• 日. 12月 22nd, 2024

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中田敦彦がテレビを面白くすると思うワケ――「誇大妄想的な一面を隠し切れない」彼の魅力

私たちの心のどこかを刺激する有名人たちの発言――ライター・仁科友里がその“言葉”を深掘りします。

<今回の有名人>
「会社と揉めたところはデカいと思いますよ」オリエンタルラジオ・中田敦彦
『あちこちオードリー 「番組Pおすすめ回!」』(TVer)

 TVerの『あちこちオードリー 「番組Pおすすめ回!」』を見た。これはその名の通り、番組のプロデューサーが“推す”回で、2022年10月26日オンエア分の再放送である。ゲストはオリエンタルラジオ・中田敦彦だったが、テレビに出ている彼を久しぶりに見た気がする。

 中田の芸能人生は、起伏に富んでいる。2005年にデビューし、芸歴3年目でゴールデン冠番組を3本持つなど大ブレークしたオリエンタルラジオ。しかし、勢いは続かず、09年には冠番組がすべて終了してしまう。

 しかし、14年に結成したダンス&ボーカルグループ・RADIO FISHの楽曲 「PERFECT HUMAN」が16年に大ヒットし、『NHK紅白歌合戦』にも出場。さらに19年には自身のYouTubeチャンネルがスタートして人気を博す。その後、20年にはテレビから“卒業”することを宣言。同年中に所属事務所の吉本興業を退所し、家族とシンガポールに移住した。

 レギュラー番組や冠番組が多いほど“売れっ子”とされる風潮がある芸能界で、自らテレビを去った中田を「既存の価値観に縛られない、新しい人」だと見る人もいるだろう。しかし、同番組を見ると、案外古いタイプであることがわかる。

 中田はもともとテレビの世界を去るつもりはなく、MCを目指して一生懸命やってきたと言う。そのため、人気が急落したときは、韓国に行って手相の整形手術をするなど、体を張ることを厭わず、制作陣の言うことも全部聞いた。それもこれも「絶対に冠番組を取りたい、MCになりたい」という気持ちからだった。

 しかし、『しくじり先生 俺みたいになるな!!』(テレビ朝日系)で、中田がMCを務める特番『中田歴史塾』をやった際、結果を残せず。 「MCになりたくてしょうがない奴なのに、なれないんだ」と心が折れ、燃え尽きてしまったのだそう。もし特番で結果を残し、MCになれていたら、テレビの世界にいただろうとも振り返っていた。

 思うように行かない焦りから「会社と揉めたところはデカいと思いますよ」「揉めちゃいけない揉め方ってある」「これはテレビには戻れないな」と、テレビからの撤退は後ろ向きなものだったとも語っていた中田。こういう話を聞くと、彼の印象は“新しい人”ではなく、テレビに固執する古いタイプの人に思えてくる。

 また、中田いわく、YouTubeチャンネルも先見の明があって始めたわけではなく、「絶望のふちでギリやった」ことだそうだ。それが今や登録者数500万人超えの人気チャンネルになっているわけだから、やはり中田は“持っている”と言えるのだろうが、中田が独特の“もろさ”を持っていることにも気づかされる。

 同番組司会のオードリー・若林正恭に「たまに劣等感を口にするじゃない?」と指摘されると、中田はそれを認め、「東大に入って当たり前の高校から、ドロップアウトして慶應に入ってる」と、大学受験の“失敗”による劣等感を持っていると告白。若林が「そんな世界があるの?」と驚くと、中田は「あるんですよ。東大以外は大学じゃないって俺、言ってましたから」と説明した。

 例えば、東大に合格した人が、その誇らしさから「東大以外は大学じゃない」と言うならわかるが、中田はまだ受かっていないのに、受かった人のような物言いをしてしまっている。これはまさに彼の特徴ではないだろうか。

 中田はMCの話が来なかったことで心が折れ、その焦りから会社と揉めてしまったと言っていたが、MCになれなかったのは、中田の実力が及ばなかったとは言い切れない。オファーがあって成立する仕事は、タイミングも重要な要素なので、もうちょっと待っていたら、声がかかっていた可能性は否定できない。

 けれど、「まだ手にしていないものを、手にした気分で物を言う」 メンタリティの人の場合、「これだけできるのに」「どうしてオレにMCの話が来ないのか」とキレやすくなり、周囲と修復不可能な揉め事を起こしてしまうのではないだろうか。

 一般人がそんなことをしていたら「ちょっと落ち着こうか」と声をかけたいところだが、中田の場合、これが最大の魅力だと思うのだ。

 研究熱心で何でも小器用にこなし、その結果、すぐに天狗になるが、自己評価と現実が折り合わず、がっくりきて劣等感を募らす――売れていても謙虚に振る舞う芸能人が多い中、誇大妄想的な部分を隠さない中田がテレビにいたら、面白い気もする。加えて、先に指摘した新しいタイプの人に見せかけて、実は古いタイプの人というギャップも、視聴者に面白く映るのではないか。

 人の話を聞くのが好きではないようだから、MCには向かないかもしれないけれど、時々テレビに出てほしいと思うのは、私だけではないはずだ。

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