下世話、醜聞、スキャンダル――。長く女性の“欲望”に応えてきた女性週刊誌を、伝説のスキャンダル雑誌「噂の真相」の元デスク神林広恵が、ぶった斬る!
円安が止まらない。本日149円代に突入し150円も目前だ。これは32年ぶりのことだという。海外で安くお買い物! 高級ホテルで宿泊! そんな日々は遠い昔となったのか。「日本は安い!」そんな外国人観光客の声を聞くたび、複雑な気持ちになる。現在、日本人にとって海外旅行は物価も高く、まだまだハードルが高い。コロナ禍を経て、ますますドメスティックになる日本――。
第622回(10/13〜10/18発売号より)
1位「永作博美 『卑劣デマと闘争10年』夫が激怒告発」(「女性自身」11月1日号)
2位「小室圭さん 『3度目の試験落ちてもクビにならない』高笑いのドヤ顔写真 発見!」(「女性自身」11月1日号)
3位「武田砂鉄のテレビ磁石第185回 『事実に基づかない発言』を許され続ける政治家」(「女性自身」11月1日号)
こうしたデマ、差別はいつになったらなくなるのだろうか。芸能人や著名人に対する“在日認定”。事実かどうかなどまったく関係なく、気に入らない人物などに「在日」「朝鮮半島出身」などと決めつけ認定し差別する行為が、ネットを中心にさかんに行われ、社会問題になって10年以上がたつ。
そんなデマの被害に、NHK朝ドラ『舞い上がれ!』の主要キャストのひとり、・永作博美があっていたことを「女性自身」が報じている。その被害は現在に至るまで、10年近くもの長きにわたってだという。確かにここ何年か、ネットやSNSで「永作は韓国人」「父が中国人で母が韓国人」などという情報が流布されていた。
そして「自身」記事によると、最近(今年9月13日)、永作の夫がそんな状況に対し、ブログで怒りの告発をしたというのだ。
「永作博美の国籍デマ。しつこい。永作博美と韓国(ときに中国)と結びつけようとする、奇妙な運動、あの手この手で10年近い」
記事ではこうした夫の告発を紹介した上で、すでに2013年に発信者を特定するために情報開示請求も行ったこと、それでも現在まで悪質なデマは続いていること、デマが拡散されることで、それを信じる人が出てくる危惧などを紹介、解説している。
こうした芸能人に対する悪質なデマについて芸能マスコミが否定し、記事化することは大切なことだと思う。SNSだけ見ていると、それが真実だと思い込み、さらに拡散されてしまう危険性が高いから。それを少しでも阻止することに、この記事は一役買っていると思うから。
しかし記事には、なぜこうしたデマが発生し、原因や理由についての説明や分析はない。というか多くの場合、理由なんてほぼなかったりするから、追求しようがないのかも。
たとえば、15年にほっしゃん。こと星田英利が当時の安倍政権、安保法制に対し批判的投稿をすると、速攻で「在日吉本」などと在日認定され、炎上する一件があった。自分と考えが違う、そして気に入らないから在日認定する。まさに短絡的で卑劣な行為だが、しかも在日認定のやっかいなことは、それを否定すれば、今度は「差別主義者」などと批判されてしまうことだ。このときの星田もそうだった。そして星田はこうつぶやいていた。
「あのね、日本人やけど、“在日”って言う言葉に何も不快も無いよ。その言葉を差別的に使うのが許されへんだけ」
沈黙せずに批判を恐れず反論したあっぱれな星田だったが、永作もまた沈黙を選択することなく情報開示請求を行い、本人にかわって夫が在日認定に反論し告発した。
デマを放置せず、差別や悪質な印象操作に果敢に立ち向かう。素晴らしい姿勢だし応援したい。それを記事化した今回の「自身」も。
と思ったが、やめた。永作は応援するが「女性自身」は別かも。だって舌の根も乾かぬ同じ号の「女性自身」には、結構ひどい印象操作記事が掲載されているから。
それが小室圭さん関連記事だ。内容は以下のようなもので、特に問題のあるようなものではない。
小室さんが勤務していているニューヨークの法律事務所。そのウェブサイトに小室さんの写真が掲載された。これまでスタッフや弁護士のなかで小室さんだけ“顔写真ナシ”だったが、突如小室さんの顔写真がアップされた。その理由として、小室さんの司法試験の合否に関わらず今後も契約を続行するという、事務所の意思表示が考えられる。
そして、もうひとつの理由が、眞子さんという元内親王の夫として小室さんの存在にメリットを感じているからではないか、というものだ。
このように、記事の中では小室さんに対する無理やりな批判や揶揄はない。そして新たにアップされたという小室さんの顔写真が掲載されている。それだけだ。なのにタイトルは――「高笑いのドヤ顔写真」――って。
確かに小室さんの写真は笑顔だ。にこやかに優しそうに笑っている(と思う)。清楚な好青年(に見える)! もちろん個人の感覚の違いもあるだろうが、これを“高笑いのドヤ顔”って言うのは、どうみても言いすぎじゃないか。またしても小室さんを貶めたいという編集部のいやらしい情報操作としか思えない。悪意満点だ。
気鋭のコラムニスト・武田砂鉄によるテレビや人物時評連載「テレビ磁石」。いつも、うんうんとうなずきながら読んでます。そして今回も!
今回のテーマは『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日系)でコメンテーターの玉川徹氏の発言について。ご存じのように玉川氏が安倍晋三・元首相の国葬における菅義偉・前首相の弔辞について「当然、これは電通が入っていますからね」と発言、しかし、これが事実に基づかない発言だとして謝罪し、出勤停止10日間の謹慎処分になってしまった。これについて武田氏はこうつぶやく。
「『事実に基づかない発言』で処分が下される光景を久しぶりに見た」
そしてこの数カ月、統一教会問題で「事実に基づかない発言」を繰り返す政治家たちはなんら処分されないことを指摘していく。さらに政権与党ではなく野党に対し、「事実に基づかない」批判をした『めざまし8』(フジテレビ系)司会の谷原章介は“ただ謝っただけで”済んだことも例に挙げて、こう疑問を投げかける。
「政権批判の一環で事実に基づかない発言をした玉川は懲戒処分。野党批判の一環で事実に基づかない発言をした谷原は謝罪。自分たちに向けられた批判をひっくり返すために事実に基づかない発言をした世耕(弘成参院幹事長)はそのまま放置。なんでだろう。なんで、政治家だけが『事実に基づかない発言』を許されるのだろう。そして、なんで私たちは、それを許してしまうのだろう」
「事実に基づかない発言」をしてもなんら処分されない政治家(公人)たちと、一方で「事実に基づかない発言」で処分される政権批判のコメンテーター(民間人)。おっしゃる通り、不条理としか言いようがない。こんなことが許され続けたら、やりたい放題の権力者のもと、政権批判など許されない独裁国家のようになってしまう……。