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千鳥、かまいたちら「お笑いエリート」を輩出! 関西の“なぜか長寿番組”トミーズの『せやねん!』をホメゴロス

ByAdmin

12月 13, 2022 #コラム

テレビ・エンタメウォッチャー界のはみ出し者、佃野デボラが「下から目線」であらゆる「人」「もの」「こと」をホメゴロシます。

【今回のホメゴロシ!】ほとんど放送事故! 芸人・トミーズ雅が「お笑いガンジースタイル」を貫いた『せやねん!』7時間半SPのたまらないスリリングさ

 世の中には、「なぜこの番組がこんなに長い間続いているんだろう? 一体どこに需要があるんだろう?」と首を傾げた直後に、「まあ、誰も『終わりにしましょう』って言えないのか。ですよねー」と自己解決してしまう番組がある。その2大巨頭といえば、東の『アッコにおまかせ!』(TBS系)と、西の『せやねん!』(毎日放送)ではないだろうか。

 和田アキ子の冠番組『アッコにおまかせ!』は36年、トミーズがメイン出演者を務める『せやねん!』は21年と、いずれも(どこに需要があるのかわからないまま続く)長寿番組であり、2番組とも、番組のトップに立つタレントが、能力的に“老年期”に突入して久しい。どちらも、共演者である後輩芸人やほかのタレントたちの支えがあって、やっとこさ成立していると言っていい「介護タイプ」のバラエティ番組だ。

 そんな「なぜか長寿番組」の西の横綱『せやねん!』は、毎週土曜日の午前9時台から午後1時前まで放送されており、生活情報や街ネタを中心に、大阪吉本の若手芸人たちがショートコーナーやロケを受け持つ。休日の朝、遅めに起きて「おでかけ」するまでの間、ゆる〜く視聴するタイプの番組ということだろう。

 しかしこの番組のあなどれない点は、中川家、フットボールアワー、ブラックマヨネーズ、チュートリアルら、M-1優勝者を輩出しているところだ。さらに元レギュラーには、売れない時代から出演し、当番組の、主にロケで腕を磨いて巣立っていった千鳥、かまいたち、和牛、ミキなどがいる。

 つまり関西で『せやねん!』は、若手芸人の登竜門として広く認知されており、このあたりも「長寿番組」の理由なのだろう。だからこの番組に出演する若手芸人は、少しでも爪痕を残そうと、どんなにゆる〜い街ブラロケであろうと手を抜かない。しかし、番組全体に漂う「ゆるさ」に乗じて、文字通りほぼ「何もしない」芸人がいる。

 それが、メイン出演者であるトミーズ、雅と健なのである。はっきり言って2人とも「スタジオに遊びに来て、目についたものの感想を言って帰っていくおじいちゃん」でしかないのだ。

 そんな『せやねん!』が、去る12月3日に、『せやねん! 特別編 お初やねん7時間30分SP』と題して、スペシャル番組を放送したと聞き、「トミーズ雅ウォッチャー」を自称する筆者は、映像を取り寄せて見てみた。

 来年で結成40年を迎えるトミーズを祝い、当SP番組には明石家さんまがゲスト出演、さらに、売れてこの番組を巣立っていった千鳥、かまいたち、ミキが出演した。まず、千鳥、かまいたちを迎えてのそれぞれのトークコーナー。一応トミーズが「ホスト役」であるからして、それなりの振る舞いがあってしかるべきなのだが、やはり「何もしない」。これは「芸人として」何もしない、という意味だ。トミーズ発信の「笑い」がひとつとして存在しない。存在しないどころか、笑いのセオリーさえも理解していない様子だ。このレベルの「お笑いガンジースタイル」は、前代未聞だ。吉本の「お笑い年金受給者」西川きよしでさえ、もう少し「笑い」に対して能動的といえるだろう。

 健が、千鳥・大悟から「フリ」「ボケ」「のっかり」「ツッコミ」のルールを一から説かれるという、およそ芸歴40年の芸人とは信じ難い瞬間があったが、これは逆に面白かった。そして何といっても、千鳥の懐柔術である。「先輩の懐に入って、怒られないぎりぎりのところまでイジる」「そのうえ可愛がられる」という、高等テクニックにあらためて感心した。そりゃ売れるわ。

 しかし当のトミーズ、特に雅はというと、「ただ昔話をしに来たおじいちゃん」「過去の栄光を部下に言って聞かせるおっさん」「『大悟と濱家(かまいたち)にはよ〜う金貸したなあ〜』bot」でしかなかった。いやはや、すごい。雅の「おもんなさ」ときたら、「大阪時代の千鳥がよくロケをしていた京橋あたりで昼間から呑んでる一般人のおっちゃんのほうがよっぽど面白いことを言うし、気の利いた『返し』をする」というレベルだ。

 なにせ「(40歳にして)『24時間テレビ』(2000年、日本テレビ系)で(チャリティー)ランナーをやって、武道館に帰ってきた瞬間『ここまで登りつめた。東京でやり残したことはない』と思った」と得意満面で語った瞬間が、雅のトークのピークだったのだ。

 そして、当SP番組の一番の目玉である、さんまとトミーズの“直接対決”。ここでは、『せやねん!』レギュラーのたむらけんじ、スマイル、アキナによる“内部告発”というテイで、平時からの雅の「お笑いガンジースタイル」が、お笑い怪獣・さんまの前でつまびらかになった。

 「すぐに泣く」「番組オープニングから自分の話で大号泣する」「フリがド下手」「オープニングから孫を抱いて登場し、番組を私物化する」など、雅に関する赤裸々なタレコミが集まり、さんまが、口は笑っていながら目が笑っていないという「例のマジのトーン」で「あかんで」「どういうことや」と雅に振る。

 さあ、雅、ここでなんと返すか。固唾を呑んで見守る中、雅の口から出てきたのは、「わし、10人きょうだいの末っ子で、愛いっぱいで大きなりましたんやから。否定されたら泣きますねん」という、涙ながらの甘えん坊答弁だった。芸歴40年。あり得るだろうか。これには筆者、見ていてイスから転げ落ちましたね。

 トミーズ雅といえば、大阪芸能界の黒幕・故やしきたかじんさんの小判鮫をやって今の地位を確立したことでおなじみ。ほかにも、若手時代にダウンタウン・松本に嫉妬して、裏道に連れ込んで恫喝したこと。後にダウンタウンがバカ売れしてから、そのエピソードを番組内で振られ、カメラの前で「松ちゃん、あん時はごめんな〜」とカニの裏側みたいな顔で眉を下げ、手を合わせていたことが、昨日のことのように思い出される。

 また、常々亀田三兄弟と仲がいいことを自慢していたくせに、亀田家まわりの諸々の問題が明るみになるや口を閉じ、一切触れなくなったこと。乳児期の娘に、現在のコンプライアンス的にも、もとより倫理的にも完全にアウトなセクハラ行為を働いていたことを『たかじんnoばぁ〜』(よみうりテレビ)で嬉々として語っていたことetc……“クズ”エピソードの枚挙にいとまがない。

 このように、かつては典型的な「強者にへつらい、弱者に威を張る」タイプだった雅。あれから幾年月、62歳となった今、まさか「何もできない」ことで「イジられ・愛されポジション」を築こうとしているとは、思いもよらなかった。

 そんな雅の新境地「お笑いガンジースタイル」を、このSP番組で知ることができた。さらに、これまで雅を大きく下回って「何もできない」と思われていた、「健ちゃんパウダー」(健の持ちギャグ。主に気の利いた返しが思い浮かばないときに使う。「これをふりかけられた者は必ずスベる」という効能がある)しか武器のない健が、逆に雅よりも面白いのではないかという気づき。レギュラー入りした時点では鳴かず飛ばずだった千鳥やかまいたちは、『せやねん!』でこの「何もできない」トミーズをお笑い的に成立させるという「超高等技術」を訓練してきたからこそ、現在の地位があるということ。さながら「職業訓練校」のような『せやねん!』、これはすごい番組なのかもしれない。

 最後に、さんまの出演コーナーと並んで“目玉”とされていた「健からの感謝の手紙で、雅は泣くのかい、泣かないのかい、どっちなんだい」のコーナー。「泣くのか、泣かないのか」を視聴者にリアルタイム投票までさせて盛り上げ、健が手紙を読む準備に入るCM前に、仕切りのたむらけんじから「どっちだと思う?」と振られたスマイルのウーイェイよしたかが「……どっちでもいい」と答えた瞬間が、一番笑った。

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