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PTA役員の他薦アンケートに名前を書かれた! 推薦委員から突然の電話……“犯人”は保育園のママ友だった

「子ども同士の付き合い」が前提のママ友という関係には、さまざまな暗黙のルールがあるらしい――。ママたちの実体験を元に、ママ友ウォッチャーのライター・池守りぜねが、暗黙ルールを考察する。

 10月になると、小学生の子どもを持つママたちの間では、よく「PTA役員の選出」が話題に上がる。推薦委員と呼ばれる委員によって、PTA役員、委員を保護者から選出する作業が開始されるのだ。

 そもそもPTAの活動への参加は保護者の任意とされているが、入学前の説明会などで入会申込書などが配布され、自動的に加入する場合がほとんどだろう。PTAの中核を担う本部と呼ばれる組織には、会長、副会長、会計、書記や庶務と呼ばれる「役員」がそれぞれ1~2名ほど選出される。それ以外に、各クラスで選出されるのが、委員会の「委員」だ。

 子どもの在学中に一度は役員か委員を引き受けなくてはならない場合、運営の中心である本部の役員は負担が大きいため、「それに比べれば楽」な委員を希望する保護者は多い。

 今回は、PTAの役員選出で、「“暗黙のママ友ルール”を無視されてしまった」という、あるお母さんの話を取り上げる。

小学校のPTA活動は難しい、地方出身&フルタイム共働きママの本音

 地方銀行で窓口業務を担当している八重子さん(仮名・33歳)は、今年小学3年生になる女の子のママ。同い年の夫はスマホのアプリを開発する企業でエンジニアをしている。

「大学時代の同級生と、卒業後に結婚しました。子どもは2人ほしかったのですが、実際に産んでみると、無理だなって。共働きだと1人産んで育てるのが精いっぱい。平日は仕事に家事、子どものことで大忙しで、夜にはくたくたになっていますね」

 八重子さんは育児休暇を1年取り、復職後はしばらく時短勤務をしていたが、娘が小学校に入学後はフルタイム勤務に戻ったという。自身も夫も地方出身のため、お互いの両親には子どもを預けられず、とにかく毎日時間がないと話す。

「うちの職場は、結婚や出産を機に退職する女性が多いため、子持ちの30~40代女性社員が極端に少なく、会社にこの大変さを理解してもらえないんですよ。フルタイム勤務だと残業もあるし、とてもじゃないけれど、小学校のPTA委員などの活動は難しいって思ったんです」

 PTA活動が行われる時間帯は、平日の授業後がメインだ。学校行事にまつわる準備やベルマーク集めなど、実際に保護者が集まらないと行えない業務が多いため、欠席はできないという暗黙のルールがある。

「去年の9月の終わり頃に、娘が学校からアンケート用紙をもらってきたんです。PTA役員を選出するためのアンケートで、『役員にふさわしいと思う生徒の保護者の名前を書いてください』とのこと。娘が入学した2020年はコロナ禍だったので、選出工程が行われることなく役員もほぼ前年度の人が続投。でも去年は、役員をしていたママの子どもが卒業することもあって、メンバーが入れ替わるタイミングだったんです」

 アンケート用紙に名前を書かれると、推薦委員会の委員から突然電話がかかってくるというが、八重子さんの元にも連絡が来たそうだ。

「私の名前がアンケートに書かれていたそうで、本部の役員を引き受けてほしいと言われました。あのアンケートは『該当者なし』で出してもよかったはずなのに、『なぜ?』とびっくり。そもそも娘が1年生の時は、コロナ禍で学校行事がほとんどなくなり、運動会も無観客、保護者会も1回のみ。ほぼ新しいママ友ができなかったんですが……。もしかしたら、名前を書いたのは同じ保育園のママかなって気になりました」

 八重子さんの娘と同じ保育園出身の子は2人いるという。

「2人いるママ友のうち、1人はLINEでやりとりする間柄でした。まるで犯人捜しみたいで後ろめたくもあったんですが……どうしても気になって『PTA役員の他薦アンケートって、誰かの名前を書いて出す人いるのかな?』と話を振ってみたんです。そうしたら、そのママ友が、まさかの私の名前を書いたって言うんですよ! 誰かの名前を必ず書かなきゃいけないと思ったみたいで、『ほかに知っている人がいなかったし、八重子さんはしっかりしているから向いていると思った』という返信が来たので驚きました……」

 アンケート用紙に名前を書かれても、それだけで役員に任命されるわけではない。もちろん断る自由もある。しかし、新たな役員が見つからない場合、推薦委員自身が役員になるケースもあるため、押しが強いという。

「まずは役員がどのような作業をしているかを知ってほしいと、見学会に参加するよう勧められました。断れなくて見学したのですが、推薦委員から『平日の夕方を使って作業するから、仕事とも両立できる』『もし仕事でどうしても参加できない日があっても、ほかの人がカバーするから大丈夫』と熱心に勧誘されましたが、正直、無理って思いました。でも『今はコロナ禍で役員が集まって作業を行うことが普段より少ない。役員をやるなら今がチャンス』と言われ、結局、簡単そうな書記を引き受けたんです」

 八重子さんは、役員になったのは自分の意思というが、ママ友に名前を勝手に書かれたことに対してはモヤモヤが収まらない。

「ママ友が悪いわけではないのはわかっているんです。顔も名前も知らない保護者が多い中、他薦アンケートに必ず誰かの名前を書かなきゃいけないと思い、知っているママ友の名前を書いてしまった……というのも想像できます。でもやはり書かれたほうはすっきりはしないですよね」

 PTA役員になりたいという保護者は少数だけに、八重子さんは「むしろ『仲のいいママ友のことは他薦しない』のが、暗黙のルールだと思っていました」と語る。

「別の小学校に子どもを通わせているママ友にこの話をしたら、『うちは他薦アンケートに名前を書けという圧が強いんだけど、仲良しのママを推薦するなんてあり得ない』と言っていました。他薦アンケートは、誰が誰の名前を書いたかは明かされないのですが、やっぱり『誰に書かれたんだろう』とモヤモヤしたし、この形式はやめたほうがいいと思うんですよね」

 PTA役員を決めるため、他薦アンケートが行われている学校は少なくない。母親のほとんどが専業主婦かパートタイマーだった時代とは違い、フルタイムの正社員というママも多い現代では、他薦によって役員を引き受けざるを得ない状況は、「絶対に避けたい」ことなのだろう。

 自分が役員に選出されるのを回避するためには、別のママの名前を書くのが手っ取り早いが、やはり後ろめたさから、可能な場合は「無回答」で出す人は多いのではないか。しかしそうなると、アンケートの意味をなさないので廃止になってもいいと思うが、長年続くやり方を変えるのはなかなか難しいこと。保護者が結束して声を上げなければ実現しないだろう。

 現状では、やはり親しいママ友の名前をPTA役員に推薦してはいけないのが“暗黙のルール”ではないか。「役員をやってみたい」と明確な意思表示をしているママならいいが、特に共働き家庭のママが役員を務めるのは、あまりにも負担が大きすぎるだけに、やりたがらない人が大半だろう。

 八重子さんのように、ひょんなことから誰が誰を推薦したかバレた場合、ママ友とのいさかいも生じやすい。PTAの他薦という制度自体が変わるまでは、アンケート用紙には何も書かないのも手かもしれないが、PTAの役員・委員決めは「揉めないことがない」ものだと、あらためて思った次第だ。