こんにちは、保安員の澄江です。
つい先日、取引先である防犯カメラの設置業者さんから、最近増殖する無人の餃子販売店における防犯相談を受けました。死角のないよう多数の防犯カメラを設置しているそうですが、それもむなしく万引き被害は頻発しているようで、どのような対策が効果的かと意見を求められたのです。
犯行の様子を捉えた防犯カメラ映像を見せていただくと、皆一様に金を払う演技をしていたので、悪いこととわかってやっているに違いありません。ヘタな演技をしながら、わずかな金員のみを支払い、商品代金をごまかして出ていく被疑者も数多く存在していました。
値段の貼り替えや割引シールの無断貼付などと同様、窃盗というより詐欺に近い犯罪行為なので、その場に人がいないと防げない状況といえるでしょう。そのほかにも、賽銭泥棒のように売り上げの入った料金箱を漁る者や南京錠付きのチェーンを壊して箱ごと持ち去る者まで散見され、もはや無法地帯の様相すら感じさせます。
犯行中の挙動を見れば、防犯カメラの存在は意識するも犯行の様子が映らないよう努力する被疑者ばかりで、犯意を抑制するほどの防犯効果は見受けられません。いまや、自宅の車庫で厳重保管される高額なバイクや自動車をはじめ、軒先を彩る花や側溝のフタまでもが簡単に盗まれてしまう時代です。
街中には防犯カメラがあふれていますが、それを踏まえて犯行に至る者は絶えることなく、日本各地で暗躍しています。はっきりいってしまえば、この不況下において無人販売すること自体に無理があると思われ、どれだけ高性能な防犯機器を設置しても盗難被害の根絶は不可能なことといえるでしょう。
「自動販売機のように、お金を入れた分の商品しか取り出せない仕組みにしないと、被害の根絶は難しいでしょうね。常習者なら顔認証登録して、その都度に対応すればいいでしょうけど、初めての犯行まで完全に防止したいとなれば、すぐに対応できる距離でモニター監視するしかないですよ」
「自動販売機や顔認証システムを導入する予算はないですよ。そもそもコストがかからないから無人販売なのであって、人も置けないんです」
「機械での防犯には限界がありますから、どうしても人の目や手が必要になります。例えば、店内の様子をライブ配信して、さりげなく防犯につなげている店舗もありますが、それでも(万引きを)やる人はやりますから。常習者対策としてならば、被疑者の写真を店内に貼り出して牽制するやり方もありますけど、人権問題に発展しかねないのでお勧めできません。支払完了まで商品を触れないようにするか、店番を置くこと以外は、やっぱり思いつきませんね」
いわゆる無人の餃子販売店は、無人コンビニと違って、スマホをかざすなど入店に際して身分確認的なことを求めていません。そのため余計に心理的な圧迫は少ないと思われ、犯行の様子を防犯カメラに撮られたとしても、捕まるには至らないだろうと高をくくられてしまうわけです。ある意味、魔が差しやすい店づくりの極みともいえ、犯罪とは無縁に過ごす正常客が犯行に至ってしまう可能性も否定できません。
経費削減と利益追求のため、あえて人を置かずに盗みやすい状況を構築しておきながら、盗まれると被害者として許せないと訴えるのは、ナンセンスな話ではないでしょうか。現在の時代背景に鑑みると、満足に食事を取れない人たちの緊急避難場所と化してしまう恐れもあり、そうなれば削減してきた経費を一気に吐き出す結果を招くことにもなりかねません。
大切な商品を盗まれたくないのならば、ヒトの性善説を過信することなく、自分の手で守るほかないのです。
セルフレジ不正による被害が増加
昨今は、無人店舗と同じく、大型商店の一部で導入が進むセルフレジにおいても不正行為が横行しています。積極的に導入されている店舗では、バッグやポケットに隠匿する手口を見る機会が減った分、セルフレジ不正による被害が増えたと訴える声が絶えません。
商品ロスの増大を恐れて、設置しただけで稼働できていない店舗も散見され、いかに不正被害を防止するかが大きな課題となっています。セルフレジサポーターの目をかいくぐって犯行に至る者は絶えることなく、結果として商品ロスが増えてしまった店舗もありました。常に人目があるにもかかわらず、このような状況になってしまうのですから、価値ある商品を無人で販売すればどうなることか。皆さんも、容易に想像できることでしょう。
詳しい手口の記述は避けますが、セルフレジ不正が横行する大きな要因として、誤りを指摘されても言い訳しやすい状況があります。万引き犯は「もしバレたとしても、間違えた、わからなかったと言い訳すればいい」と考えているのです。一度でも成功して味をしめてしまえば、少しでも得をしようと不正行為を繰り返すようになるため、隙のない防犯体制を構築する必要があります。
いままで万引きなどとは無縁だった人が、突如として不正に手を染めてしまう事案も多々あり、この魔が差しやすい精算方式を罠のように感じたこともありました。
セルフレジには、比較的高性能なカメラが各所に設置されており、その映像を見れば言い訳は通用しません。ポイントカードやクレジットカード、車のナンバーなどから、被疑者の身元を特定するケースは多く、後日逮捕の可能性も十分にあります。不正行為を認められれば、もれなく顔認証登録され、入店する度つけ回されることにもなるでしょう。その場で得られた小さな利益は、取り返しのつかない事態になるまでの時限爆弾と変わらず、不安に怯える生活を強いられることにもつながりかねないのです。
ちなみに、セルフレジにおける割引シールの無断貼付やバーコード自体を加工するなどの不正行為は、窃盗罪ではなく電子計算機使用詐欺罪が適用されます。金額の大小にかかわらず、出来心では済まされない事態を迎えることになるので、ご留意ください。
「セルフレジを使用すれば、盗みたい、ごまかしたいという欲望が湧いてきてしまうので、これからは利用しません」
セルフレジ不正をした30代の主婦を捕捉した際、店長の恩情により弁償することだけで済まされた女は、そう泣きながら宣言して謝罪しました。セルフレジ不正は万引きと同じく、誰にでも簡単にできてしまうことなので、癖になってしまえば自己防衛も必要なのだと痛感した次第です。
(文=澄江、監修=伊東ゆう)
【万引きGメン・澄江さんへの質問大募集】
万引きの現場や万引きGメンについて聞いてみたいことを大募集いたします。下記のフォームよりご応募ください。