「子ども同士の付き合い」が前提のママ友という関係には、さまざまな暗黙のルールがあるらしい――。ママたちの実体験を元に、ママ友ウォッチャーのライター・池守りぜねが、暗黙ルールを考察する。
ママ友に、どこまでプライベートな話をするかという問題はなかなか難しい。何度か食事をしたり、お互いの家を行き来するようになり、仲が深まると、ママ友間で、自分や夫の職業、経済事情、家庭内のゴタゴタといったプライベートな話題が飛び交うことも珍しくない。今回は、プライベートを包み隠さず伝えてくるママ友に脅威を感じたというあるママのエピソードを取り上げる。
コロナ禍で飲食店がピンチ! 店に食べに来てくれるママ友と親しくなったが……
都内に暮らす知美さん(仮名・40歳)は、4月から小学1年生になる男児のママ。実家は蕎麦屋を営んでおり、彼女の夫が店を継いだ。
「コロナ禍をきっかけに、高齢の両親から夫が店を引き継ぎました。短縮営業中は、知り合いの店が出していたテイクアウト弁当の販売を手伝っていたんですが、そこで知り合ったのが佑子さん(仮名・34歳)。彼女は年下ですが、3人の子どものママで、上が中1、真ん中がうちの子と同じ歳で、一番下の子はまだ3歳。佑子さんの母親が、自宅で子ども向けのピアノ教室を開いていて、普段はその手伝いをしているそうです。3人の子育ては大変そうだな……と思ったのと、ママ友ができるかもと期待したのもあって、『よかったら、お子さんと一緒に実家の蕎麦屋へ来ませんか?』と声をかけたことから、交流が始まりました」
佑子さんは、コロナ禍で客足が遠のいていた実家の蕎麦屋によく来店してくれたそうで、「ありがたかった」と知美さん。
「佑子さんは家で教室をやっているので、顔が広いんです。彼女の紹介でうちに食べに来てくれたママさんもいて、本当に感謝しています。子ども同士も仲が良くなり、親しいママ友ができたと喜んでいたのですが……ただ、佑子さんはいつからか、うちの蕎麦屋を身内の店のように感じ始めたのか、昼営業が終わってもだらだら居座っていて……一応お客さんですし、『帰ってください』ともいえず、困っていました」
ママ友の浮気のアリバイ工作に利用され……
知美さんは、佑子さんが昔からの友達のような口調で話しかけてくるのが、次第に気になりだした。
「佑子さんは最初、私に対して『〇〇ですよね』と丁寧な言葉遣いだったんですが、ある時、うちの両親が『いつも来てくれてありがとう』『知美はママ友がいなかったけれど、佑子さんと仲良くなれてよかった』というようなことを言ってから、だんだん、馴れ馴れしい話し方に変わっていったんです。いきなり距離を詰めてきたなと驚きました」
さらに佑子さんは、「夫との仲はどう? お店で一緒だと窮屈じゃない?」と、知美さんのプライベートにもずかずか踏み込むようになったそうだ。
「私は、友人が少ないタイプ。ごく親しい昔からの友人とママ友は別だと考えていました。でも、佑子さんは社交的で、誰とでも仲良くしたいタイプらしく、夫や家庭の不満を私に愚痴るようになったんです。しかも彼女、結構奔放な人で……ある時、『このマッチングアプリ、知ってる? 知美さんもやってみない?』と勧めてきました。そんなこと言われても既婚者だし、使うつもりはなかったので、 興味がないことを伝えたのですが、『暇つぶしになる』『メッセージのやりとりだけなら浮気にならない』と聞く耳を持たなくて……」
佑子さんは、マッチングアプリで遊んでいることに少なからず罪悪感を抱いており、「自分の味方を増やしたいと考えているのではないか」と、知美さんは推察する。
「佑子さんは、自らマッチングアプリの話題を出しては、『どう思う?』みたいな感じで、私に意見を求めてくるんです。否定すると『そうかな』と機嫌が悪くなるので、『そうですね』と言って受け流していました。それが最近になって、佑子さんはマッチングアプリで知り合った男性と親しくなったそう。そういう話を私にしてくるのもドン引きですが、彼女は自分を正当化するためなのか、夫の愚痴や批判をさらに口にするようになっていて……それを聞かされるのも正直かなりつらいです」
その後も、佑子さんの行動はどんどんエスカレートしていった。
「あとでわかったのですが、佑子さんはアプリで知り合った男性と会う際、旦那さんに、うちの店に行くと嘘をついていたそうです。まるでアリバイ工作に協力しているみたいで、気分が悪いですよ……」
知美さんは今、佑子さんと距離を置くようにしたいと思っている。
「とりあえず、自分からはもう誘わないですね。佑子さんは日常の出来事を、まるで日記のようにLINEしてくるんですが、それも随時返信したりせず、まとめて既読をつけ、『最近、忙しくてスマホがチェックできない』と伝えるつもりです」
また、知美さんは今後、店にママ友を呼ばないと決めたそうだ。
「佑子さんの態度が馴れ馴れしくなったのは、店によく来るようになり、私の身内のような感覚になったからだと思うんですよね。もしママ友が来ても、あくまでお客さんとして扱おうと決めました。やっぱり、友達とママ友は別物だと思うんですよね。あくまで子どもを介した付き合いなので、ごくプライベートな話をするのはマナー違反だと思うんですが……」
ママ友はほしいけれど、積極的に付き合うのは苦手――そういうママは多いのではないだろうか。ママ友は、学校や職場などの同じコミュニティで過ごした経験がないため、価値観も年齢もバラバラな場合がほとんど。たまたま知り合ったママ友と、子どもを抜きにしても仲良くなれるなんてことは、実はかなり稀だと思う。
しかし、中には、ママ友と密な関係を築きたい人も存在する。例えば、日常の出来事を頻繁にLINEしたり、悩み事を何でも共有したり、頻繁に家へ遊びに行こうとしたり……まるで、学生時代の親友のような付き合いを相手に求めるタイプだ。これは筆者の所感だが、こういうタイプは、ママ友が困っていることにまで考えが及ばず、お誘いも自分主体で、「私が行きたい場所」を提案することが多い。そんな自分中心のママ友に振り回されたことがある人もいるのではないだろうか。
ママ友付き合いと一口にいえど、人によって、相手とどういう距離感で接したいかは異なるはず。だからこそ、相手に合わせるのではなく、自分から「これ以上は、入ってこないでほしい」という境界線をはっきり提示したほうがいい。空気を読まない相手には、「それは無理」とはっきり伝えなければ理解してもらえないように思う。
よく「夫の職業や年収を聞いてくるママ友に困っている」という話を耳にする。これも、言いたくないのなら、あいまいに答えずに「そういう話はしない」ときっぱり断るべきだろう。最初に、「ママ友だけど、友達ではない」という姿勢を相手に見せることは、心情的につらいものがあるけれど、付き合いが始まってから、ずけずけとなんでも聞いてこられるよりは楽なはずだ。
今回のケースは、知美さんが佑子さんをママ友であると同時に、店の客と認識していたがため、強い物言いができなかったことが、2人の関係性に悪影響を及ぼしてしまった。ただ見方を変えれば、お店という場所なのだから、身内のように居座る佑子さんに対して、きっぱりと「もう閉店時間なので」と伝え、「距離感を見誤らないでほしい」という意思表示をしてもよかったのではないだろうか。
新生活が始まり、また新たなママ友付き合いがスタートする中、「何事も最初が肝心」という意識で、ストレスを感じないママ友との距離感をつかんでほしいものだ。