらない様子で、幼い大介と散歩に出かけ会話も弾んでいた。しかし、大介が中学校に上がるころから、佳秀の症状は目に見えて悪化していく。

 現在は家族と佳秀の会話はほぼ成り立たず、佳秀は家族の名前も思い出せない。トイレも一人で行けず、おむつをはいている状況で、仕事で遅くなる京子に頼まれて、大介が佳秀を寝かしつける様子も映されていた。

 京子は佳秀を施設に入れることを決断。別れの日、施設に向かう車の中で涙をぬぐう京子や大介の傍らで、事情がおそらくわからない佳秀はただニコニコしていた。

 佳秀のいなくなった林家では、それまで佳秀の世話にかかりっきりだった大介と京子の間にけんかが起こるようになり、ナレーションではその様子を「みんな介護で精いっぱいだった林家、自由な時間が生まれた大介君に、自我が芽生え始めました」と伝えていた。

 その後大介は高校卒業後地元の造園会社に就職、将来的には農業をやりたいと話す。

 過去の林家の放送回レビューはこちらから。

「ボクと父ちゃんの記憶」ここ1年で4回放送

 『ザ・ノンフィクション』で林家の放送をずいぶん見ている気がしたため、これまでの回を振り返ってみた。

 21年10月に林家の初回が放送され、その回が国際メディアコンクール『ニューヨークフェスティバル』のドキュメンタリー・普遍的関心部門で銅賞を受賞。その後、22年5月にその後の林家が伝えられ、そして今回22年9月で3回目の放送となる。今週は前後編あるうちの前編なので、来週放送回を含めるとこの1年で4回放送されることになる。

 『ザ・ノンフィクション』では京都の「泣き虫舞妓物語」や、上京した若者の生活を見つめる「新・上京物語」などシリーズ化している回もある。ただどちらも、主役格である“新人”は毎回変わる。なお、歌舞伎町のホストたちをテーマにした回も定期的に放送されていたが、これは新型コロナの蔓延以降全く放送されなくなってしまった。

 一つの家族を見つめ続ける、という点ではダウン症のダンサーである優とその家族を見つめた「ピュアにダンス」シリーズもあるが、こちらは過去2年で年1のペースで放送されている。その点、林家はかなりのハイペースだ。

 番組が国際的な賞を取ったこともあり、番組としては「林家推し」なのかもしれない。林家の場合「認知症」という、今日多くの人にとって自分の親、そして自分自身にとっても無関係ではいられないテーマを含んだ回ではあるが、林家のほかにも「その後」を取り上げてほしい過去の出演者は少なくない。番組は、どういう基準で「その後」を追う対象を決めているのだろう。

『ザ・ノンフィクション』に登場した人たちの「その後」

 なお、番組が取材した人たちの「その後」について少し触れたい。19年10月放送「好きなことだけして生きていく 後編~伝説のシェアハウス解散~」では、開業資金を極力抑えて開店した喫茶店「しょぼい喫茶店」の様子が伝えられていたが、その後、店は20年2月に閉店したそうだ。時期的に考えて、新型コロナウイルスの流行とは無縁かと思われる(新型コロナウイルスによる初の緊急事態宣言発令は同年の4月)。

 また、近年の『ザ・ノンフィクション』で最も話題沸騰となった回と言っても過言ではない、22年1月放送「結婚したい彼女の場合 ~コロナ禍の婚活漂流記」に登場した30代女性のミナミは、その後無事婚約に至ったと結婚相談所の植草氏が伝えている。

 番組の取材に協力することでの謝礼はあるとは思うが、番組に出ることで、SNSやネット掲示板でさまざまな人に好き勝手なことを言われることを思うと(この原稿もそうだ)、番組にもう出たくない、という人も少なくないと想像する(出演した側が、実態と違うと放送後に番組側へ抗議したケースも複数ある)。

 その中で4回も登場する林家は、番組側の意図と京子の意図が合致している幸福なケースなのかもしれない。

 ただ林家放送回では、ナレーションが「家族一緒が一番大切」といった美談調にしようとしているように個人的には感じる。今回もその傾向はあった。実際は、もっと苦悩やいら立ちなど、さまざまな感情があるはずだろう。

 しかし介護を終えた林家で、京子と大介が親子げんかをしていた際に、介護生活から離れ大介に「自我」が芽生えた、と触れたナレーションは、ハっとさせられる良い文言だと思った。

 次週の『ザ・ノンフィクション』は今週の続編。感染症予防から面会がなかなかかなわなかった家族は佳秀とようやく面会となり……。