日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。2022年は43回放送され、さまざまな人間模様が放送された。今回はその中から、私見で特に印象的だった人物を3人選びたい。
『ザ・ノンフィクション』年始から強烈だった婚活女性・ミナミ
印象に残った人1人目は、「結婚したい彼女の場合 ~コロナ禍の婚活漂流記~」(1月16日、23日)に登場した31歳の婚活女性・ミナミだ。これは、番組ファンも納得のチョイスではないかと思う。
理想の高い専業主婦希望のミナミの言動に度肝を抜かされた人も多かったと思うが、一方で、婚活市場には多いのであろう“寡黙な男性”相手にも、明るく振る舞い、場を取り持つなど、健気で常識的な面も垣間見えた。
しかし、やはりミナミは「独りよがりが暴走する」度合いが半端ない(上記の後編参照)。人間誰しも“独りよがり”なところはあると思うが、ミナミのそれは「私はそうは思わないけど、そう思う人の気持ちもわかる」という範疇をはるかに超え、「なぜミナミがそう思うのか、まるで見当がつかない」というものに見えた。
ミナミという名称は仮名だろうが、彼女はモザイクなしで登場していた。放送された前後編で、彼女は成婚に至らなかったため、番組出演は今後の婚活に影響を及ぼすのではなかろうかと心配していたが、ウェブサイト「東洋経済オンライン」に掲載された植草美幸氏(ミナミが通った結婚相談所の所長)の記事によると、ミナミは無事、婚約に至ったよう。植草氏の敏腕ぶりがすごい。そして、ミナミが末永く幸せであることを願う。
『ザ・ノンフィクション』父親の“正妻”のようだったフジタ
2人目も、SNS上で大きな反響を巻き起こした、「あの日僕を捨てた父は~孤独な芸人の悲しき人生」(10月23日、30日)の45歳ゲーム芸人・フジタ。フジタは母親を幼くして亡くしている。残された父親・陽人は本来フジタを養育する立場でありながら、フジタの同級生の母親であるシングルマザー・朱美と恋仲になり、フジタを家に置き去りにして朱美の家で生活をする。番組では、認知症が始まった80代の陽人と、それをかいがいしく介護するフジタの様子が放送された。
印象的だったのは、フジタが“とんでもない父親”に思える陽人には優しく接し、内縁の妻である朱美に対してネガティブな感情を向けていた点だ。そんな彼は、愛人(朱美)にのめりこんだ不実な夫(陽人)が、悪びれもせず家に帰ってきてくれたことを喜ぶ“正妻”のようにも見え、切なかった。
『ザ・ノンフィクション』ミナミ、フジタに続く3人目はこの人!
22年の『ザ・ノンフィクション』を象徴する人として、ミナミとフジタはすぐ出てきたが、3人目は大いに迷った。同番組を見ていると「やるせない」「腹が立つ」「登場人物の言動に驚く」などの感情が湧くことが多いが、最後は「カッコよさ」を感じさせた、「花子と大助 ~余命宣告とセンターマイク 夫婦の1400日~」(4月17日)の芸人・宮川花子を選びたい。同放送では、彼女ががんの闘病生活から舞台に返り咲いた姿を取り上げていた。
2年前の20年3月にも、前後編で伝えられていた花子の闘病の様子。
花子のがんが発覚したのは18年3月。20年放送回は、花子が自宅の介護ベッドから上半身だけ起こし、大介とともに年始恒例の漫才特番を見ながら笑っている姿で終わっていた。花子はNGK(なんばグランド花月)へ復帰したいとの抱負を語っていたが、正直20年の放送を見た際は、かなり難しいようにも思えた。しかし、その後の22年の放送で、花子は見事NGKの舞台に返り咲く。
特にグッときたのは、NGKの前、2年半ぶりの復帰舞台となった地元・生駒市でのトークショーの舞台裏だ。楽屋でヘアセットをしてもらいながら、鏡をキッと見据える花子は、それまでの闘病生活の姿から一変し、プロ芸人としての風格を漂わせていて、それはそれはカッコよかった。花子が舞台で生きてきた長い年月を、一瞬で感じさせるシーンだった。