• 日. 12月 22nd, 2024

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平野レミは、デキるビジネスウーマン――ただの天真爛漫な人ではないと思うワケ

私たちの心のどこかを刺激する有名人たちの発言――ライター・仁科友里がその“言葉”を深掘りします。

<今回の有名人>
「だから、なんだって? なんだって?」平野レミ
『ぽかぽか』(3月9日、フジテレビ系)

 “天真爛漫な人”というのは、テレビと相性がいい。予定調和ばかりの番組だと視聴者は飽きてしまうが、こういうキャラが1人いると、いい意味で番組が引っかき回されて、アクセントになる。

 中でも料理愛好家・平野レミは、“ザ・天真爛漫キャラ”といえるのではないだろうか。番組で料理を作る場合、一般的には、正しい手順、正しい分量、正しい方法 が重んじられるが、レミは違う。3月9日放送の『ぽかぽか』(フジテレビ系)では、レミが過去、番組の料理コーナーで、太めのパスタの束をひざで割る、トマトを包丁で切らずに手でにぎり潰すなどの“荒業”を披露したことが紹介された。

 料理だけでなく、私生活でも天真爛漫ぶりを発揮するレミ。 家に空き巣が入ったとき、警察が現場検証に来たが、レミが動き回るので犯人の足跡が消えてしまったなど、ユーモラスなエピソードには事欠かない。『ぽかぽか』で、ほんの少し前に話していたことを忘れてしまい、「だから、なんだって? なんだって?」と聞き返していたところを見るに、天真爛漫はテレビ向けのキャラなどではなく、彼女の性格そのものなのだろう。

 そんなレミを、天真爛漫を通り越して、“適当すぎる人”と見る人もいるかもしれない。けれど、私には、本当に好き勝手にやっている部分もあるが、一方ですごく“緻密で真面目”、かつ“デキる人” なのではないかと思えてならない。

 レミが生み出したヒット商品といえば、「レミパン」。『おしゃべりオジサンとヤバイ女』(テレビ東京系)に、レミが次男の嫁で料理家・和田明日香とゲスト出演した際、例によって自由に動き回っていたが、千原ジュニアは「本当にがさつなら、レミパンを作ることはできない」といった意味の発言をしていた。

 確かにレミパンユーザーの私も同意見だ。実際に使ってみるとわかるが、細部にまで心配りがあると感じる。明日香もレミについて「レシピに関しては、すごく細かい」と言っており、それはプロとして当然ではあるものの、細かなところまで手を抜かない真面目さがあるからこそ 、専門的な料理の勉強をしたわけではないのに、今 の地位を築くことができたのではないだろうか。

 また、自由に振る舞っているように見えるレミだが、押さえなければいけないポイント を心得ている人なのではないかと思う。それは「忘れてはいけないことは、忘れない」という彼女の性質に関係しているのではないか。

 上述した通り、レミはちょっと前に話したことを忘れてしまう。しかし、毎年タケノコを送ってくれる京都のお寺のことは忘れずに、テレビできちんと固有名詞を出す。寺は宣伝してもらうことを期待して、レミに贈り物を送っているわけではないと思うが、悪い気はしないだろう。忘れていいことは忘れるが、良くしてくれた相手へのお礼など、忘れてはいけないことは絶対に忘れないのがレミなのである。

 レミは芸能活動をする息子の妻たちへの気遣いも忘れない。長男であるTRICERATOPSのボーカル・和田唄の妻は女優・上野樹里 だが、レミは『ぽかぽか』内で、何の脈絡もなく、ネックレスに触れながら、「あ、これ、樹里ちゃんにもらっちゃった」「樹里ちゃんってうちの嫁」と息子の妻の名前を口にした。言葉こそ短いものの、姑に気を使う上野の優しさと、関係性の良さをうまくアピールしたといえる。

 一方、この日のレミの衣装は上下デニムであり、「次男のほう(の嫁)は、和田明日香。料理やってんの。それがジーンズのプロデュースやってるんだって」と説明していた。有名人であるレミが、テレビで商品を着用すれば、宣伝効果は絶大だろう。

 独特の口調に騙されてしまうけれど、レミは周りへの心遣いを忘れず、 押さえなければいけないポイントをしっかり押さえる―― そんなデキるビジネスウーマンのような人だと思う。

 加えてレミは、ただ単に天真爛漫というわけではなく、その本質はむしろ繊細なのではないかと思うことがある。レミが夫でイラストレーターの和田誠さんの話をするときだ。和田さんは2019年に亡くなったから、4年近い月日が過ぎようとしている。レミは常に明るく振る舞っている が、まだ悲しみは癒えていないようだ。

 『ぽかぽか』で、「何度生まれ変わっても、和田さんと結婚する」と語ったレミ。「今度はさ、あたしが先に死んで、それでこの悲しみ、会いたさ、つらさを和田さんに味わってもらってリベンジする」と笑っていたが、それはレミが今なおどれだけつらいかを物語っているし、彼女がちょっと泣きそうに見えたのは気のせいだろうか。

 いろいろな番組でレミは、和田さんは料理愛好家・レミの産みの親であり、最大の応援者であったと話している。彼女の見る者を引き付ける天真爛漫さは、和田さんという精神的な支柱を得たおかげで開花したものなのかもしれない。

 

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