• Fri. Dec 2nd, 2022

チャールズ新国王は「スキャンダルを操る男」か――息子・ヘンリー王子を“利用”せざるを得ないワケ

 「皇族はスーパースター」と語る歴史エッセイストの堀江宏樹さんに、歴史に眠る破天荒な「皇族」エピソードを教えてもらいます! 今回から全3回は、新国王が誕生した英王室について聞いていきます。

――新英国王チャールズ3世の戴冠式が、来年5月6日に決定しましたね。

堀江宏樹氏(以下、堀江) しかし、この日は王室批判を続けるヘンリー王子の長男アーチーくんの誕生日でした。ヘンリー王子がこの日を盛大に祝う習慣があると知りながら、まさにその日に戴冠式をぶつけてきたということは、チャールズ王がヘンリー王子に「ある選択」を迫っているように見えます。

 戴冠式という王室の主要行事を取るか、息子の誕生パーティという私生活を取るか。後者を選ぶなら、ヘンリーは王室から完全に見放されることになりそうです。そもそも、チャールズ王がヘンリー王子を戴冠式に招待自体しないのではないかという臆測もありますが。

――これまでチャールズ王は何かと反抗的なヘンリー王子にも一定の理解を示し、なおかつ経済的にも何億円という額を自身のポケットマネーから援助してきたことは知られていますね。しかし、ヘンリー王子は王室批判を強め、日本円にして145億円を超える巨額と引き換えにNetflixと番組配信の契約をするなど、問題行動がエスカレートしています。それも、経済的援助を断ち切られたことを理由に強まった父親への反感ゆえのようですが。

堀江 保守的な英王室のあり方に、一人の人間として反抗姿勢を明らかにした故・ダイアナ妃を、ヘンリー王子とメーガン妃はマネしすぎた気がします。チャールズにとってダイアナは、性格も価値観も合わずトラブル続きの結婚生活の末に別れた妻にすぎませんから。

――エリザベス女王はチャールズと離婚した後もダイアナに「殿下」の称号を許す……つまり王室のメンバー同然に扱い続けようとしていたとか。将来、国王となるであろう孫のウィリアムや、その弟のヘンリー王子の母親が非・王室関係者になってしまうことを危惧したのでしょうね。

堀江 しかし、チャールズがこれに猛反発し、取り消させたそう。チャールズは、従来の王室の子育ての伝統どおり、自分と距離を置いていた若い頃の両親、とりわけ母親の冷淡さを批判していましたが、いざとなると自分自身がルールブックのような冷たさを発揮する性格の持ち主だったようですね。

――女王が子育てに積極的ではなかった、冷たかったと言っているのはチャールズだけで、彼の妹弟たちは「自分たちのときはそうではなかった」と兄に反論しています。

堀江 チャールズ王はかつて母親を批判しましたが、今度は息子のヘンリー王子から冷淡だといわれる側になる……これはひとつのドラマですよね。

堀江 王室から出ていきながら、王族扱いをしてほしいと要望するヘンリー王子について、チャールズが暫定的にも恩情的だったのは、故・エリザベス女王の方針に従っていただけで、そしてそれが国民からの受けがよかったから、仕方なくという感じでもあるのでしょう。

 しかし、本心ではヘンリー王子のことは、かなり前から見切っていたとも思われますね。金銭援助は、これ以上、問題行動を取られないため、ヘンリー王子を飼っているくらいの考えだったと思いますよ。

――飼っていた、とは言葉にするとなかなかショッキングですが……。

堀江 ダイアナとの離婚で人気が地に落ちたチャールズですが、ここ数十年かけてジワジワと人気を回復してきています。その鍵となったのが、彼の個人秘書で、メディア対策に強いマーク・ボランドという男性で、90年代後半から、チャールズ王は「スキャンダルを操る男」として認識されるようになりました。これは2002年1月30日号の「Newsweek」(CCCメディアハウス)の記事タイトルにもなっています。

 この記事では、当時17歳のヘンリー王子がチャールズ所有の屋敷の中でマリファナを吸って飲酒したことを報じられたことについて、本来なら大スキャンダルになるところを、その芽を摘み取り、「つい魔が差した息子を立ち直らせるように仕向ける良きパパ」のエピソードとして、粉飾した記事を別メディアに書かせた……などと報じられています。息子でさえも、自分のために利用していたわけですね。

――しかし、今回、ヘンリー王子を切り捨てるとなれば、チャールズ王を非情と捉える国民もいるのでは?

堀江 もちろんいるでしょう。しかし、イギリス人にヘンリー王子、そしてメーガン妃の人気はもはやありません。しかも彼らの人気は落ち続けています。こうなると、そんな人物を(実の子とはいえ)恩情的に見守っていると、自分の人気まで落ちてしまう……そう、チャールズは判断したのでしょう。

 そもそも国王とは正義を体現すべき存在です。しかし、近代以降の国王は「君臨すれども統治せず」といわれ、政治的な存在ではありません。政治に関するアクションは取りにくいのです。

 では、どうやって自らの正義を証明するかといえば、その方法の一つが、スキャンダルを出した身内と関わることなのだと思います。見守るのか、断罪するのか。スキャンダルメイカーであるヘンリー王子とメーガン妃を制御することができるのかどうかによって、新国王としての正義と手腕が今、試されようとしているのです。

――自分が国王としてふさわしい存在であるかを世界に証明するために、息子を利用ということでしょうか?

堀江 そうですね。もちろん本当の理想は、ヘンリー王子が王室批判などしない人物に育つことでした。しかし、そうはならなかったので、正義を体現すべき国王としては、反乱分子であるヘンリー王子に、宣戦布告せざるを得ないというあたりでしょう。

 ヘンリー王子も焦って、Netflixにペラペラとしゃべった英王室批判……とりわけ父であるチャールズへの批判を取り下げようとしていると報道されていますが、事実ならば、あまりに無様ですよね。

――日本の皇室でも、今上陛下に対し、弟宮である秋篠宮さまがときに批判めいた言葉を口になさることがありましたね。

堀江 王室・皇室内の兄と弟の関係は難しいですよね。つねに対比されて扱われてしまいます。性別、そして立場や年齢が近いだけで、比較対象になることもしばしば。しかも「優等生ウィリアム王子」と、「自分の思うがままに生きてしまうヘンリー王子」というように極端な形で対比されがちです。

 日本でも国民の反対を押し切って、小室さんと結婚した眞子さまの後では、高額なティアラの製作を辞退したという愛子さまが「理想の内親王」として人気を得ました。

 自分や身内の人気・不人気に戦略的に向かい合わざるを得ないのが、現代の王室・皇室の方々だといえるでしょう。