「婦人公論」(中央公論新社)10月号、特集は「悔いなく死ぬために今できること」。「婦人公論」ならではのリアルな手触りで終活に迫ります。遺産はどうする、終末医療の希望は、憧れの有名人(逝き方という意味で)――といった気になる話題が目白押しです。早速、中身を見ていきましょう!
<トピックス>
◎デヴィ・スカルノ 娘と孫が困らぬよう「財産整理」の真っ最中
◎香取慎吾 大切な人とは深くつながり、深く愛したい
◎国生さゆり ネガティブを抜け、いま小説を書く
デヴィ夫人のウットリ葬儀計画
「終活」特集の今号。アンケートでは理想の最期について、読者からさまざまな声が寄せられていました。「十分生きたからこれでおしまい。いらんことせんでほしい」(90歳)と終末医療を望まない人、「あまりに資産が少ないので伝えるときに赤面しそう」(90歳)と遺産の額を心配する人、「39歳の長男がアルバイトで収入が少ないため、これから先、経済的にやっていけるのか不安」(66歳)など遺す家族を思う人も。
また、「(死ぬまでに)クロマチックハーモニカの腕を磨いて、マチュピチュで『コンドルは飛んで行く』を吹きたい」(68歳)や、「最期まで一緒にいられるパートナーと巡り合いたい」(53歳)などロマンティックな目標を掲げる方も見られました。
死というと、どうしても“できればあまり想像したくないもの”というイメージを持ってしまっていましたが、読者アンケートを見ていると、理想の最期を想像するのって、結構楽しいことなのでは……という気もしてきます。
そう思わせてくれる最たるものが、デヴィ・スカルノ夫人のインタビュー記事でした。デヴィ夫人が計画している自身の葬儀とは、「教会で行い、会場には大好きなラヴェルの『ボレロ』を流します」「白いドレスを身にまとった私が眠る棺を担ぐのは、燕尾服の美男子6名!」「祭壇のお花は白と緑を中心にピンクや紫を少しだけ加えたイングリッシュガーデン風に」という華やかなもの。
葬儀というよりウエディングパーティーの計画を聞いているようで、うきうきしてきませんか!? 必ず誰にでもやってくる最期。どうせならデヴィ夫人のようにうきうき計画して待ちたいです。
香取慎吾が、三谷幸喜と交わした弔辞の約束が泣ける
次に見ていくのは香取慎吾のインタビュー。こちらにも終活特集につながる興味深い発言がありました。
親しい人にも自分の電話番号を教えない、というのがポリシーの彼。NHK大河ドラマ『新選組!』や映画『有頂天ホテル』など何度も一緒に仕事をし、親交が深い脚本家・三谷幸喜氏にも教えておらず、「20年近くにわたり『教えて』『教えたくないです』の攻防を繰り返しています」とのこと。
今では、三谷氏から「もう教えてくれなくていいよ。その代わりに、僕のお葬式で弔辞を読んでほしい。そして参列者の前で、『ずっと言えませんでしたが、僕のケータイの番号は〇×△です!』と大声で叫んでくれ」と言われているそう。香取は「仕方がないので、『それだったらいいですよ』と返事をしました。もちろん電話番号は葬儀翌日にソッコーで変えますけどね」と了承済みとのこと。
実は筆者、ドラマ『HR』(日本テレビ系、2002年~03年放送)から香取×三谷ペアを追ってきたファンでして、このエピソードには胸を打たれ、思わず涙しそうに。「電話番号を知らなくても、2人はこれ以上ない絆で結ばれているぞ……!」と、ファンならずとも感動した読者は少なくないのでは?
「香取が弔事を読む姿を見たい、でも見たくない、どちらにもずっとずっと生きていてほしい」というファン心をひどく揺さぶるとともに、大切な人との絆を確かめ合う理想的な「終活」を見たと思えるインタビューでした。
特集以外で注目したいのが、国生さゆりのインタビュー「ネガティブを抜け、いま小説を書く」。人気の小説投稿サイト「小説家になろう」で密かに連載していたことが、先ごろネット上で話題になった国生が、小説を書き始めた経緯などを語っています。
国生は、「それ(投稿サイト)が人々に公開されて読まれるということも、よくわかっていなくて――」という状態のまま、スマホのメモ機能に書き始めた小説のデータ保存先として投稿を始めたそうですが、驚くのは、その作品が“芸能人の話題作り”をはるかに超越した大作であること。
実際に「小説家になろう」を覗いてみたところ、国生の小説『国守の愛』は3部作で、合計約68万字であることが発覚。単純計算すると、単行本約5~6冊程度にはなるほどの大作で、“ちょっと片手間に書いてみました(笑)”といったレベルではない!
また、内容も想像を絶する壮大さ。主人公は、「“変異する魔王” 液体デイバイス」を研究している科学者・富士子で、彼女はその技術を狙う組織に命を狙われており、“陸上自衛隊・特殊戦群G分遣隊・アルファチーム“に守られているという設定です。
物語は、富士子の幼なじみで医師の宗弥、アルファチームリーダーの要、富士子の三角関係を軸に、「液体デバイス」をめぐる攻防が描かれるという内容で、第3章では、目から血の涙を流し続けて死亡するウイルス性の疫病まで流行し始め、物語はさらに複雑になっていきます。すごい……。
章タイトルだけ見ていても「デイトの申し込みと笑う浮子」「棒倒し 決勝戦」「スマホ紛失」「加藤」「どこかの国の船籍を持つ貨物船」など、ユニークなものばかり。そこに時折、癒やし系グルメ小説かのような章タイトル「マスカット大福」「浮子さんのお弁当」「海軍カレー」「甘い・甘い恋のチョコレート」も挟まれています。
国生の中に眠る世界の壮大さにしびれました。ぜひ「婦人公論」で小説連載を! と期待したいです。