2022年の秋ドラマシーズンに突入し、10月5日にはHey!Say!JUMP・山田涼介主演の『親愛なる僕へ殺意をこめて』(フジテレビ系)と、奈緒主演の『ファーストペンギン!』(日本テレビ系)が第1話を迎えた。今後も続々と各局のゴールデン・プライム帯の連続ドラマが放送を開始するが、業界関係者は「全体的に盛り上がりに欠けそう」(テレビ誌ライター)と苦い表情だ。
テレビ業界では「夏ドラマは視聴率で苦戦しがち」(同)というのが定説。今年7月期の作品で、全話世帯平均視聴率2ケタ台を獲得できたのは、TBS系「日曜劇場」枠で放送された『オールドルーキー』の10.4%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)と、テレビ朝日系「水曜午後9時」枠で放送された『刑事7人』の10.2%だけだった。
山崎賢人『アトムの童』長澤まさみ『エルピス』が10月期ドラマの期待作なワケ
「各局とも10月期の作品で巻き返したいところでしょうが、どうにも“秋枯れ”というのか、パッとしない印象。一応、期待作としては『オールドルーキー』と同じTBS系『日曜劇場』枠で放送される『アトムの童』(10月16日スタート)が挙げられます。山崎賢人演じる主人公・安積那由他は天才ゲーム開発者というキャラクターで、倒産危機にある老舗玩具メーカー・アトム玩具と手を組んで“ものづくり”を追求し、ゲーム業界の大資本企業に立ち向かっていく姿が描かれます」(同)
山崎といえば、近年は主演映画『キングダム』シリーズが大ヒットしているほか、Netflixドラマ『今際の国のアリス』(土屋太鳳とダブル主演)シリーズなどにも出演。地上波連ドラでの主演は、18年7月期に放送された『グッド・ドクター』(フジテレビ系)以来となるが、同ドラマは“低視聴率枠”とされるフジテレビ系「木曜劇場」枠で全話世帯平均11.2%と、2ケタ台を達成したことも話題になった。
「業界内で今の山崎は、『俳優として最も脂が乗っている状態』と言われています。このところ、映画を主戦場にしていた人気俳優・山崎を地上波ドラマに引っ張ってこられただけで、『TBSの大勝利』といってよいでしょう」(同)
加えて、『アトムの童』は放送前から香川照之の降板騒動で注目を集めた。香川は8月24日発売の「週刊新潮」(新潮社)により、過去のホステス女性に対する“性加害”を報じられ、同誌9月1日発売号でも続報が伝えられたことで、次々と仕事を失う事態に発展。
「『アトムの童』への出演は情報解禁前だったものの、複数のメディアによると、香川は那由他と敵対する“ラスボス”役でキャスティングされていたそうで、結局は降板に至りました。代役はオダギリジョーとなったのですが、世間はこの“緊急登板”に『大歓迎』などと好意的。同作に興味がなかった層も、オダギリの悪役は気になるようで、香川との“交代劇”は結果的に、かなり効果的な宣伝になったとみられます」(制作会社スタッフ)
また、長澤まさみが4年半ぶりに連ドラ主演を務める『エルピス-希望、あるいは災い-』(フジテレビ系)も、業界の注目度は高いとのこと。
「10月24日にフジテレビ系『月10』枠で放送を開始する同作は、スキャンダルによってエースの座から転落したアナウンサー・浅川恵那(長澤)が、バラエティ番組の若手ディレクターらとともに“連続殺人事件の冤罪疑惑”を追っていくという内容。プロットははっきり言って地味ですが、長澤や脇を固める眞栄田郷敦、鈴木亮平といった出演者がとにかく魅力的。長澤の主演ドラマとしては特異なテーマの作品を、プライム帯に持ってきたフジの“チャレンジ精神”も、業界内で話題になっています」(スポーツ紙記者)
一方、期待できない作品として名前が挙がったのは、すでに日本テレビ系「水曜ドラマ」枠でスタートした『ファーストペンギン!』。主人公のシングルマザー・岩崎和佳(奈緒)が、5歳の息子・進(石塚陸翔)と暮らし始めた港町で、縁もゆかりもない“漁業の世界”に飛び込んでいくというストーリーだが……。
「全体的に物語のスケールが小さい印象で、連ドラというより小規模の映画作品のような雰囲気。その“地味さ”により、秋ドラマの中で埋もれてしまわないかと不安になります。一応、共演には堤真一、劇団EXILE・鈴木伸之といった有名どころも起用されているものの、奈緒はまだ連ドラ主演を張れるほどのネームバリューがないのも気がかり。同ドラマは業界内で、“今期ワースト候補”とささやかれています」(同)
また、このところ視聴率低迷が顕著なフジテレビ系「木曜劇場」枠の『silent』(川口春奈主演、10月6日スタート)も、先行きが不安視されている。同ドラマは、主人公の青羽紬(川口)が、若年発症型両側性感音難聴を患った高校時代の恋人・佐倉想(Snow Man・目黒蓮)と8年ぶりに再会するというラブストーリーだ。
「フジテレビ系の『木曜劇場』自体に視聴者が定着していないということもありますが、そもそも主演の川口が“数字を持っていない女優”というイメージの持ち主。川口が13年に鈴木砂羽とダブル主演した『夫のカノジョ』(TBS系)は、初回4.7%で低空スタートしたのち、途中から3%台を連発し、“打ち切り”に。全8話の世帯平均は3.8%で、2000年以降のプライム帯に放送された民放ドラマ(テレビ東京を除く)史上、ワースト記録を刻んでしまいました。その後もこれといったヒット作がない川口だけに、『silent』にも期待が持てません」(週刊誌記者)
さらに、10月8日スタートのKis-My-Ft2・玉森裕太主演『祈りのカルテ~研修医の謎解き診察記録~』、10月16日スタートの清原果耶主演『霊媒探偵・城塚翡翠』(ともに日本テレビ系)も、業界内の前評判はいまいちだという。
「『祈りのカルテ』は、知念実希人氏の医療ミステリー小説『祈りのカルテ』(KADOKAWA)シリーズが原作。玉森が演じる主人公の研修医・諏訪野良太が、カルテを通して患者の“秘密”や“嘘”を優しく見破り、寄り添うというストーリー。かたや『霊媒探偵・城塚翡翠』は、相沢沙呼氏の小説『medium 霊媒探偵城塚翡翠』(講談社)が原作で、霊視能力を持つ主人公・城塚翡翠(清原)が難事件の犯人に迫るといったミステリーです。どちらもヒット小説の実写化で、若者視聴者をターゲットにしたいテレビ局の狙いはわかりますが、そうはうまくいかないのが連ドラの難しいところです」(同)
期待作以上に、「コケそう」と予想される作品が多いという秋ドラマ。前評判を覆し、ヒットする作品はあるのだろうか?