• 日. 12月 22nd, 2024

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弁護士が語る、King&Prince・平野紫耀らをめぐる公取への働きかけの是非――「臆測を真実かのように申告すると罪になる場合も」

 2022年は激動の1年だったジャニーズ事務所。10月28日にTravis Japanが全世界デビューを果たすといううれしいニュースがあった一方、事務所の副社長で子会社・ジャニーズアイランド社長だった滝沢秀明氏が10月末をもって退任し、11月にはKing&Prince(以下、キンプリ)メンバーの平野紫耀、岸優太、神宮寺勇太がグループ脱退と退所を発表。SexyZone・マリウス葉も12月31日をもってグループ活動を終え、退所と同時に芸能界を引退するなど、ジャニーズファンに大きな衝撃を与えた。

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 滝沢氏やキンプリメンバーをめぐっては、11月10日発売の「週刊文春」(文藝春秋)が、「キンプリ 滝沢秀明を壊した ジュリー社長“冷血支配”」との見出しで、事務所社長・藤島ジュリー景子氏との確執をスクープ。ジャニーズサイドは記事内容を否定し、「法的措置を検討しております」との姿勢を示した。

 あまりに突然の脱退・退所発表だったことや、こうした報道により、一部のキンプリファンは、平野ら脱退・退所メンバーが冷遇されているのではないかと疑心暗鬼に。

 ジャニーズといえば、16年に解散したSMAPの元メンバーである香取慎吾、草なぎ剛、稲垣吾郎らをテレビ出演させないよう、事務所側が各放送局へ何らかの圧力をかけていたのではないかとの疑いを元に、ファンたちが公正取引委員会(以下、公取)に抗議。その後、ジャニーズ側が同組織から注意を受けたこともあったため、ネット上には、キンプリの平野ら脱退・退所メンバーを取り巻く現状について「内情の調査及び、ジャニーズへの指導を公取に申し入れた」と報告する声も見受けられる。

 このようにファンが行動を起こすことの是非について、『清く楽しく美しい推し活~推しから愛される術』(東京法令出版)の著者で、数多くの芸能訴訟や事件の代理人を務めるレイ法律事務所の河西邦剛弁護士に話を聞いた。

「ジャニーズ事務所が退所者に圧力をかけることは、まずない」

――King&Princeメンバーの3人の脱退・退所報道を受け、一部ファンが、事務所による退所者への冷遇は独占禁止法の「優越的地位の濫用」に抵触するのではと、公取に情報を提供しながら内情を調査してもらえるよう訴えているそうです。「優越的地位の濫用」にあたるのは、具体的にどういった場合でしょうか。

河西邦剛氏(以下、河西) 独占禁止法は、「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」で、“市場にどれぐらいの影響を与えるか”が重視されます。例えば、ジャニーズ側が全メディアに対して「退所者を使うな」と言ったら、当然影響力は大きいですし、優越的地位の濫用として規制の対象になります。

 ただ、私の経験則で言うと、ジャニーズが各社にそのような要請をすることは、まずないという認識なんです。ジャニーズタレントに限らず、事務所を辞めた芸能人の露出が少なくなるケースはほかにもありますし、どちらかというと、メディア側が古巣に忖度しているのでは。

――今回のように、ファンが公取へ働きかけることについて、河西先生のご意見をお聞かせください。

河西 現状、ジャニーズ側が事務所を辞める3名に対して圧力をかけているようには思えませんし、「優越的地位の濫用」に抵触するとは言い切れないでしょう。ただ、最終的にその判断をするのは公取ですし、“情報を提供する”というファンの行動は、間違ってはいません。そういった事例や事案報告の量や内容次第で、捜査対象に値するかどうかが決まるわけですから。

 気を付けていただきたいのは、“情報に確実性があるか”という点。事実かどうか確認できないことや、臆測を真実かのように申告することは、偽計業務妨害罪に該当する場合がありますし、かえって事務所側がタレントへの投資やマネジメントに消極的になり、結果的にビジネスそのものが縮小する可能性もあります。ファンが“推しのためになにかをしたい”という気持ちはよくわかりますから、まずは慎重に情報を見極めてほしいですね。

■河西邦剛(かさい・くにたか)
レイ法律事務所の統括パートナー弁護士。数多くの芸能訴訟や事件の代理人を務める。主要取扱い分野は芸能トラブル、エンターテインメント、メディア対応、インターネットトラブル、知的財産分野。テレビ、新聞、ネット等の幅広いメディアから取材を受ける。アイドルグループや舞台のプロデュース実績も。
レイ法律相談事務所公式サイト https://rei-law.com/

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