おなかにガスが溜まって苦しい経験をしたことはありませんか? おならとして出したくても我慢してしまったり、出したくてもうまく出せなかったりする人もいるようです。ガスが溜まると、苦しいだけでなく体臭や口臭として排出されることもあり、日常生活に影響を及ぼします。今回は、おなかにガスが溜まってお悩みの人に、腸の動きを改善し、簡単に解消できる対処法と予防法を薬剤師の竹田由子氏に紹介してもらいました。
1. おなかにガスが溜まってしまう原因
通常であればスムーズに排出されるはずのガスが、おなかに溜まってしまうのには原因があります。まずは、その原因から見ていきましょう。
1‐1. 腸内環境の乱れ
おなかにガスが溜まる原因の一つに、悪玉菌の増殖による腸内環境の乱れがあります。腸内では、「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌」といった大きく分けて3つのグループの腸内細菌がバランスを取りながら、健康的な腸内環境を形成しているのです。このバランスが崩れると腸内環境が乱れ、おなかのガス溜まりや便秘につながります。
悪玉菌は体に悪い働きをする菌なので、腸内環境を良好に保つには、いかに悪玉菌を増やさないかが重要です。食習慣が乱れると、腸内では悪玉菌が増えやすくなるほか、高タンパク・高脂肪の食事や過剰な食物繊維の摂取も悪玉菌増殖の原因となります。
1‐2. ストレスによる腸の運動低下
排便を促す腸のぜん動運動は、2つの自律神経によって支配されています。自律神経のうち「交感神経」が優位であればぜん動運動が停滞し、「副交感神経」が優位だと活発になるのです。
ストレスが溜まると自律神経のバランスが乱れるため腸のぜん動運動も乱れ、腸の働きが低下。腸が正常に機能しないと、おなかに溜まったガスをおならとして体外に排出できなくなってしまいます。
1‐3. 呑気症(どんきしょう)
「呑気症」とは、食事や会話で意図せず過剰な空気を飲み込んでしまうこと。一気飲みや一気食い、早食いなどの人に多くみられ、口呼吸の人も呑気症のリスクが高いといわれています。また、神経質な人、不安感が強くストレスを感じやすい人も、無意識に空気を多く飲み込む傾向があるようです。
呑気症は、ガスが溜まりやすくなるだけでなく、吐き気やゲップなどの原因になることもあります。
それでは、ガスでおなかが張って苦しいとき上手にガスを排出する方法をお伝えします。
2‐1. ガス抜きのポーズ
ガスが溜まっているおなかには、次に紹介するガス抜きのポーズがおすすめです。
(1) 仰向けの状態で、両ひざを抱え込みます。
(2) ひざを胸に引き寄せながら上体を起こします。息を吐きながらゆっくり行いましょう。
(3) 太ももで下腹部を圧迫しながら、お尻を少し持ち上げ、その状態をキープします。
(4) きつくならない程度にゆっくりと5回呼吸をし、体を(1) の状態に戻します。
ガス抜きのポーズにはリラックス効果もあるため、ストレス緩和にも効果的です。
2‐2. ツボを刺激する
おなかに溜まったガスの解消に効果的なツボをご紹介します。
・大腸兪(だいちょうゆ):骨盤の上にあり、背骨から左右に指2本分のところ。
下痢のほか、特に便秘に効くツボとして知られています。ほかには、痔疾、腰痛、坐骨神経痛などの改善に用いられます。
ツボを押すときは、親指が背中に当たるように両手を腰に当て、親指で押しながら揉みましょう。少し痛いけれど気持ちがいい程度の力で押すのがコツです。
3. おなかにガスを溜めない予防方法
そもそもガスを溜めないためには、普段からどのようなことに気をつけたらいいのでしょうか? おなかにガスが溜まりやすいという人は、以下のポイントに注意して生活してみましょう。また、最後にお伝えする漢方薬を日々の生活に取り入れるのもおすすめです。
3‐1. 食生活を見直す
食べすぎや栄養バランスの悪い食生活は、便秘などの腸内トラブルの原因となり、ガスが溜まりやすくなります。食生活を見直し、腸内環境を整える食事に変えましょう。
いい腸内環境をつくるには、腸内の悪玉菌を抑え、善玉菌を増やすことが大切。善玉菌が含まれている食品は、以下の通りです。
・ヨーグルト
・納豆
・キムチ
・みそ
・チーズ など
食事の際も、空気をたくさん飲み込んでしまわないよう、よく噛んでゆっくり食べましょう。
3‐2. ストレスを解消する
腸は精神的なストレスの影響を受けやすい器官。ストレスで自律神経がうまく働かなくなると、腸がぜん動運動をしなくなり、便秘になります。そのせいで腸内環境が悪くなっておなかにガスが溜まってしまうのです。
ストレスが原因かもしれないと感じる人は、休息や休養を十分に取り、リフレッシュできるような趣味や時間をつくりましょう。例えば、次にあげるリフレッシュ方法がおすすめです。
・運動をする
・音楽を聞く
・習い事をする
また、ストレスや緊張を溜めないことは、呑気症の予防にもなります。ストレスが解消されると自然とおなかの調子も整い、ガス溜まりが解消されることがあるのです。
3‐3. 漢方薬を飲む
「あれこれ解消法・予防法を試してみたけれど改善されない……」
「ガスが溜まりやすい体質を体の内側から変えたい」
そんな人には漢方薬がおすすめです。漢方薬のなかには、「腹部膨満感」の症状に効果が認められているものもあり、消化器内科などで処方されています。
おなかが張ったりガスが溜まったりする原因は、ストレスや便秘などと考えられているのです。
これらの不調の改善には、「おなかを温めておなかの働きをよくする」「自律神経のバランスを整えてストレスによるおなかの働きの悪さを改善する」「胃腸の機能を回復して便秘やガス溜まりを改善する」といった働きを持つ漢方薬が用いられます。
漢方薬は溜まっているガスを解消するだけでなく、根本的な原因・体質の改善を目指すため、便秘や下痢などの慢性的な症状やガスの溜まりやすい体質に悩む人に適しているでしょう。
バランスのいい食事を毎日続けるのは難しいという人でも、漢方薬は毎日飲むだけなので無理せず続けられます。
・桂枝加芍薬大黄湯(けいしかしゃくやくだいおうとう):比較的体力がない人に
便通をよくする「大黄」や、体を温める「生姜(しょうきょう)」などの生薬を含む漢方薬。おならがよく出る人で、便秘がちでおなかが張ってしまう場合におすすめです。便秘がない場合は、大黄が入っていない桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)が適しています。
・麻子仁丸(ましにんがん):体力中程度以下の人に
大腸内を潤し排便を促す「麻子仁」や、健胃・整腸剤作用がある「厚朴(こうぼく)」などの生薬を含む漢方薬。生活習慣やストレス、大腸のぜん動運動の低下を原因とする便秘に向いています。
・大建中湯(だいけんちゅうとう):体力が虚弱な人に
体を温め、胃腸の動きを整え、おなかの痛みや張りをやわらげる漢方薬。冷えからくる下痢でも便秘でも用いることができ、胃腸の手術後にもよく使われます。
漢方薬は、ご自分の状態や体質にうまく合っていないと、効果を感じられないだけでなく、場合によっては副作用が生じることもあります。しかし、たくさんの漢方薬からご自分に合った漢方薬を見つけるのは大変ですよね。
そんなときは、薬剤師に気軽に相談できる、「あんしん漢方」などのオンライン漢方サービスを利用するのもいいでしょう。あなたに合った漢方薬を見極めて、お手頃価格で自宅に郵送してくれます。
4. おなかに溜まるガスの悩みは我慢しない!
おなかに溜まるガスの悩みはなかなか人に話しづらく我慢しがちですが、解決できる方法はあります。排出されない原因がわかれば、お伝えした対処法や予防法でおなかの張りは軽減できるでしょう。
ただし、これらは、大腸に病気がないことが前提にあります。定期的にヘルスチェックを受け、大腸がんなどの病気が原因ではないことを確認することが大切です。すでに症状が気になっていてなかなか改善されない人は、内科や消化器科などの診察を受けることも検討してくださいね。
薬剤師・竹田由子(たけだゆうこ)
臨床薬学専門。病院で10年以上医薬品情報室に長年従事し、医薬品に関する情報に精通。元漢方・生薬認定薬剤師、薬膳漢方マイスター。漢方の活用で月経痛時の鎮痛剤を減量できた自身の経験から「日常の不調はまず漢方」をモットーに体の不調を我慢する女性へ対し情報発信している。症状・体質に合ったパーソナルな漢方をスマホ一つで相談、症状緩和と根本改善を目指すオンラインAI漢方「あんしん漢方」でもサポートを行う。