日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。10月9日の放送は「東京デリバリー物語~スマホと自転車とホームレス~」。
『ザ・ノンフィクション』あらすじ
コロナ禍以降、3年足らずで街の風景としておなじみになった、フードデリバリーの配達員。そんな3人の配達員の暮らしを見つめる。なお、今回の登場人物は、「佐々木」以外はすべて仮名。
和田(42歳)はイベント会社で働いていたものの、コロナの影響で仕事がなくなり2020年の冬に配達員になった。一日8時間週5日働いて、月収は30万、運がよければ40万になると話す。
郊外で部屋を借りると都心での配達仕事がやりづらいため、和田の住まいは都心のインターネットカフェだ。和田は「昔からピンチのときでもそんなに深く考えない、俺のダメなところなんですけど、どうにかなるだろうみたいな、日本なんで」とも話すが、一方で「ちょっとみじめな気持ちにはなりますよね」「若い子のパシリなのかみたいな、そういう虚しさ」と、複雑な胸中を明かす。
運が良ければ稼げるフードデリバリーの配達員だが、仕事や住まいを失った人を支援する「一般社団法人つくろい東京ファンド」の佐々木大志郎は、配達員の仕事について「現代的なテクノロジーを使った日雇い仕事みたいなものなので、困窮の二歩手前であるという実態は変わらない」と話し、ツイッターを使う配達員たちに「保険や食料など必要でしたら、どうぞお気軽にご相談くださいませ」とリプライを送る。
一方で佐々木は「あるカテゴリーの人には(フードデリバリーは)いい働き方。(職場の)人間関係がいやだという人は多い。そこのメリット(人間関係に煩わされないこと)は計り知れない」とも話す。自身のNPOでもフードデリバリーで働く人のために貸し出し用電動アシスト自転車を用意している。
佐々木から食べ物の支援を受け取った、フードデリバリーを始めて3か月の高山(30歳)は、昨年6月に仕事をうつ病で辞め、FXで暮らしていこうとしたもののうまくいかず、94万円の借金を抱えている。早稲田大学の政治経済学部を卒業し日本銀行に就職した超エリートだったものの、会社が自分に求めることを満たすことができず、罪悪感からメンタルの調子を崩してしまったそうだ。
佐藤(31歳)はフードデリバリーの配達員として週4日働いて、月収が8万円ほど。飲食店で働いていたがコロナ禍で職を失い、実家に引きこもっていたものの、家族との折り合いが悪くなりパニック障害を発症。その後、家を飛び出したが、当時の所持金は82円だったという。路上生活を覚悟していたが、無料Wi-Fiを使って佐々木のNPOにつながり、現在は生活保護を申請しアパートで暮らしている。生活保護の支給額は13万円で、フードデリバリーで稼いだ分は生活保護費から差し引かれる。
順調そうにフードデリバリーの仕事をしていた和田だが、所持金が800円になったと佐々木の元へSOSが入る。配達中に転倒し腰を痛め、仕事に出れなかったという。和田は佐々木から食料を受け取りその場をしのぐことができたが、最近はステイホームの風潮が弱まりつつあり、デリバリーの依頼も減少。そのため、和田は交際を始めた女性の父親が経営するリフォーム会社の社員として働くことを決意する。
借金を抱えている高山は返済のため、台風が東京を直撃した日も朝から晩まで働く。悪天候などで注文が殺到した時は、配達員の報酬が上がる仕組みだそうだ。しかし、日銀時代に入っていた年金型の保険の存在を思い出し、解約した際の解約金で借金を完済。さらに余った金で、自転車で日本一周の旅に出る。
今回、フードデリバリーの注文の詳細も伝えられていたのだが、「若い女性が、1人前で、ファストフードなど単価の安いものを頼んでいる」というケースが多く、意外だった。フードデリバリーを頼むのはファミリー層が多いと思っていた(取材先がほぼ都心だったため、郊外ならファミリー層も多いと思うが)。
都心で暮らす場合、徒歩で近所に飲食店やコンビニが全くないとは考えにくい。番組ではすき家の牛丼と豚汁のセットで客側が支払う料金は1,200円(配達料込。うち配達員の報酬は301円)、また、1人分と思しきマクドナルドのハンバーガーのセットも配達料込みで1,200円と伝えられていた。ここから、牛丼屋やファストフードで1人前のもの、店内飲食やテイクアウトなら600円前後のものをフードデリバリーで頼むと、大体倍額になるようだ。
『ザ・ノンフィクション』フードデリバリーを頼むのは「金持ち」なのか
私自身はピザの出前は頼むことがあるが、フードデリバリーはこのブームの中でも一度もなかった。家の近くに飲食店やスーパーがあることもあり、出前を頼むなんてもったいない、とケチだから思ってしまう。だから、今回の舞台は飲食する店には困らないはずの「都心」なのに、注文が途切れない状況は意外だった。
注文者は金持ちが多いのだろうと思ったが(唐揚げ一人前をタワマンに届ける様子も伝えられていた)、担当編集氏より個人的にはフードデリバリーを頼む=金持ちという印象はない、と話があり、何に金を使う人を「ぜい沢だ、金持ちだ」と判断するのも個人差があるのだなと思った。
なお、タワーマンションは入館に時間がかかるため、配達員にとっては割に合わないようだった。フードデリバリーの事業会社は「タワマン割増料金」を作った方がいいかもしれない。
次週は「人力車に魅せられて2~夢と涙の軽井沢物語~」。今年7月に放送された、浅草の人力車の会社で俥夫(人力車の運転手)を目指すも、社内検定に13回落ち会社を去ったアツシ。しかし、そんなアツシにも意外な「救いの手」が差し伸べられ……。