• 日. 12月 22nd, 2024

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『ザ・ノンフィクション』中国から日本の離島へ――救急医の妻子が直面する言葉の壁「遠く故郷を離れて ~この国で命を救う人になる~」

 日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。12月18日は「遠く故郷を離れて ~この国で命を救う人になる~」というテーマで放送された。

『ザ・ノンフィクション』あらすじ

 鹿児島県の東半分を占める大隅半島の大隅鹿屋病院で研修医として働く、中国人の朱海(36歳)。

 朱はもともと、中国で医師をしていたが30歳で来日。日本語診療能力調査、医師国家試験にそれぞれ2回落ちるも、病院で働く傍ら勉強を続け、4年半かけて両方の合格を勝ち取る。浪人生活中は中国に帰ろうかと思ったこともあったようだが、妻・薇薇(ウェイウェイ)の支えや、恩師である千代孝夫救急医の存在も大きかったよう。今は妻子を大阪に残し、研修医として鹿児島で多忙な生活を送っている。研修後は大阪で救急医となる予定だ。

 朱が来日したのは、日本に行った優秀な同級生たちへの憧れや、『ドラえもん』(小学館)『SLAM DUNK』(集英社)といった日本の漫画のファンだったことも理由だと話す。

 朱の日本語は、医師という繊細な言語能力が求められる仕事をする上でもまったく問題がないように見えた。しかし、敬語をはじめとする言葉遣いではまだ戸惑うこともあるそう。一方、大阪で暮らす朱の8歳の娘・美熹(ビキ)は2歳で来日したため、日本語が母国語状態で、朱とも日本語で会話をする。美熹は、中国語は聞けるが話せないという。

 なお、薇薇は日本語を話せない。美熹が大阪で病院にかかったときは、医師に症状を伝えられず、テレビ電話で鹿児島の朱が説明したこともあったそうだ。

 研修医はさまざまな科を回るため、各科の手術、訪問診療、また学生と共にAED講習を受けるなど、朱の生活は目まぐるしい。また、大隅半島において少なくない「マムシ被害」についてなど、その地域ならではの治療の理解も、地域医療においては重要だ。

 番組の最後では、朱は研修医生活の締めくくりとして九州と沖縄県の中間にある離島、徳之島の徳之島徳洲会病院へと異動し、太平洋を眼前に見渡す病院で多くの患者を受け持っていた。

『ザ・ノンフィクション』親子間の言葉の壁

 朱一家は、母・薇薇は中国語しか話せず、娘・美熹は日本語しか話せない。美熹に悩みごとがあっても「薇薇には相談できないのでは?」という番組スタッフの質問に、朱は「あるでしょう」と答え、「正直、もしこんな感じだと事前に知っていたら、(日本に)来ないかも。怖くて」「ある意味甘く考えてたかも」と心中を明かしていた。

 薇薇が日本語を勉強中なのか、日本語を習得する気がないのかはわからないが、来日6年という状況を考えるとおそらく後者だろう。ただ、「大人になってから第二言語を習得する」というのは泣きたいくらいの苦行であることは、私自身、挫折した身なのでよくわかる。

 また、言語の習得は大人より子どもの柔らかい頭のほうがはるかにスムーズだと留学先で痛感したので、薇薇も自分が日本語を習得するより、美熹が中国語を習得してくれるのを待つ方針なのかもしれない。美熹の中国語は「聞けるが話せない」レベルなので、そちらのほうが手っ取り早そうだ。

 朱は救急医として日本に骨をうずめる覚悟のよう。言葉が通じない国で一生暮らす、というのはかなりストレスな状況だと思うが、薇薇はどう感じているのだろうか。

『ザ・ノンフィクション』は“番宣映え”する媒体?

 なお、今回番組のナレーションを務めたのは女優の生田絵梨花で、最後は生田も看護師役で出演している映画『Dr.コトー診療所』(公開中)の紹介で締められていた。同映画と朱の生活は「過疎地域医療」という点でつながりがあるが、『ザ・ノンフィクション』が“番宣”のようなことをするのは、私が見てきた限り初めてだと思う。

 別に番宣を非難するつもりはない。よくあるバラエティ番組の最後に行われる番宣は、ただ右から左に抜けていくだけだが、同番組での番宣は思いがけなさすぎて、とても印象に残った。その点では、“番宣映え”する媒体なのかもしれない。

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