10日の発売日から飛ぶように売れているものの、Netflixのドキュメンタリー同様、評判はイマイチなヘンリー王子の自叙伝『スペア』。ネット上では、日がたつにつれ悪評が増しており、「国王の子である王子の自伝本なのに、事実じゃない箇所が多すぎて歴史的価値はない」「読めば読むほどフィクション」など散々な言われようだ。事実かどうか確認しようがない情報を暴露された王族たちには同情が集まり、“いじわる義姉”だと書かれたキャサリン妃は、12日の公務中にヘンリー王子に対する皮肉を口にしたとネット上で話題を呼んでいる。
同書の中で、ウィリアム王子やカミラ王妃同様、王室のあしきしきたりに適応し、“自由な思想を持ち、性格もサバサバしている”メーガン夫人にいじわるをする義姉として紹介されているキャサリン妃。発売から2日後の12日、ウィリアム皇太子と共にバーケンヘッドにあるオープン・ドア・チャリティを訪問した。
そして、芸術関連の活動をサポートする慈善団体のプログラムに参加している4人のティーンと面会し、「大好きな音楽を作ることで、喜怒哀楽を表現できるようになりました」「私は(メンタル)クリニックの雰囲気の中で話すより、音楽作りのほうが感情を表すことができる。言葉で感情を表現することはなかなか難しくて」などと語る彼らの話を熱心に聞いた。
皇太子は「とてもわかりやすい(説明)ですね!」と感想を述べ、キャサリン妃は、「セラピストと話しても効果が得られない人はいますからね。すべての人に有効な治療法ではないですから」としみじみ語り、「幅広いセラピーがあること(そして、その中から自分に合ったものを選べるということ)が大切だと思います」と、同チャリティを高く評価した。
ネット上では、このキャサリン妃の発言が、セラピーを受けているわりにはいつまでも被害者意識から脱することができず、ネガティブ思考になっているヘンリー王子に対する皮肉ではないかと話題に。また、王子はメーガン夫人の勧めるセラピストに「洗脳されている」ともささやかれており、サイケデリック療法にまで手を出したことを本につづっていることから、キャサリン妃は「王子のメンタルヘルスを深く心配しており、ついこういう言葉が出たのだろう」と推測する声も上がった。
ヘンリー王子は、キャサリン妃が義姉になることを「ずっと欲しかった姉ができた」と大喜びし、2017年には米週刊誌「ニューズウィーク」が、ヘンリー王子は精神的にキャサリン妃を頼っていると報道。「母を亡くし、心にあいた大きな穴を埋めてくれたのはキャサリン妃」とも伝えられ、知り合った頃はまだやんちゃな青年だった王子をずっと見守り支えてきた、ヘンリー王子にとって特別な存在として知られている。
ヘンリー王子はウィリアム皇太子夫妻と3人で16年に、メンタルヘルス問題に対する誤解や偏見をなくしたいとチャリティ団体「ヘッズ・トゥギャザー」を創設。救急ヘリパイロットの仕事でトラウマを経験したウィリアム皇太子、母の死により「精神的破壊に追い込まれた」ヘンリー王子がメンタルヘルス問題に取り組む姿を見たキャサリン妃による発案で実現した。
このように、ヘンリー王子のメンタルヘルスに気を配っていたキャサリン妃だけに、今の王子の精神状態を心配しているであろう彼女の心労は察するに余りあると、世間から同情が集まっている。
一方で、英高級紙「テレグラフ」のインタビューに応じたヘンリー王子は、もう1冊、衝撃的な自伝本を出す用意があると匂わせているが、『スペア』には事実とは異なる点があまりにも多いため、ネット上では「ジャンルはフィクションにすべき」と批判されている。
『スペア』には、メーガン夫人が16年11月にケンジントン宮殿近くの高級スーパー、ホールフーズに買い物に出かけた際、店内には彼女の顔写真と共に、「この上なくショッキングでおぞましい見出し」のついたタブロイド紙が棚にずらりと並び、本人登場に気がついた周囲の客や店員から好奇の目で見られたという記述があった。
しかし、ホールフーズはタブロイドを販売していないため、起こり得ないことだとSNS上で話題に。また、メ―ガン夫人がホールフーズで買い物をして帰る姿がパパラッチされた16年11月10日、ほとんどのタブロイドの1面はトランプ元大統領で、夫人を1面に載せたタブロイドはいくつかあったが、悪く書いているものではなかったことが確認されている。
ほかにも、長年、コーギーやドーギー(ダックスフントとコーギーの交雑種)を飼育してきたエリザベス女王の愛犬について、「祖先はヴィクトリア女王の犬」とも記載されている。ヴィクトリア女王も犬好きだったことは事実ではあるが、コーギーを飼ったことはなく、この箇所も誤りである。
このように次から次へと事実とは異なる記載が見つかり、イギリスのメディアから「信用できない本だ」と大ブーイングを浴びている『スペア』だが、同書のゴーストライターであるJ.R.モーリンガーはTwitterで猛反論。
同書に記されている、「私はものごとを、景色、地形、建物で記憶している。日付は申し訳ないが、確認しなければわからない。会話についてもベストは尽くすが、一字一句同じ言い回しの再現はできない。特に90年代のものについてはね」「いずれにせよ、私の記憶は私の記憶」「客観的な事実と同じくらい、私が記憶していること、どう記憶したかにも真実はある」という王子の言葉を引用しながら擁護した。
モーリンガーは、「真実かは定かではない自分の記憶」のひとつであり、「パパはマミーが頭を負傷したと言っていたけど、脳障害があるのは自分かもしれない。防衛本能で記憶があやふやになってしまったのだろう」という王子の見解も紹介。
さらに、詩人メアリー・カーの回顧録『The Art of Memoir』(15年)に記されている「記憶と事実、解釈と事実の間の境界線はあいまいである」「緊張感に満ちた回顧録は感情だけを記録していることがほとんどで、詳細はぼやけているものだ」という精神科医ジョナサン・ミンク博士の言葉も投稿。事実関係に多少の誤りがあっても、回顧録としては問題ないと主張している。
しかし、この反論に納得する人は少なく、「問題ないわけはない。王族の内情をここまで暴露するのだから、きちんとファクトチェックし、事実を記すべきだった」など、ネット上の批判は増すばかりだ。
なお、10日に、ウィリアム皇太子のゴッドファーザーである前ギリシャ国王コンスタンティノス2世が死去。16日の葬儀には、皇太子夫妻が国王の代理で出席すると報じられたが、実際にはアン王女と皇太子のいとこであるレディ・ガブリエラ・ウィンザーが出席。ヘンリー王子の件で世間を騒がせており葬儀の空気を乱すこと、王子が『スペア』でタリバン兵25人の殺害を明かし、タリバン幹部やイスラム過激派らを激怒させていることから、セキュリティ面を懸念し、皇太子は欠席を決めたのではないかとうわさされている。
自叙伝発売で王室の公務にも大きな影響を与えているヘンリー王子。果たして、暴走気味の彼が行き着く先は――。