今は亡き某指定組織の三次団体幹部の妻だった、待田芳子姐さんが語る極妻の暮らし、ヤクザの実態――。
100人大乱闘でも被害届は出されていない
10月16日、東京・池袋の高層ビルのレストランで「半グレ100人による大乱闘事件」があったことが報道されていますね。
でも、報道をよく読むと、「100人」とはレストランの貸し切りの人数で、実際にケンカをしたのは、報道機関にもよりますが十数人程度のようです。
だいたいガチで100人がケンカしたらお店が壊れちゃいますが、お店はすぐ営業を再開していますし、救急搬送されたのは1人だけです。しかもこの方は軽傷で、病院からずらかっているそうです。ほかにも何人かケガをされているとの目撃談がありますが、いずれにしろ軽傷でしょう。
そして、店員さんにケガがなかったのはよかったですが、お店が被害届を出していないんですね。それって、「たいした事件ではない」ということですよね。テーブルがひっくり返ってたとか、ビール瓶が割れてたとか報道されていますが、逆に言えばそれだけで、「捜査には協力するけど、それ以上は……」みたいなところですかね。
ビール瓶を割るくらいなら、ヤクザでなくてもやってるのに、なぜこんなに大きく報道されてしまったのでしょうか?
やはり貸し切りにしていた団体が半グレで、暴対法上の「準暴力団」指定を受けている怒羅権(ドラゴン)だと報道されているからでしょう。
同じ組織でもみんな仲悪い
怒羅権の関係者の放免祝い(=刑務所の出所祝い)が行われているところに、何人かの男が入ってきてケンカになったとしている記事もあります。
要するに宴会中のケンカということで、こんなの昔はヤクザでも普通にありました。同じ組織でもみんな仲悪いですから、お酒が入れば「テメー、コノヤロー」になってしまいます。もともと品行方正な人たちではないですしね。「代紋」のもとに集結する美学みたいなものはあったんで、同じ組織にいるんですけど、シノギやカノジョを盗った盗られたと、いろいろあるわけです。
今は、山口組などは放免祝いどころか5人以上で集まることもダメなので、レアな「100人で放免祝い」はニュースバリューがあったということかなと思います。
作家の宮崎学さんは、「『暴力団』として排除しても、すぐに『より悪いもの』が出てくる」と指摘されていましたけど、まさにそういうことではないでしょうか。
インターネット上では、怒羅権について「中国へ強制送還しろ」みたいな意見も目立ちますが、大半のメンバーの親御さんが中国残留孤児で、日本人ですよ。
中国では「日本人は日本に帰れ」と言われ、日本に来たら「中国に帰れ」とか言われて、ずっと差別されてきた人たちです。これで「不良になるな」ってほうがムリなんです。
差別と貧困がこういうグループやヤクザを生んできたってのは、元極妻が書くまでもないことですが、怒羅権については、創設メンバーの一人である汪楠(ワン・ナン)さんのご本をぜひ読んでください。
とはいえ怒羅権の構成員の正確な人数やプロフィールは、誰にもわかりません。警察も把握しきれないので、「準暴力団」指定団体なのに、何の規制もできないのです。
怒羅権に限らず、半グレは日本の指定団体のように盃を交わして警察にもあいさつに行くようなことはしないので、把握のしようがないんですね。
今となってはヤクザも盃はあまりやってないようですが、「俺は怒羅権だ」と言ったら、その人はもう怒羅権のメンバーだそうです。
あと、ヤクザは一応「18歳以上」ですが、怒羅権にはそういうのもないようです。これも半グレと呼ばれるグループの特徴で、犯罪のためだけに集まってくるので、未成年や女性が加わることもあるのだとか。
ヤクザを排除したことで、警察も実態を把握しにくいモンスターのようなグループが出てきたといっても過言ではないかなと思います。これからはもっとすごいのが出てくるかもしれませんよ。