新海誠監督のファンタジー長編アニメーション『すずめの戸締り』が、全国の映画館動員ランキング(興行通信社調べ、11月19日~11月25日)で3週連続1位に輝いた。同作は公開17日間ですでに動員460万3925人、興収62億6931万円を突破。年末年始にかけ、今後どれだけ数字を伸ばせるかに注目が集まる。
11日に全国420館(IMAX41館含む)で公開された同作は、東宝が発表した満足度調査でも94.5%と高い数値を記録。比較的年齢層の高いユーザーが多いレビューサイトや口コミサイトなどでは、少々辛口なコメントが目立つものの、SNSでの評価は文句なしに高い。すでに世界199の国と地域での配給も決定しており、海外でもヒットを記録するようなことがあれば、それを追い風に、国内での興収をさらに伸ばすかもしれない。
2位は2018年に公開され、大ヒットを記録したマーベル原作のアクション超大作『ブラックパンサー』の続編『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』。同作は公開17日間で動員70万592人、興収10億8701万円を記録。世界的な話題作ではあるが、「黒歴史級につまらなかった」「戦闘シーンが絶望的につまらない」など、ネット上では“つまらない”という意見が目立つのが気になるところ。
3位には、芥川賞作家・平野啓一郎氏の同名ベストセラー(文春文庫)を映画化した『ある男』が入った。同作は、夫が素性を偽っていたことを死後に知った女性からの依頼で、その男の身元調査に乗り出した弁護士が、少しずつその正体に迫っていくヒューマン・ミステリー。主演は妻夫木聡で、安藤サクラ、窪田正孝、柄本明ら実力派の俳優たちが脇を固める。
ロングラン中のアニメ『ONE PIECE FILM RED』は4位にランクイン。こちらは公開116日間で興収185億3835万円を突破。相変わらずリピーターも多く、子ども連れの観客が増える年末年始に、興収200億を突破する可能性も出てきた。
そして、5位は戸田恵梨香、永野芽郁出演のミステリー作品『母性』。人気作家・湊かなえ氏の同名ベストセラーを映画化した同作は、自分の母親を愛しすぎるあまりに娘を愛せない母親と、そんな母親から愛されたいと願う娘が織りなす“母性”をめぐるすれ違いを描いている。
狂気を感じる戸田の演技や、高畑淳子の存在感が話題だが、ミステリーやサスペンス要素は控えめで、湊氏の原作ファンからは賛否両論。レビューサイトでは、永野が戸田の娘という設定に「違和感がある」といった声も見られる。
6位には人気WEB小説『転生したらスライムだった件』の劇場版アニメ『劇場版 転生したらスライムだった件 紅蓮の絆編』が入った。完全新作として原作者の伏瀬氏がストーリー原案を担当、スライムとなって異世界に転生する元サラリーマンの活躍を描く。7位には公開7週目となる橋本環奈主演のホラー『カラダ探し』が入った。
そして、8位と9位には洋画がランクインしている。8位の『ザ・メニュー』は、実力派俳優レイフ・ファインズ、売り出し中のアニャ・テイラー=ジョイ、ニコラス・ホルトが出演する異色のサスペンス。9位は、日本でも話題になったディーリア・オーエンズのベストセラーを、敏腕プロデューサーのリース・ウィザースプーンが映画化した『ザリガニの鳴くところ』。同作はアメリカ南東部の湿地帯を舞台に、殺人事件の容疑者とされる少女の過酷な生い立ちと淡い初恋の行方を描いたミステリー作品だ。
10位には沢田研二と松たか子が出演する人生ドラマ『土を喰らう十二ヵ月』が入った。原作は、幼い頃に禅寺で精進料理を学んだ作家・水上勉氏が、その記憶をもとに、料理と日本の食文化に思いを巡らせるエッセイ本。74歳で主演を務めた沢田の演技が話題となっており、SNSでは「めちゃくちゃ良かった!」「老成したジュリーさんの姿にほっこり」「ゆったりした時間を楽しめました」と評価されている。
【全国映画動員ランキングトップ10(11月19日~11月25日 、興行通信社調べ)】
1位 すずめの戸締り
2位 ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー
3位 ある男
4位 ONE PIECE FILM RED
5位 母性
6位 劇場版 転生したらスライムだった件 紅蓮の絆編
7位 カラダ探し
8位 ザ・メニュー
9位 ザリガニの鳴くところ
10位 土を喰らう十二ヵ月