• Sat. Jan 28th, 2023

『ザ・ノンフィクション』犯罪被害者家族を誹謗中傷する人とは?「美咲をさがして ~帰りを信じた家族の3年~」

 日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。12月4日は「美咲をさがして ~帰りを信じた家族の3年~」というテーマで放送された。

『ザ・ノンフィクション』あらすじ

 千葉県でトリミングサロンを営む小倉とも子。とも子の娘、美咲さん(当時7歳)は2019年9月、山梨県道志村のキャンプ場で行方不明になった。警察、自衛隊のべ1,700人以上(1日最大300人)が動員される捜索が行われたが、有力な手掛かりは見つからないまま、16日間で大規模捜索は打ち切りになる。

 とも子はその後も、千葉から道志村を何度も訪れ捜索を続けた。毎日保育園の送迎をしていた車で美咲さんを迎えに行ってあげたいという思いから、とも子は今も同じ車に乗っており、その走行距離は13万キロを超えている。

 とも子は情報提供につながればとビラを配り、マスコミのカメラの前に立ち続けるのだが、そんなとも子を真犯人扱いするような中傷も届く。とも子のSNSのダイレクトメールと思われる画面には「早く自主しろや 殺してやる」(自首の誤りと思われる)「殺す」の連投など、見るに堪えない暴言が並んでいた。とも子は「普通の人が普通にすることをするだけで、人に何か言われる3年間だった」と話す。

 誹謗中傷する人たちが自宅に来る危険性から警察に避難を勧められるが、とも子は美咲さんを「自宅で迎えたい」と、自宅で暮らし続ける。

 美咲さんが行方不明になり、小倉家の家族の暮らしも一変したよう。もともとは、とも子と夫、長女、次女である美咲さんの4人暮らしだったと思われるが、夫はふさぎ込むこともあったという。明言はしていなかったものの、今は夫と一緒に生活していないようだった。

 また、とも子と一緒に暮らす長女は、美咲さんの行方不明以降、学校には行けたり行けなかったりの状況。「友達とうれしい話とか楽しい話をしていると、その時、美咲のことを考えていない自分がいて」と、その罪悪感を泣きながらとも子に話していたという。

 美咲さんの帰りを待ち続けたとも子だったが、22年4月、美咲さんが行方不明になったキャンプ場から500m離れた場所で、子どものものと思われる骨が見つかり、翌月には美咲さんが当時履いていたものと同じ靴が発見される。そして、発見された人骨はDNA鑑定で美咲さんのものと一致した。

 鑑定直後は、「まだあきらめていない」と話すとも子。捜索ボランティアとともに人骨が発見された枯れ沢を登るが、苔むす岩場で、斜度もきつい場所だった。とも子には警察から、美咲さんが尾根から転落した可能性も伝えられていたものの、その尾根に至る道も40度近い急斜面。枯れ沢も、尾根に向かう道も7歳児が1人で歩くにはかなり険しい道のりであり、捜索に参加した元刑事のボランティアは、美咲さんが事件に巻き込まれた可能性について話していた。

 その後、とも子は情報提供用として開設したホームページに、捜索に参加してくれた人々への感謝と、美咲さんについて「『守ってあげられなくて本当にごめんなさい。帰ってきてくれてありがとう。お帰りなさい。』と伝えたい」と綴る。番組の最後、とも子は、美咲さんが戻ってくるまでと願かけで伸ばしていた髪を切り、「前を向いて時間を過ごしていきたいと思っています」と語った。

『ザ・ノンフィクション』どういう人が誹謗中傷をするのか

 とも子は、ネット上で誹謗中傷した相手を訴えており、名誉棄損の有罪判決が下りた71歳男性は、こういった事件にしては珍しく、被告の実名も報道されていた。二審の結審後も被告は「おかしいでしょ、今回の事件」と発言するなど、反省している様子は見えてこない。

 うんざりするような誹謗中傷がある一方で、とも子の長女のある発言に、筆者は「表現力がすごい」と感じた。美咲さんの死を受け入れなくてはならないという心境になったであろうとも子が、お彼岸の日、特攻兵だったとも子の祖父の話を車中でしようとした際、長女が「言い方悪いけどそういう話、今いい!」と叫び、助手席でフリースの毛布にくるまるシーンだ。

 死について今は考えたくないとの思いを伝えたのだが、その前に「言い方悪いけど」とフォローもしている。他人も自分も大切にした発言であり、長女の聡明さを感じた。

 美咲さんを失う、という大きな悲しみと苦しみと理不尽を味わった小倉家の人たちが、死を受け入れた後、「普通の暮らし」をすることにも罪悪感を覚える、という“第二の矢”が刺さり続けていることがつらい。願うことしかできないが、小倉家の穏やかな時間が増えることを祈ってやまない。

 次週は「ラブレターを書く人~愛を伝えない人々と代筆屋~」。令和の時代に「手紙」で思いをつづるラブレター代筆屋・小林慎太郎。多感な若者からの胸キュンラブレター代筆依頼が多いのかと思いきや、実態は結構違うようで……。