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ヘンリー王子の自叙伝『スペア』、売り上げ好調のウラで「フィクション本」と批判された“事実と異なる記述”とは?

ByAdmin

1月 13, 2023 #海外

 1月10日の発売初日に143万部以上を売り上げ「1日で史上最も多く売れたノンフィクション本」になったと発表されたヘンリー王子の自叙伝『スペア』。リーク通りの内容をウィットにあふれた語り口でつづった読みやすい本だが、本を読んだ人からは「初体験、薬物体験、戦争で殺した人数など書く必要はあったのか」「70年間王室を守ってきたエリザベス女王に申し訳ないと思わないのか」「いつになったら被害者意識から抜け出すのか」と批判が続出。

 また、プロモーションのためメディアに立て続けに出たことからか、「ニューヨーク・タイムズ」は「同じことを繰り返すだけで、飽き飽きする」としらけ気味。さらに、事実と異なる箇所がいくつもあるため、「ノンフィクションではなくフィクション本なのでは」と揶揄する声も上がっているようだ。

 売り上げ好調の『スペア』には、すでに欧米メディアが抜粋して報じているウィリアム皇太子やチャールズ国王との確執、カミラ王妃のように自分自身のPRのためメディアに情報を流す王室メンバーへの批判、母・ダイアナ元妃の死と、メディアやタブロイドへの不満などがつづられている。

 また、自身の初体験秘話や、勉強ができず早々に大学進学を諦めたこと、アメリカのコメディ『フレンズ』が大好きで三枚目キャラのチャンドラーと自分を重ね合わせていたこと、そのコメディの出演者コートニー・コックスの自宅に泊まったことがあり(マジック)マッシュルームでトリップしたことなど、”ヘンリー王子のトリビア”がふんだんに盛り込まれ、ファンを大喜びさせる内容となっている。

 一方で、世間から最も問題視されている「タリバン兵を25人殺した」という告白について、王子は本の発売当日に出演した米CBSの深夜トーク番組『ザ・レイト・ショー・ウィズ・スティーヴン・コルベア』で、「私がこの数を自慢しているとイギリスのメディアは伝えているが、誤りだ」「彼らは私の家族を危険にさらすような報道をしている」と批判。

「(戦争のPTSDで)自殺する退役軍人が多いから、それを防ぐために、あえて数字を書いた」と説明したが、本には退役軍人の自殺率の高さやそれを防ぎたいという記述はなかった。このことに関して、現役・退役軍人たちは「戦争で殺害した人数を公言することが問題なのだ」と強く非難している。

 イギリス国民からも「恥ずかしい」という声、「もう王子じゃない。ハリウッドスターに成り下がった」と軽蔑する声が噴出。中には、「王子の口から、彼が経験したストーリーを語る必要があった」「彼のメンタルヘルスのため、トラウマのヒーリングのために必要だった」と、『スペア』出版に賛同する人もいるが、ネット上では家族の許可なくプライバシーに関わる情報をあけすけに語っていることに不快感を示す人のほうが圧倒的に多い。

 レーガン元大統領の娘で、「虐待され、トラウマを負った」と自著で暴露したパティ・デイビスは、自身の経験から、今後の家族との関係、そして今後の自分自身のためにも、王子は「もう黙るべき」だと忠告。25年間続いた裁判番組で全米からリスペクトされているジュディ・シェリダン判事は、王子のことを「自己中心的、わがまま、感謝知らず」「育ててくれた恩をあだで返す」「見苦しい」と痛烈に非難した。

 そのほか、ジョン・マケイン元米上院議員の娘で政治評論家のメーガン・マケインや、メーガン夫人のアンチとして有名なイギリスの名物司会者ピアーズ・モーガンも、ヘンリー王子に批判的な態度を見せている。

 対するヘンリー王子だが、前出の『ザ・レイト・ショー・ウィズ・スティーヴン・コルベア』で、エリザベス女王の激動の半生を描いたNetflixのドラマシリーズ『ザ・クラウン』を「見ている」と明かし、ファクトチェックもしていると発言。自著を指さし「(ドラマになることもあるから)歴史は正しく伝えることが重要なんだよ」とドヤ顔で語った。

 しかし、『スペア』には事実とは異なる箇所がいくつかあり、ネット上では「『ザ・クラウン』はフィクションドラマなのだから、ファクトチェックの必要はないのでは? それよりも自分の本をファクトチェックすべき」と指摘する声が続出している。

 例えば、王子が通っていたイートン校の創設者であるヘンリー6世は、7代前までさかのぼった直系の祖先だと書かれているが、ヘンリー6世の唯一の息子であるエドワード・オブ・ウェストミンスターは子どもをつくらないまま17歳で亡くなっており、先祖ではない。

 また、1997年8月ににダイアナ元妃が亡くなる直前、9月に13歳の誕生日を迎えるヘンリー王子へのプレゼントとしてXboxを購入し、誕生日当日、元妃の姉から渡された、と記載されているが、Xboxは2001年に発売されたもので、イギリスでは翌02年に販売された。

 同年に他界した曽祖母であるエリザベス王太后の死の知らせを「イートン校で受けた」とも記されているが、実際はこの時、チャールズ国王、ウィリアム皇太子と共に、スイスにバケーション中だった。訃報を受け取り急いで帰る3人の姿は、報道写真として残っている。

 ほかにも、結婚する前にメーガン夫人が父親のトーマス・マークルをマスコミから守るため「ニュージーランド航空のメキシコ発イギリス行きのファーストクラス航空券を購入したいと申し出た」と記されているが、ニュージランド航空にはメキシコからイギリスへの直行便はなく、ファーストクラスはなくビジネス・プレミアしかない。

 このように明らかに事実ではない箇所が複数あることから、著書の中で紹介されている皇太子とのやりとりや、メーガン夫人とキャサリン妃がやりとりしたメッセージの内容など、ネット上では「どこまで事実なのかが疑わしい」「フィクション本」だと批判する声が上がっている。

 一部では「長年受けたトラウマから記憶障害になっているのでは?」「ドラッグだの、サイケデリック療法だのに手を出しているから、脳がダメージを受け、記憶があいまいになっているのかも」という意見もあるが、出版する前にファクトチェックが行われなかったことも問題であり、「そもそも作り話ばかりだからスルーされたのでは」ともささやかれている。

 王子は「王室が”情報筋の話”として、自分たちの都合がいいよう、メディアに情報をリークする」と批判しているが、米週刊誌「USウィークリー」は情報筋の話として、ウィリアム皇太子が『スペア』の内容に「ゾッ」とし、「自分の弟(が書いたこと)だとは思えない」「和解できると信じたいが、難しいことだと思い知らされた」と深く悲しんでいると報道。

 米月刊誌「ヴァニティ・フェア」も「自分自身のPRのために王子を犠牲にした」などと悪役として書かれているカミラ王妃が「愕然としている」という情報筋の話を掲載。英紙「インディペンデント」は、国王夫妻、皇太子は、ヘンリー王子が「セラピーとメーガン夫人に取り疲れている」と心配しており、王子に連絡しないのは「自分たちの言葉がすべてメディアに流され、そして商業的な利益に変えられてしまうから」「(王子と王室の)信頼関係は完全に崩壊している」とも報じている。

 なお、ヘンリー王子は、出版社のペンギン・ランダムハウスから、計4冊の本を出す予定。契約金は3500〜4000万ドル(45〜51億円)だと報じられている。

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