BBC(英国放送協会)が、2019年に亡くなったジャニーズ事務所創業者・ジャニー喜多川氏の性虐待問題に迫るドキュメンタリー『The Secret Scandal of J-Pop』を放送する予定だという。
元ジャニーズによる、ジャニー喜多川氏の性虐待告発の歴史
ジャニー氏の性虐待が公になったのは1960年代。当時ジャニー氏は、初代ジャニーズがアマチュア時代に籍を置いていた「新芸能学院」から、金銭トラブルをめぐり、東京地裁に訴えを起こされていたが、その公判中、性虐待の実態が明らかになったのだ。
その後は、一部の元ジャニーズたちが暴露本という形で、ジャニー氏の性虐待を“告発”。88年に元フォーリーブスの北公次が半生記『光GENJIへ』(データハウス)を出版し、ジャニー氏から受けた“行為”を暴露。翌年には、初代ジャニーズのメンバー・中谷良が『ジャニーズの逆襲』(同)で、やはりジャニー氏の性癖や事務所の内情を明かし、90年代以降も、平本淳也、豊川誕、光GENJIの候補メンバーだった木山将吾らがこれに続いた。
ここ最近では、元ジャニーズJr.の岡本カウアンが、暴露系動画配信者・ガーシー氏とのコラボ動画で、「(ジャニー氏に体を)触られました」「結局、くわえられて……みたいな感じです」と過去の実体験を告白したのも、世間に大きな衝撃を与えた。
サイゾーウーマンでは、過去にジャニー氏の性虐待を告発した元ジャニーズたちの著書を取り上げる記事を何本も掲載してきた。今回、その記事をあらためてまとめる。
(※)以下の記事では、今日では差別意識を助長する表現が使用されています。「逆セクハラ」同様、「セクハラ」が男性から女性への“行為”と限定されていた当時の社会的状況を伝えるため、時事用語と捉え、1999年の「週刊文春」(文藝春秋)報道から引用しています。
54年前、毒牙にかけられた「初代ジャニーズ」――ジャニー喜多川の“セクハラ過去”を再考(初出:2018年6月6日)
『ジャニーズの逆襲』(中谷良著、データハウス、89年)
裁判では、ジャニーズとともにレッスンを受けていた同僚が、ジャニー氏のホモセクハラ(※)を告発。少年たちにエロ写真を見せて興奮させた上で、少年の体にいたずらをし、ジャニー氏のものも触らせるという、男同士のヘビー・ペッティングを教え込んだとのことだった。
ほかにも、15人もの少年たちがその毒牙にかけられており、その中にはジャニーズの4人も含まれていたという。そもそも、ジャニーズのあおい輝彦が、「あんなことをされてボクの一生はおしまいです」と訴えてきたことが、原告側の学院長がジャニー氏の蛮行を知るきっかけだったという。
16歳の「おれ」にジャニー喜多川が繰り返した性行為――初期ジャニタレが綴る決死の“告発”(初出:2018年6月20日)
『光GENJIへ―元フォーリーブス北公次の禁断の半生記』(北公次著、88年、データハウス)
同著の中で、北氏は、ジャニー喜多川氏との出会いから、彼との“夫婦同然”だったという毎日、そして毎夜のように繰り返されたホモセクハラ行為(※)のすべてを明かしていたのだ。
とにかく、その描写はBL小説も真っ青の過激さで、いま読んでも驚かされるばかり。16歳のときに、初めてジャニー氏に下半身を弄ばれたときの描写がこうだ。
〈ジャニーさんも裸になり、おれのからだに密着してくる。両手でジャニーさんのからだを突き放そうとするが、上に乗ったジャニーさんはたくみにおれのからだを舌で愛撫しながら、手で勃起したペニスをしごき続ける。心の中で必死に嫌がっても、巧みな技巧でおれはあっという間に放出してしまった〉
「ユーも仲間にならないかい」――13歳を誘い犯した、ジャニー喜多川のパワハラと“行為”(初出:2018年7月4日)
『さらば!!光GENJIへ』(北公次著、89年、データハウス)
小谷氏(編註:フォーリーブスの次にジャニーズでデビューしたジューク・ボックスの元メンバー・小谷純)は、後楽園ゆうえんちで行われていたフォーリーブスのショーを見に行ったときに、ジャニー氏にスカウトされたのが、ジャニーズ入りのきっかけ。施設内でたくさんの乗り物に乗せてもらい、いきなりフォーリーブスを楽屋で紹介され、「ユーも仲間にならないかい」と言われ舞い上がってしまったという。
そして、フォーリーブスやバックバンドと一緒に、ジャニー氏運転のマイクロバスに乗り、合宿所についていってしまう。家族には、「友達の家に泊まるよ」と嘘をつき、合宿所に泊まることになったというが、なんとその日から、ジャニー氏は連日のように小谷氏の肉体を弄ぶようになったという。
初日こそ未遂に終わったというが、翌日も泊まることになると、
〈すると、その夜にもやはり、あの行為があったわけだ。ジャニーさんが僕の物を口に含んでいるのがわかったわけ〉
当時、13〜14歳、〈なぜこの人はこんな事をしているのか。それさえもわからない純粋な少年だったんだ〉という小谷少年は、あまりの驚きに恥ずかしさよりも疑問で頭がいっぱいになったという。
「ジャニーさんに誘われたときは、驚いた」――16歳の“僕”が「スター抜てき」と引き換えたもの(初出:2018年7月18日)
『ひとりぼっちの旅立ち―元ジャニーズ・アイドル 豊川誕半生記』(豊川誕著、鹿砦社、1997年)
<ジャニーさんにベッドに誘われた時は正直、驚いた。だが、これから、この人に育ててもらわなければどうにもならないということも、僕は十分すぎるほど、理解していたのである>
そしてジャニー氏の求めに応じていた結果、なんとわずか1週間目にしてフォーリーブスの地方公演のステージにゲストとして登場するようになり、次なるスター候補としてファンに紹介され歌を披露するという大舞台が与えられたという。すなわちデビューが決まったのだ。
「行為」をしなければJr.で終わる――ジャニー氏の「悪魔の囁き」を退けた“私”が思うこと(初出:2018年8月1日)
『ジャニーズのすべて 少年愛の館』(平本淳也著、96年、鹿砦社)
合宿所に泊まったある夜、強烈な香水のにおいとともにジャニー氏に抱き寄せられてしまう。そこまでの経験は何度もあったというが、その日のジャニー氏はさらに”その先”を求めてきたという。
<例の如く腕枕をして足もからめてきた。この時は私は寝ておらず、私が寝ていないのをジャニーさんは知っていた。抱き締めながら、「ユー、もうすぐデビューだね」と発した言葉と一緒に少し荒い鼻息が頬を撫でる。
(中略)
「レッスンは大変だけど頑張って」「新しいグループにはユーがリーダーで頑張るんだよ」「来年にはもうユーは大スターだよ」とよだれが出るほど甘い夢のような話だった。これらをジャニーさんは小声で耳元でささやきながら手の平や腕のマッサージを施す。
「もっと気持ちのいいことしてあげる」と言われた時は、心臓が爆発する思いだった。>
この”もっと気持ちいいこと”は、足の指を鳴らすことだったというが、こうしておいしい話とマッサージで、まだ性愛の意味も知らない少年の心を溶かしていくのが、ジャニー氏の手口のようだ。
ジャニー喜多川氏の「泡風呂の儀式」「頬にキス」……オモチャにされた「15歳」が語る真実(初出:2018年8月29日)
『Smapへ――そして、すべてのジャニーズタレントへ』(木山将吾著、05年、鹿砦社)
バスルームのある部屋に木山氏を押し込めて鍵をかけ、背後から抱きついて、「まるで発情した犬のように」硬くなった股間を擦り付けてきたという。
<「はぁ、はぁ、はぁ」
ジャニーさんも無言のままで、しばらく股間を服の上からこすりつけていたが、不意に、
「あ……ふぅ〜」
と、息を抜いた。
イッたんだ、ジャニーさん。僕は初めて、大人の男性がイッたのを見た。しかも、自分も部屋着のまま。ズボンの中にイッちゃったんだ。このおじさん。>
この日から、「愛人」という言葉ではとても言い尽くせない、地獄以上の日々が約2年間繰り広げられていくのだ。
昼は食事を与えられ、夜は精を吸われる――ジャニーさんとの“蜜月”と“恥辱”の日々(初出:2018年9月12日)
『Smapへ――そして、すべてのジャニーズタレントへ』(木山将吾著、05年、鹿砦社)
ジャニー氏の手は、木山氏の股間に伸び、巧みな愛撫に勃起したことを確かめると、スウェットのズボンをゆっくり引き下げてきたという。そして、若く元気な木山氏のペニスを前に、ジャニー氏は「はぁ、はぁ、はぁ」と犬のように鼻を鳴らしたかと思うと、
<次の瞬間、僕のペニスは生暖かいものに包まれた。同時に激しい快感の波が僕を襲った。>
木山氏にとって生まれてはじめてのフェラチオ体験だったという。
<そうだ、今、僕のペニスを吸っているのは、あのジャニーさんなんだよ。「やばいよ」と我に返った瞬間、そのまとわりつくナメクジのような舌の絶妙なテクニックで、ジャニーさんの口の中で果ててしまった。
ジャニーさんはそれをゴクリと飲み込んだ。
僕は初めてフェラチオをされた。相手は六十歳の男だった。でも、それが、この合宿所では当然の夜の儀式だった。
タレントとしてデビューするための……。>
“ジャニーズ”であるための「恐怖の儀式」――恥辱に耐えた“僕”すら拒絶したホルモン注射(初出:2018年9月26日)
『Smapへ――そして、すべてのジャニーズタレントへ』(木山将吾著、05年、鹿砦社)
光GENJIとしてのデビューが迫る中、木山氏の耳に「怖い話」が入ってきたという。
<「ジャニーさんが注射打ってくるんだよね」
聞くと、デビューするには、ある注射を打たなければならないという。すでにこのときには僕以外の全員がジャニーさんにそれをされていたのだ。
「あれって何の注射?」
「ホルモン剤とかって本当?」
「なんでホルモン剤なんか打つんだよ」
僕らは周囲の人間に聞かれないように、ひそひそと話をしたが、やはり誰もその実態を知らないまま、ジャニーさんに強制的に打たれていたようだ。>
そんな不気味なウワサに恐怖を感じるようになった木山氏に、光GENJIでともにデビューする予定だった、諸星和己が、こんなことを言ってきたという。
「ジャニーさんは、僕の体を触るだけ」ジャニタレ2人が暴露した“昼の仕事”と“夜の行為”(初出:2018年10月17日)
『Smapへ――そして、すべてのジャニーズタレントへ』(木山将吾著、05年、鹿砦社)
木山氏は、当時のジャニー氏の一番のお気に入りで、約2年の間、ジャニー氏が彼のそばを離れることはなかったという。この木山氏の著書は、出版当時、官能小説以上のリアルなホモセクハラ(※)描写ばかりが話題になったが、実は、この重大発言が隠されていたのだ。
<本も読まず、書き物もしない。よくジャニーズのタレントが歌う曲の作詞をしたのがジャニーさんだとか、作曲者はペンネームを使ったジャニーさんだとか噂がたったが、僕の知る限りのジャニーさんにそんな才能はない。
舞台の演出まで手がけているなどとなっているが、それらはすべて事務所のスタッフがやっていることで、ジャニーさんが指示をしているのを見たことがない。あの人はたんなるスケベジジイでしかない。>
ジャニー氏の性虐待ドキュメンタリー、BBCは“黙殺”してきた日本メディアにもメス?
このように元ジャニーズタレントからの告発本は多数出版され、99年からは「週刊文春」(文藝春秋)がこの問題を追及しているが、大手メディアがジャニー氏の性虐待問題を“黙殺”し続けてきたのは事実。BBCのドキュメンタリーでは、こうした日本メディアの報道姿勢についてもメスが入れられるものとみられる。
『The Secret Scandal of J-Pop』は、3月7日午後9時から(現地時間)放送予定。世界からどのような反響が寄せられるのか、注目したい。