11月11日、『君の名は。』(2016年)や『天気の子』(19年)で知られる新海誠監督が手がけるアニメ映画『すずめの戸締まり』が封切られた。公開初週の土日を終え、映画情報サイト「Yahoo!映画」では、2,000件以上のレビューコメントが寄せられており、5点満点中「3.9点」を獲得(13日8時時点)するなど、まずまずの評価を得ている。
同作は、日本各地の廃墟を舞台に、災いの元となる「扉」を閉めていく旅をする少女の“解放と成長”を描いたロードムービー。九州で暮らす女子高校生・鈴芽(原菜乃華)はある日、扉の“向こう側”から災いが訪れることを阻止するべく、扉を閉めて鍵をかける“閉じ師”の青年・草太(SixTONES・松村北斗)に出会う。導かれるように“戸締りの旅”に出た鈴芽は、各地での出会いに助けられながら、忘れ去られていた“ある事実”にたどり着く――という物語だ。
ヒロイン・鈴芽役に抜てきされた原は、1,700人を超えるオーディションを見事勝ち抜き、アニメ声優に初挑戦。また、草太役の松村も同様に、実力派から有名俳優まで数多くの声を直接聞いた新海監督によって見いだされ、声優デビューを果たした。
早くもネット上では、映画を見た人から「原さんと松村さんの声質と演技が良くて……本業かと思うくらい2人ともうまくてびっくり」「声優初挑戦とは思えなかった」「全然違和感なく物語に入り込めました」と原と松村を絶賛する声が続出。
なお、同作には2人同様、今回初めて声優に挑んだ鈴芽の叔母役の深津絵里や、草太の友人役で『君の名は。』で主人公・立花瀧を演じた神木隆之介のほか、染谷将太、伊藤沙莉、松本白鸚ら豪華な顔ぶれが集結。「俳優陣みんなうまかった」と、キャスティングの秀逸さを称える意見も寄せられている。
というのも、過去、『君の名は。』では神木のほか上白石萌音がヒロイン・宮水三葉役で出演。『天気の子』では醍醐虎汰朗が主人公・森嶋帆高、森七菜がヒロインの天野陽菜をそれぞれ演じ、「表現力が豊か」などと大きな話題を呼んだ。
声優業界関係者は両作に出演した俳優たちの演技を、以下のように振り返る。
「『君の名は。』の神木と上白石は、二人とも非常に上手な芝居をしていましたよ。本業ではない俳優が声を当てると、どうしても違和感が生じてしまうことがありますが、彼らの演技はとてもナチュラルで、最後まで作品に没頭できましたね。特に上白石の芝居がとてもよく、可愛らしい三葉のキャラクターが存分に表現されていました。神木もスタジオジブリ作品でアニメ声優を多数経験していますし、そつなく演じていた印象。二人とも演技のレベルが高かったと思います」(声優業界関係者)
また、『君の名は。』は出演者の芝居以前に、作品自体の評価も非常に高く、アメリカの映画興収データサイト「ザ・ナンバーズ」の発表では、17年1月時点で全世界興行収入約379億円を記録。ジブリ映画『千と千尋の神隠し』(01年)を抜いて、日本アニメ歴代1位に躍り出た。その後、全世界興収約515億円をマークした『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』(20年)にその座は奪われたものの、日本の映画史に残る大ヒット作となった。
「『君の名は。』という高いハードルを越えるため、醍醐と森は、神木と上白石の演技を意識したのか、2人の芝居にそっくりなんです。もしかすると、新海監督がそれを求めたのかもしれませんが、彼らの個性が存分に発揮されず、『この芝居なら、神木と上白石でもよかったのでは?』と思わせられる仕上がりだったのが残念でした」(同)
なお、『天気の子』では、帆高が務める編集プロダクションの社長役に小栗旬、そこで働く女子大生役で本田翼が出演。ネット上では「セリフが棒読み」「醍醐と森より演技がヘタ」などと批判的な声も上がっていたが、前出の関係者も「ファンに媚びていた」と厳しく評価する。
「小栗と本田の演技も、そこまでよかったわけではないため、本業の声優を起用してもよかったのではないかと思いますよ。『天気の子』が上映されたのは19年。もし今公開するのであれば、小栗のような俳優をキャスティングしなくても、近頃顔出しでのドラマ出演が続き、ある程度集客も見込める津田健次郎に演じさせたほうがよっぽど良い作品になったと思います。ただ一方で、刑事役に起用された人気声優・梶裕貴は、正直、作品にミスマッチだったと感じました。『天気の子』は、俳優・声優のそれぞれのファンを意識しすぎた結果、キャスティングに失敗した印象があります」(同)
『すずめの戸締まり』に出演している松村は、ジャニーズの人気グループ・SixTONESのメンバーでもあるため、今作も「ファンに媚びる」という点では『天気の子』と共通しているといえるだろうが、「うまくハマっていると感じる」(同)とのこと。
果たして『すずめの戸締まり』は、作品として『君の名は。』『天気の子』の評価を超えることができるのか。火曜日に興行通信社から発表される「国内映画ランキング」の結果も含めて、今後の動向に注目だ。