「子ども同士の付き合い」が前提のママ友という関係には、さまざまな暗黙のルールがあるらしい――。ママたちの実体験を元に、ママ友ウォッチャーのライター・池守りぜねが、暗黙ルールを考察する。
ちょっとしたプレゼントを贈り合うことは、人間関係を円滑にするために効果的だ。バレンタインやクリスマス、誕生日の際は、子ども同士でもプレゼントを渡すことはよくあり、実際にお金を出す保護者が、その“相場”に頭を悩ますことも多い。今回はプレゼント交換に負担を感じるというあるママのエピソードを取り上げる。
中学受験塾の友達からちいかわ文房具をもらっていた娘――恥ずかしい思いをしたワケ
首都圏に暮らす美幸さん(仮名・39歳)は、4月から小学6年生になる女児のママ。娘が小5になったタイミングで、地元にある進学塾に入塾させた。
「娘の愛理(仮名・11歳)が通っている小学校は、クラスの3分の1くらいが中学受験をします。うちは中学受験を考えていなかったものの、愛理が都内にある私立の女子校に通いたいと言い出し、入塾を決意。周りが低学年から塾通いをしている中、小5でのスタートはかなり遅いほうですが、なんとか授業にはついていけているようです」
愛理ちゃんは、駅前にある大手塾の系列塾に通っている。1学年60人ほどが、成績順で3クラスに振り分けられ、愛理ちゃんはこれまで、一番下か真ん中のクラスのどちらかに在籍してきたという。
「同じクラスに、別の小学校に通っている女の子のグループがあるんです。みんな小3、小4から通っていて、とても仲が良いそうで、愛理は途中から仲間に加わった形でした」
そんなある日、愛理ちゃんが見たことのない「ちいかわ」の文房具を使っていることに気づいた美幸さん。
「娘の字で名前と学年も書いてあって……私は買った記憶がなかったので、『これどうしたの?』と聞いたところ、『塾の友達にもらった』って言うんです」
愛理ちゃんの塾では、親しい間柄の女の子同士が、プレゼントを贈り合う文化があるそうだ。
「うちの小学校では、たとえバレンタインや誕生日だとしても、友達へのプレゼントを学校に持ってくるのはNG。でも、塾にはそういったルールがないため、プレゼント交換がよく行われているそうです。愛理に鉛筆やノートをくれた女の子は、ちいかわのキャラクターグッズを『おそろいで持ちたいから!』と言って、プレゼントしてくれたらしく……。お互いの家を行き来するような親しいお友達がいない愛理は、初めて同い年の子から贈り物をもらい、とても喜んでいました」
美幸さんは塾のお迎えの時に、プレゼントをくれた女の子の母・里香さん(36歳・仮名)にお礼を伝えたという。
「里香さんは、『ささやかなものなので、気にしないでください』と言っていました。ただ、愛理によくよく話を聞いたところ、『お礼に使っていた鉛筆キャップをあげた』と……。まさか使い古しのものを渡しているとはつゆ知らず、恥ずかしかったですね」
その後も、里香さん親子からの“ささやかなプレゼント”は続いた。
「私の迎えが遅れた際、里香さんが自分の娘以外のお友達にも自販機でジュースを買ってくれていたんです。1本120円とはいえ、4人で500円ほどになるじゃないですか。慌てて『払います』と代金を渡そうとしたのですが、断られてしまいました」
美幸さんいわく、里香さんは「ただただ純粋に、プレゼントを贈るのが好きなタイプ」。しかし、それがあまりに続くと、「こちらは恐縮するばかり」とため息をつく。
「愛理の誕生日には、『Canバッチgood!』という缶バッチが製作できるおもちゃをもらいました。子どもが交換する誕生日プレゼントなんて、せいぜい500円前後と思っていたのに、調べてみたら4,000円もするので驚いてしまって……。里香さんは私に気を使ってか、『私も娘も、プレゼントを選ぶのが好きなの』と言っていましたが、正直『同額のお返しをしなければいけないのか』と気が重くなりました。愛理の友達関係にヒビが入りそうで、誕生日プレゼントを断わることもできませんし」
ちなみに美幸さんは先日、里香さんからのある提案を受け、金銭感覚の違いを痛感したそうだ。
「まだ先の話ですが、『中学受験が終わったら、子どもだけでディズニーランドに行こう』と娘たちが盛り上がっているんです。里香さんにその話をしたら、今はディズニーランドのパークチケットだけでもかなり高額なのに、『おこづかいは3万円くらいかな』と言われ、衝撃を受けました。金銭感覚が違うママ友と付き合うには、どうすればよいのか……と、頭を悩ませてしまいます。子どもの誕生日プレゼントにしても、ディズニーランドのおこづかいにしても、ある程度みんなの意見を聞いて、予算を決めるのが、ママ友の暗黙のルールなんじゃないですか?」
小学校高学年ともなると、子ども同士の付き合いでも、なにかとお金がかかるものだ。友達間でプレゼントを交換する場合、その出どころは親であるため、各家庭の金銭感覚の違いに頭を悩ますケースは珍しくないだろう。
ただ、同じ小学校の子同士の場合は、そういった問題が露呈することは少ないと思う。同じ地域に住んでいること、また付き合いが長いことから、保護者同士がお互いの経済状況や家庭の方針をなんとなく把握しており、プレゼントの“相場”が共有されているものだ。
むしろ、習い事で出会った友達間で、この問題に悩むママが多い気がする。特に進学塾や、発表会があるバレエ、ピアノなど、費用がかかる習い事では、経済的に余裕のある家庭の子も多く、高額なプレゼントを贈り合う文化が根付いているケースがあるのではないか。
今回、美幸さんが語ったママ友の暗黙ルールだが、普段の会話の中で、美幸さん側から、子どものおこづかいやお年玉の金額などの話を振り、自身の金銭感覚をそれとなく伝えておいてもよかったのかもしれない。そうすることで、あまり高額なプレゼントは交換しない方針だとわかってもらえたのではないか。
もしくは、帰宅後にプレゼントの値段をネットで検索した後、使う前にお礼の言葉とともに「気になって金額を調べたら高額だったけれど、もらって大丈夫か」と相手に確認する心遣いしてみてもよかったかもしれない。そして今回限りはと割り切り、誕生日などを待たず、もらった金額相応の物をすぐお返しし、やんわりと「我が家では子ども同士の誕生日プレゼント交換は、おこづかいの範囲で贈れるものにしている」というふうに伝えるのもいいと思う。
やはり、お互いの金銭的負担や、お返しをどうすればよいのかと悩む手間を考えるならば、なるべくトラブルにならないように、子ども同士のプレゼント交換は少額で――それを暗黙のルールにできるような素地づくりが大切ではないだろうか。