日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。2月12日の放送は「私が踊り続けるわけ2 ~56歳のストリッパー物語~後編」。
『ザ・ノンフィクション』あらすじ
星愛美、56歳。ストリッパーの中では国内最高齢と言われている。愛美の「神々しい」ステージでの姿や、自身のファン、番組スタッフ、後輩ストリッパーに対する穏やかな物腰からは想像できないが、かつての愛美は相当な非行少女で、暴走族に入り15歳までに2度の人工妊娠中絶を経験。19歳で結婚するも死産の末、21歳で離婚。AV女優、ストリッパー、水商売と職を転々とし、45歳でストリッパーとして再出発した。
また、愛美は37歳でがんを患い子宮を摘出。ステージではエネルギッシュな姿を見せているが、腰や背中にも痛みを抱え、舞台裏では膝を曲げるのもままならない。自身の引き際について考えてもいるようだ。
愛美のファンネームは「星組」だが、星組の一人である長崎在住のスーさんも、大腸がんのステージ4と診断された。スーさんは警察官を定年退職後、旅先のストリップ劇場で愛美の踊りを見て、それ以来全国の公演を訪ねるなど、熱心に愛美の「推し活」をしてきた。しかし、スーさんの体調は年々悪化。愛美のステージ以外はロビーの椅子に座り、つらそうにうなだれていた。
2022年5月、スーさんは愛美のホームである大阪、晃生ショー劇場で行われた彼女の誕生日イベントにも足を運ぶが、これがスーさんにとって愛美の最後のステージとなった。その後もスーさんと愛美は電話でやりとりをしていたものの、スーさんと連絡の取れない日が続くように。そして、スーさんの弟から愛美に、8月21日にスーさんが永眠したこと、「生前は、いろいろお世話になりありがとうございました。」とのメッセージが届いた。
また、スーさんの妹からも愛美に手紙が届く。妹は最初、兄がストリップにはまっていたことを知りショックだったそう。ただ、恐る恐る遺品の中にあった、以前、愛美を特集した同番組のDVDを見たことで、イメージが変わったのだろう。手紙の最後は愛美の体調を気遣う言葉で締めくくられていたという。
なお、おそらくDVDはこちらの放送回だと思われる。
そして、星組を取り仕切るひこにゃんも、厚生労働省が定める指定難病の一つである潰瘍性大腸炎を患いながらも同10月の愛美の33周年イベントに足を運ぶ。スーさんの死に思うところがあったようだ。ひこにゃんは観客席でなじみの「同担」たちと抱擁を交わし、愛美も後輩ストリッパー、浜崎るりと共にひこにゃんを出迎える。
最後に、愛美は番組スタッフに対し「引退できません」と宣言。「『いつまでも踊り続けてください』って言葉を正直に受け止めるなら、そうしたいです、いつまでも」と前を向いた。
『ザ・ノンフィクション』亡き家族の意外な趣味
スーさんの妹は、兄がストリップにはまっていたことがショックだったという。スーさんは元警察官であり、番組内でも「体がしんどい」以外の感情をあまり出していなかった。そんな静かな兄と、ストリップという趣味がつながらなかったのだろう。
筆者もストリップは見たことがあるが、事前に想像していた“淫靡”な感じはなく、“人間賛歌”的なものであり、生身の人間が放つ熱を感じた。ストリップ以上に「事前の印象」と「実際に見た感想」が違うものを私は知らない。そのくらい違う。
『ザ・ノンフィクション』の愛美のドキュメンタリーも、「人間賛歌としてのストリップ」を知れる回だったと思う。番組DVDがなかったら、スーさんの妹は兄の死後、兄を誤解したままだったのかもしれないと思うと怖い。
「自分が死んだあとのことは関係ない」という考え方もあると思うが、遺品を整理するのは遺族だ。「説明が必要そうな遺品」が私もないわけではないので、思いがけず終活についても考えさせられる放送だった。
次回は『CEOになりたくて ~ポンタの上京物語~』。広島から上京し、「U-25起業家シェアハウス」で起業家を目指す21歳のポンタ。動画を利用した旅行アプリというアイデアはあるものの、アプリ開発スキルもなく……。