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  • 水. 10月 23rd, 2024

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中学受験生の娘が、髪を抜いて食べていた――「産後1カ月で職場復帰」スーパーウーマンの母が猛省するワケ

 “親子の受験”といわれる中学受験。思春期に差し掛かった子どもと親が二人三脚で挑む受験は、さまざまなすったもんだもあり、一筋縄ではいかないらしい。中学受験から見えてくる親子関係を、『偏差値30からの中学受験シリーズ』(学研)などの著書で知られ、長年中学受験を取材し続けてきた鳥居りんこ氏がつづる。

 中学受験生の親の悩みは多々あるものだが、その中でもダントツ上位に入るのが「子どものやる気が見られない」である。つまり「勉強しない」ということだ。

 勉強に、まるでRPGの攻略をするがごとくの手応えを感じ、夢中になっていく子もいるにはいるが、実態としては、塾の勉強が苦行になってしまう子のほうが多いだろう。

 「そんなに勉強が苦痛なら、中学受験をやめて高校受験にシフトしよう」と親子で納得できれば一番いいのかもしれないけれど、話はそんなに単純ではない。子ども自身が「勉強は嫌だ」「でも受験はやめたくない」という、相反する気持ちの狭間にいる場合もあるし、親のほうが「受験をあきらめきれない」場合もある。

 子どもが勉強をしないと、現在進行形でお悩みの親御さんもいると思うが、ことアグレッシブに生きてきたことが“成功体験”になっている人は注意が必要かもしれない。

 小学6年生の琴音ちゃんというひとり娘を持つ恵理さん(仮名)も、そんな親の一人だった。彼女はバイヤーとして活躍中の女性。体力には自信があり、海外出張も徹夜仕事も朝飯前。産前もギリギリまで仕事をし、産後も1カ月で復帰したというスーパーウーマンである。

「私は昔から『人生は気合と根性』と思って生きてきました。一度決めたら、何としてでも達成するという意思は固いと思います。学生時代の勉強も、大人になってからの仕事も、それこそスケジュールを分刻みでめいっぱい詰め込んで、どんどんこなしていくのが好きなタイプなんです」

 そんな恵理さんは、子育ても当然のようにタイムスケジュール化してきたという。

「琴音のことはすべて、私主導で決めてきました。夫に相談したとしても、彼も忙しいですから、『恵理に任せる。そのほうが確実』ってなるんで、結局、私が『この習い事やろう』『この塾に通おう』と仕切り、日々のタイムスケジュールを作っていました。琴音も特に嫌そうな素振りもなく、淡々とこなしているって感じでしたね」

 恵理さん夫婦は共に中学受験経験者。琴音ちゃんの中学受験は既定路線だったそうだ。

「私たちは親族に中学受験をしなかったという人間がいない家系なので、逆に公立から高校受験という道がまったくわからないということもあり、ごく自然に私が決めた受験塾に琴音を通わせるようになりました」

 そういうわけで、琴音ちゃんは小1から、ある中学受験専門塾に通うようになったのだが、小5くらいから心配な行動が目立つようになってきたそうだ。

「毛量が多い子なので、初めはわからなかったんですが、気づくと、琴音が自分の髪をむしって抜いているんですよ。多分、無意識なんでしょうね……勉強しながら、抜いた髪を食べているのを目撃してしまい、ものすごくショックでした」

 これは「抜毛症」と呼ばれるもので、毛を抜きたいという気持ちを抑えられず、自分で髪の毛やまつ毛を抜いてしまうという、思春期の子どもたちに多い症状。主な原因はストレスといわれており、実は中学受験生でこれを発症してしまう子も少なくはないのが実態だ。琴音ちゃんのように、同時に、抜いた毛を口に入れる「食毛症」を併発することもあるという。

 恵理さんは沈痛な表情を浮かべ、こう言った。

「慌てて、心療内科に連れて行ったんです。ドクターに『まずはストレスの除去だね』と言われ、さすがにこれまでの子育てを見直しました。今までは私自身の成功体験から、『これをやっときゃ間違いないんだから!』っていう感じで、子育てのすべてを決定してきたんですが、琴音の姿を見て、間違いないどころか、間違いだらけだったんでは? と反省しましたね……。それで、琴音に『どうしたい? 受験、やめる?』って聞いたんです」

 ところが、琴音ちゃんの返事は「NO」。受験はやめないという意思を示したそうだ。

「琴音は、よくいえば素直でやさしい。悪くいえば、闘争心ゼロって性格なんですが、琴音の行っている塾は、結構スパルタで、『努力と根性』が売りみたいな部分があるんですよね。私はその姿勢に惹かれたものの、琴音にとっては酷な環境でした。人と競ってナンボっていう場所で過剰に適応しようとしたことが、抜毛症につながったのだと思います。本当にかわいそうなことをしました」

 そこで、恵理さんは転塾を決意。もうすぐ小6というタイミングだったので大手塾をあきらめ、琴音ちゃんのペースに合った個別塾と、地元で定評のある寺小屋的な塾の2つに絞り、どちらに通うかの判断は本人に任せたという。

「琴音には、『受験はしたいならしていい。公立中学に行くのもありだし、受験校も自分で決めていい。とにかく、これからは琴音のペースを大切にしよう』って話をしました」

 結局、琴音ちゃんは自分で個別塾を選んだのだが、これが吉と出た。

 琴音ちゃんは担当の講師の先生とウマが合ったらしく、先生の出身校の女子校に入学するという目標を持ち、残り4カ月と迫った受験本番を意識しながら、猛勉強中だそうだ。

 恵理さんが「私は猛省中です」と言いながら、今の心境を語ってくれた。

「以前の塾も決して悪い塾ではありません。受験はある意味、競争なので、厳しい叱咤激励が必要な場面もあるとは思うんです。でも、琴音には合わなかった。今の塾は室長の『褒めて伸ばす』という指導方針があるせいか、担当の先生も本当に丁寧に琴音の話を聞いてくれて、それを決して否定しないみたいなんです。私はそんな先生たちの話を聞いて、『私は琴音の話に、真剣に耳を傾けたことがあっただろうか?』『はなから聞こうとしていなかった』と自問自答しています」

 恵理さんは、「琴音を抜毛症に追い込んだのは、受験でもなく、塾でもなく、私だったと思っている」と言う。

「もう、今は何よりも、琴音の健康が一番。琴音が生きやすい環境に身を置いてくれるようにサポートするのみだと決意しているところです」

 現在、琴音ちゃんは突然やる気スイッチが入ったかのように、生き生きと塾に通うようになっているそうだ。そして、喜ばしいことに、今は髪を抜いたり食べたりすることも格段に少なくなっているという。

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